【牧口】さて、今⽇は、林先⽣には、ご⾃⾝の障がい者としてのご体験の概要を、お話しいただくわけですが、その前に、聴衆のみなさんのために、林先⽣のご病気である「双極性障害」って何だ？というところから、お話しいただこうかと思います。

【林】わかりました。「双極性障害」とは、気分の異常に⾼い「躁状態」と異常に低い「うつ状態」を交互に繰り返す病気で、古い⾔い⽅では、「躁うつ病」と⾔います。

　また、「双極性障害」にはⅠ型とⅡ型がありまして、Ⅰ型は「躁」と「うつ」の波が同じくらい、激しく現れるもので、Ⅱ型は「躁状態」はあまりひどくはなく、その代わりに、「うつ状態」がⅠ型以上に激しく現れるものです。

【牧口】なるほど。林先⽣は、Ⅰ型Ⅱ型どちらですか？

【林】僕はおそらくⅡ型だと思われます。ドクターから明確に、Ⅱ型だと⾔われているわけではありませんが、ドクターは「うつの⽅が強いタイプ」という表現を、しばしばされるので、Ⅱ型で間違いないと思います。

【牧口】なるほど。それで、Ⅱ型である林先⽣の場合の「躁状態」「うつ状態」は、それぞれどんな感じなんですか？

【林】まず、「躁状態」のときですが、Ⅱ型ですので、そんなにひどいものではなく、社会に対して、問題を起こすようなレベルまでにはなりません。⼝数が多くなったり、お⾦遣いが荒くなったりと、個⼈的な症状にとどまります。

　また、その際に、苦しみというものも、ほとんどなく、むしろ、何もかもがうまくいっているような感じがして、気持ちがよく快感で、現在や未来にも、⼤きな希望が持てます。この状態を「軽躁（けいそう）状態」と言います。

【牧口】なるほど。それでは、林先⽣の場合は、「躁状態」⾃体は、それほど悩ましいものではないのですか？

【林】そうですね。問題となるのは、⻑い「躁状態」の後には、その反動で、かなりの確率で、⼤きな「うつ状態」を引き起こして、⼤きな苦しみとなることなんです。

【牧口】なるほど。では、その「うつ状態」の時の、症状や苦しみは、どんな感じなんですか？

【林】僕の場合、Ⅱ型ゆえに「うつ状態」は、かなり深いものであることが多いです。症状としては、気分の激しい落ち込みがあり、⾏動も鈍（にぶ）ります。

　また、なにもかもがうまくいかなくなり、絶望に満ちた気持ちになってしまいます。最悪の時には、「⾃殺願望」につながることもありまして、昔は

「⾃殺未遂」を実際に⾏ったこともありますね。

【牧口】なるほど。それは苦しいでしょうねぇ。そんな「うつ状態」からは、どうやって抜け出せるんですか？

【林】特に効果的な⽅法はありません。頓服薬（とんぷくやく）が、多少は効く程度のものです。

　ですので、基本的には、嵐が過ぎ去るのをただ待つ、という感じです。⼀晩寝たら、治る程度のものも多いのですが、中には数カ⽉に渡って、続いてしまうこともあります。

　そんな時は、できるだけ友達と会って、⾃分ひとりになる時間を短くして、気を紛（まぎ）らすという⽅法を、取ることが多いですね。

【牧口】なるほど。わかりました。ありがとうございます。

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