第2話
事故現場に着くと、一体の『魔導人形』が死んでいた。
人間と同じような四肢を持ち、工事用の服を着た、見た目の年齢は20代ほどと見られる魔導人形が、路上でぐったりと倒れていた。ひとつ目のヘルメットのようなものを被った頭部は、硬いもので滅多打ちにされて、頸部からもげてしまっていた。
触ると、すっかり冷たくなってしまっていて、表面は魔法人形から溢れた血で黒くベタついていた。
さて、俺は魔導二輪車(バイク)に跨り、勘の向くまま駆けていく。
血痕の散り方から、男がどこに向かおうとしているのか、なんとなく分かる。
現場からそう離れていない路地の裏を、ひとりの痩せてくたびれた青年が駆けていた。まるで暗闇をかき分けて進もうとしているかのような、犬かき泳ぎのような走り方。
「おっちゃん、止まりな~」
「ひ、ひぃっ!」
「逃げんなって」
「く、来るなぁっ」
薄暗い闇の中のネオンの光、遠くに聞こえる喧噪と、部屋から零れる灯りが僅かに路地裏を照らしている。
軽くアクセルを入れて男に追いつき、回り込んで道を塞ぐ。
「錯乱状態……ヤク中か。どこで手に入れたんだか」
「来るな、来るなよぉ!」
男は手の平で円を描くように空をこねると、そこから尖った緑色の棘が生まれた。それを一発、打ち出してくる。
力場もなく、ぎゅん、と加速する弾丸。
勢いはピストルにも及ばない。
その弾丸へ、人差し指で迎え撃つ。
弾丸はパキリと無数の霜を散らしながら一気に失速し、ぽとりと地面に落ちた。
「なんだよ、魔導人形をやったっていうから警戒してたのに。同じ雑魚魔法使いかよ。安心したぜ」
「なっ、なっ……!?」
「じゃあまぁ、ふんじばるか」
「うわ、わわぁ!」
男は自棄になって、次から次へと弾丸を打ち出す。
しかしそれらの弾丸の対処も、もはや指一本さえ必要ない。
弾丸は、何もない空中で、次から次へと霜を飛ばして弾速を失い、地面に落下していく。
「確保ぉ~」
「やめろぉぉぉぉおおお!!」
逃げようとじったんばったん足を動かせて暴れ狂う男。
ひたり、と俺は男の頭を押さえつける。
男は白目をむいて、バタリと倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます