【7】 講演後対談 ~大学事務室にて~
(⼤講堂での講演後、林と牧⼝は、学内の事務室へと移動し、ほっとひと息をつく。事務員が、ふたりにお茶を出してくれる。それをいただきながら、ふたりが講演を振り返る。)
【牧口】 林先⽣、お疲れさまでした!
【林】 お疲れさまでした、牧⼝先⽣。
【牧口】 いやあ、なかなかの学⽣の⼊りでしたね。緊張しましたよ。
【林】 確かに。100⼈近くは⼊っていましたよね。普段は緊張しない僕でも、さすがに少し圧倒されましたね。
【牧口】 でも、それにもかかわらず、先生は常に堂々としたお話しぶりでしたよね。私はビビりですので、とても真似できませんね。
【林】 いやいや。牧口先生が、見事にリードしてくださったおかげですよ。
【牧口】 そうですか。ありがとうございます。
さて、今⽇は、先⽣の約50年のご体験を、今⼀度、振り返っていただく形になりましたが、振り返ってみられて、いかがでしたか?
【林】 そうですねぇ。まぁ、時間が限られておりましたので、ほんのさわりだけの話になってしまいましたが。
でも、僕の⼈⽣が、決して順風満帆(じゅんぷうまんぱん)ではなかったということは、学⽣さんにも、お分かりいただけたのではないでしょうか。
【牧口】 そうですよね。たとえ、今、世の中の最前線に⽴って、世の中をリードしておられる⽅であっても、そこに⾄るまでには、数知れぬ苦労を経験されている。
そういう「この世の真理」みたいなものに、若い段階で触れることができたのは、きっと学⽣さんたちにとって、⼤きくプラスになることと思いますね。
【林】 そうですね。でも、だからといって、僕は、成功するためには、苦労がぜひともなければならないとまでは、思っていませんね。苦労はできるだけ少ないに越したことはない。
そのためにも、先を⾏く⼈たちの話に、しっかり⽿を傾けて、⾃分が余計な体験をしなくても、先に進んで⾏けるようにすることが、⼤事だと思うんですよ。
【牧口】 なるほど。確かに、そうですね。私も、林先⽣をはじめとして、仕事柄、いろんな成功者の⽅とお話しする機会があるんですが、そういう⽅々から、吸収できるものは、何でも吸収しようというこころがけで、これまで対談をさせて、いただいてきましたからね。
ただ、私と、そういう⽅とは、個性も環境も何もかもが異なりますので、100%その通りに実践できるわけではありませんし、取り⼊れたとしても、私独⾃の苦労までが、なくなるわけではありませんけどね。
【林】 そうですね。ただ、少なくとも、⾃分からわざわざ、苦労を求める必要はない、ということは⾔えますね。普通に暮らしていて、⾃然にやってくる困難は、そのたびに、乗り越えていくしかありませんが、⾃らそれを招き寄せるようなことは、できるだけ避けたいところですね。
【牧口】 そうですねぇ。そうなりますと、やはり、先⽣がおっしゃるように、先⼈の経験から学ぶ、ということが必須になってきますね。
【林】 そうですね。そして、それは常に継続的にやるほうがいい。それに夢中になっていれば、⾃ら不要なトラブルを引き起こす確率は、ぐっと下がりますからね。
【牧口】 なるほど。そのためには、例えば、どのようにするのがいいですか?
【林】 我々を啓発してくれるような本やブログ、ポッドキャスト、オーディオブック、動画などのツールを、ふんだんに活⽤するのがいいと思います。この辺のツールは、先を⾏く⼈の体験談や知恵などが満載ですし、安価で効率よく利⽤できるものも多いですし、かなり勉強になります。
【牧口】 なるほど。テレビやラジオはいかがですか?
対象を絞らず、無作為に情報を放出する類のものですので、あまりおすすめではないのでしょうか?
【林】 そうですね。ただ、これらの中には、啓発的なよい番組もありますので、そういうものだけを選んで、例えば録画しておいて、⾒たり聞いたりできる⽅であれば、よいツールになりうると思います。
【牧口】 なるほど。普段はそういうものに、常に触れておけばいいのですね?
【林】 はい。ただ、それだけでは、インプットに偏ってしまいますので、アウトプットの⽅に対する⼯夫も、必要かと思います。いつでも友達に会える環境の⼈でしたら、友達とのおしゃべりが、アウトプットの良い機会になると思いますが、お忙しい⽅たちにとっては、なかなかそれだけに、頼るわけにはいきませんよね。
【牧口】 なるほど。それに関しまして、林先⽣は、アウトプットの⽅は、どうされているのですか? もちろん、お仕事でのアウトプットの機会は、たくさんおありだと思いますが、それ以外では?
【林】 そうですねぇ。普段のアウトプットに関しては、友達とのおしゃべりと仕事以外で、やっていることが2つあります。
まずは、隙間時間に「メモ帳アプリ」に、着想・構想などを、思ったままに書きつけておくこと。これは、ある程度たまったら、整理してパソコンで編集し、いったん簡単な冊⼦にします。そして、その中で使えるものは、本の新作の、実際の執筆に使うこともありますね。
それから、もうひとつは、毎⽇、20分ほど、⾃分⼀⼈で、ラジオ番組を録っています。ボイスレコー ダーを購⼊して、それを使⽤しています。これは、特にテーマを決めず、形式もほとんどこだわらずに、ほぼ完全なフリートークで録⾳します。
誰に聴かせるわけでもありませんので、個⼈名などプライバシー的なことも特に気にせず、話していますね。目的は、⼀定時間、ひとりで話をするという習慣をつける、というのもありますが、それよりも、⾃分の気持ちの整理のための⼀⼿段、という感じですね。
【牧口】 なるほど。⼯夫しておられるんですね。しかも、それらなら、実⽤を兼ねていたり、楽しんで続けられたりしそうですよね。
【林】 その通りです。仕事でもなんでもないですので、気晴らし・趣味的な感覚でできるものがいいと思います。今時の⼈なら、⾳声ではなくて、動画を撮ってみるのも、⾯⽩いかもしれませんね。
【牧口】 そうですね。でも、そのようにして、先を⾏く⼈から学び、それを消化してアウトプットして、ということを、コツコツと繰り返せば、数年も経てば、それをやらない⼈と⽐べて、⼤きな差が出るでしょうねぇ。
【林】 そうです。そして、同じ苦労をするのであっても、苦労の質や種類が、全く別物になっている可能性がありますね。
若い⽅には、できるだけ早い段階で、そのことに気づいていただいて、⼈⽣勉強に積極的に、励んでいただきたいものですね。
【牧口】 そうですねぇ。私も、林先⽣ほどの知恵がありましたら、もっと苦労は少なかったんだろうなぁ、ってつくづく思いますよ。
【林】 いやいや。牧⼝先⽣だって、僕にはない、優れた知恵をお持ちだからこそ、今、ご⽴派にご活躍できているのだと思いますよ。
【牧口】 そうですか。ありがとうございます。
さて、すっかり話し込んでしまいましたね。先⽣も⼤変お疲れでしょうから、この辺でお開きにいたしましょうか。
【林】 そうですね。牧⼝先⽣も、今⽇は早くお帰りになって、ゆっくりお休みください。
【牧口】 はい、ありがとうございます。それでは、また、よろしくお願いします。
【林】 お願いします。
(林と牧⼝は、事務所を出て、それぞれ帰路につく。)
復刻版09「センチMENTALカレッジ!」~林音生 体験談講演会~ 林音生(はやしねお) @Neoyan0624
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