第6話
魔女は、少年を自室に招き入れた。
魔女の部屋は裸山に住んでいるだけあり、部屋はほとんど灰色の石造りでできていた。
他は様々な薬品や呪術に使うものばかりで、ちょっとした研究室のようだった。
少年は拒絶する気力もないのか、ほとんど魔女に導かれるままに、岩を削って作られた椅子に座らされる。
魔女は戸棚のあたりをガチャガチャとした後、工具箱を取り出した。
「……」
「この辺の山はのう、かつて一国を震撼させた大蜈蚣を殺したことで、未だ強い呪いが残留しておるのじゃ」
「……」
「あちこちから有害な瘴気が大地から放たれておる。ひと吸いで眩暈を覚え、ふた吸いで意識がなくなり、三度目はない。草木さえもロクに生えないこの地に来るのは、よっぽどの物好きか、死にたがりだけじゃ。魔導人形のお前さんにとっちゃ、どうでもいいことじゃろうが……の!」
魔女は少年の纏っていたボロ布を掴むと、そのまま力強く、ビリリとひん剥いた。
少年は抵抗もせず、恥じることもなく、なすがまま裸になる。
無垢な少年の柔肌が露になり、そのつややかな肢体を前に、魔女は目をまん丸くした。
「およ?」
あまりにもその姿が人間じみていたので、魔女の顔が引きつる。
「……」
「ほほー。こりゃ驚いた。最近の魔導人形は、人間とこうも違いがないのか」
「……僕は、人ではなしです」
少年は裸を見られたことに恥もせず、服を剥がされた衝撃でゆらゆらと揺れた後、ぽつりと言葉を漏らした。
「……死にたいんです」
「じゃから、お前さんは魔導人形じゃろうが」
「……死にたい」
「人形のくせに死を所望するか。ふぉっふぉっ。疑似脳がイカれたとみえる」
魔女は優しく少年の肌を細い指で撫で、魔法で損傷部分を直していく。
「さては、よほど辛い目にあったんじゃな」
指先から零れる紫色の光が、魔導人形の肌装甲を瞬く間に治していく。
魔女は少年の体にあった傷のひとつひとつを慈しむように見つめながら、次々に直していき、湯と貴重な布で体を拭いてやった。
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