第2話 さらばロック鳥

 基本ロック鳥に連れ去られる時は雛鳥の餌にされる時なので巣に着くまでの間シロさんとツインターを通して会話する。


シロ『今回も巣に向かわれてる感じですか?』

クロ『そうそう。もはや食われるのにも慣れてきたよ。傷もつかないし楽なもんさね』

シロ『人間としてそれに慣れるのはどうなんですか……?』

クロ『そんなこと言っても抵抗したところでだしなぁ……』


 一度抵抗を試みたらワニのデスロールだっけ?みたいなものをカマされて死ぬほど酔ったことがある。二度と抵抗しない絶対に。


 そんなことを思いながらおおぞら旅行を楽しんでいるとゴァァ!と言う鳴き声と共にロック鳥の半身が食いちぎられる。


「うおっ珍しっ、龍じゃねぇか!」


 ロック鳥を食いちぎったそれは西洋のドラゴンまんまの見た目をしたこの世界で五体しか居ないらしい龍の1匹だった。


 半身を失ったことで地面へと墜落していくロック鳥のくちばしの方からスマホを構え龍の姿を激写する。


「んー完璧な写真。神々しさとか絶対的な強さみたいなんが感じ取れるな。タイトルどうしよう……うーん……『龍』っと。ここはシンプルにい」


グシャッ


 そこまで喋ったところで頭から地面へと墜落し意識を失う。外側に傷がつかないだけで内側めちゃくちゃ傷つくんだよね。



 しばらくしてから目を覚ます。俺の横には半身を失ったロック鳥が転がっている。


「龍さんは……いねぇか。龍に喰われたら良い経験になると思ったんだけどなぁ。まぁしゃあないしゃあない反応でも見るかツインターの」


 ツインターを開くと先程投稿した写真……時間を見る限り3時間前に投稿されていたそれにシロさんからの反応があった。


シロ『おー!龍!良いですねかっこいいですね!』


 なんでこの神様時々語彙力が貧弱になっちゃうんだろうなぁ……。


 まぁいいや知らない場所に落ちたし探索するべ探索。よっ……あれ?よっ……うん。


 腰が抜けて歩けねぇや。



 しばらく経つと抜けていた腰が治ったので宛もないまま彷徨い歩く。ロック鳥の半身が食われていなかったことからしてここら一帯には魔物たちは居ないようだ。助かる。


 傷がつかないとはいえ痛いもんは痛いし感触が気持ち悪いからね。


 しばらく歩くと開けたような場所に出て、目の前いっぱいに湖が広がっていた。


「おー……」


 本当に綺麗な景色を見てしまうと綺麗と言う言葉すら出てこないことを初めて知った。


 湖は透き通るような青さで天から降り注いだ光を反射しキラキラと輝いている。


「この感動をシロさんとも共有したいな。画角工夫したらいけるかなぁ」


 この感情を出来る限り伝えようと色々な角度から写真を撮っていく。この湖は何度見ても飽きることがなく綺麗だ。


 撮り始めること2時間。ようやく満足のいく写真が撮れたためタイトルを『いつかシロさんと一緒に見たいな』にして投稿してから湖の中へと入っていく。


 え?何故かって?この湖は透き通りすぎて底とか中がしっかりと見えるんだけど奥の方に遺跡みたいなのがあったからだな。


 苦しいだけで呼吸をしなくても死ぬことは無いのでゆらゆら泳ぎながらその遺跡へと近付いて行く。


 周りを泳ぐ魚や海洋生物や海洋魔物の写真も撮る。毒がある奴らほど綺麗な色をしているのでそいつらを中心に撮っていく。


 そんなこんなで遺跡へと到着する。


 眼前に広がるものは都市が朽ちたまんまの姿であり、都市1つがこの湖に沈んだような印象を受ける。


 ……ん?あれそういえばここの湖ってこんなに広かったっけ。地上から見た感じだとこんな都市が丸々入る広さは無かったし……。


 まぁいいや写真撮ろ。異世界だしこういう事もあるでしょ。


 パシャリ、パシャリと写真を撮っていく。都市を撮ったり都市をバックに自撮りしたりと様々な写真をフォルダへと納め良い感じのものを投稿していく。


 シロさんからの反応は湖を地上から撮った写真以外に来ていない。それにも『……』のような反応しかついていない。なにかあったのだろうか。


 その後もしばらく都市を見て回ったのち湖を出ようと水面に上がっていく。


 水面から顔を出すと俺は湖の真ん中で浮かんでいるようだった。目視で距離を計ってみても明らかに湖よりも都市の方が大きい。不思議なもんさね。


 バタバタと足を動かし元来た所へと戻る。乾いた体を乾かそうと木にもたれかかり考え事をしていると先程投稿していた写真の1つにシロさんから反応が飛んでくる。


シロ『クロさんはまだそこの湖の中にいらっしゃいますか?』

クロ『いんや?楽しみ尽くしたから湖から出て木にもたれかかってるよ』

シロ『了解です』


 珍しいなシロさんが更に返信してくんの。どうしたんだろう。そう思っていると目の前に太い光の柱が降ってくる。


「……は?」


 驚くほど音もなく降ってきたソレはこの湖にはあまりにも似合わない。そんな、ソレを見ていると中心から亀裂が広がり遂には砕けてしまう。


「クロさーん!来ちゃいましたよー!」


 ……その中からシロさんが出てきた。


「……なにやってんの?」


 未だに状況の理解も出来ぬままとりあえずニコニコ笑顔で待っているシロさんに話しかけてみる。


「クロさんが私と一緒に湖を見たいとおっしゃってましたからね!これはもう愛の告白だろうとウキウキで来ましたよ私!」

「おぉんなるほどぉ……」


 軽率に言うべきではなかったかあんなこと……いや見たくないって訳じゃな……愛の告白だろうとウキウキで?


「クロさんが私の事好きだなんてびっくりしましたけどしょうがないですよね!だって私可愛いですし!」


 確かにシロさんは可愛い。大きすぎず小さすぎない体躯に童顔な顔、胸は慎ましいがスラッとしていてスタイルがいい。振り返ってみれば確かにこれ以上の好条件の人は居ないだろう。


「考えたんですよ?私神様だし寿命の違いが……とか。でもクロさん私のお陰で不老不死じゃないですか!ならもう心配することはありませんよ結婚です結婚!」

「話が飛躍しすぎじゃないかねシロさんや」

「はっ確かに!まずは付き合ってから……ですよね!」


 どうやらこの女神様の中では俺と付き合うことはもう確定しているらしい。……嬉しい……な。どうやら俺は今更自分の気持ちに気が付いたようで言葉にしがたい幸せな気持ちが体を駆け巡る。


「ですからぁ……一言、欲しいなぁ……ちらっ」


 シロさんが期待を込めた眼差しでこちらを見る。俺も男だ。ここは覚悟を決めよう。


「好きだよ、シロさん。俺といつまでも一緒に居てくれない?」

「おぉういつまでも一緒と来ましたか……はいっ!喜んで!私も好きですよクロさん!」


 こうして俺たちは付き合うようになり、一緒に湖を見たあとも色々な景色を見て回ったのでした。おしまい。






「これ語るの10回目くらいだけど楽しい?」

「うん!お父さんとお母さんの馴れ初めなんて100回聞いても飽きないよ!」

「100回語るのはきついなぁ……」


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メンタルだけ強いクソザコナメクジ、女神様に貰った不老不死の力で異世界を旅する 中田の刀な鷹 @Tanaka_kanata_takana

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