メンタルだけ強いクソザコナメクジ、女神様に貰った不老不死の力で異世界を旅する

中田の刀な鷹

第1話 異世界なう

「うーん……なんか違うんだよなぁ。画角が悪いのかねぇ……よっ」


パシャッ


「んー?おっいい感じじゃん。これにするか」


 いつものようにツインターに先程撮れた写真を貼り付け、言葉を添えて投稿する。


「『大空旅行中なう』……っと」


 その写真は内カメで撮られたであろう写真であり、広大な大空を全長は10mにも渡るであろう巨大な鳥に服を咥えられながらピースをする男が写っており、何故か鳥もカメラ目線に見える。


 投稿を終えた現在鳥に咥えられ大空を旅行中の男がぽつりと言葉を漏らす。


「いやぁ何処まで連れてかれんのかなぁ。楽しみが止まんねぇなぁ」


 男はシンプルに狂っていた。




──遡ること、1年前


『残念ですが、貴方は死んでしまいました』


 神々しい光を背中で受け止めながら凛とした表情で全身が真っ白の女性が俺に声をかけてくる。


 俺は声や体を無意識のうちに震わせながら言葉を返す。


「おっ俺……俺っ!ほんとにあんなんで死んだんですか!?」


 その言葉を聞いた推定女神様はふいっと顔を逸らしながらこう語る。


『えぇ。貴方は貧弱すぎた結果、棚の上にあるものを持ち上げようとして失敗しその結果落ちてきたそれを頭で受け止めて死んでしまいました』

「だっせぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 あまりにもあんまりな死因に、俺は泣いた。大号泣だった。



 しばらく年甲斐もなく泣き叫んだ後落ち着いたので女神様と会話を交わす。


「死んだのに意識があるってことはこれ俺異世界に転生させられる流れだったりします?」

『えぇ、その通りです。そちらの世界の日本人は話が早くて助かりますね』

「転生特典とかって……」

『もちろんありますとも。ないと5秒くらいで死んじゃいませんか?貴方』

「舐めないでくださいよ女神様」


 あんまりな言い分に憤りながらも毅然とした態度で言い返す。流石にそんな事を言われてしまっては耐えられない。


『そっそうですよね。流石に5秒は……』

「5秒も持つわけないでしょ!2秒とかですよ俺なんて!」

『なんでその熱量でそんなに情けないことが言えるんですか?』


 過大評価されてはこの俺でも流石に訂正せざるを得ない。5秒も持つわけないだろう俺が。


『という訳で、とびきり強い転生特典をあげないときっとすぐに再会してしまうであろう■■さんにはこちらを差し上げます』


 恐らく名前を呼ばれた時にノイズが走り何も聞こえなくなりつつも渡された特典の効果が頭に流れ込んできたのでそっちへ思考が持っていかれる。


「【シロの呪い(解呪不可)】……?なんすかこれ」

『それは私の最大級の呪いです。効果としては老いず、朽ちず、傷つかず、成長することが出来なくなります』

「不老不死になるって感じですかね」

『概ねその認識で間違いありません。本来ならこのようなものを特典にはしないのですが■■さんは何故かメンタルだけは異様に強いので大丈夫でしょう』


 まぁ確かにメンタルは強い方ですけど……耐えられるかなぁ不老不死なんて。なったことないから分かんないなぁ。


「他のじゃ駄目だったんですか?」

『他のだと■■さんが5年以上生きる可能性が0.3%くらいなんですよ。残念ですけど』

「俺ってやっぱ雑魚なんですかねかなり」

『言い辛いですが貴方の戦闘力を数値にすると3くらいですね』


 ドラゴンボー〇の一般人より弱いじゃん……測り方違うかもだけれども。


「例えば俺の世界の犬とかは戦闘力どれくらいなんですかね」

『平均値は300です』

「犬って俺の100倍強いんだ……」


 犬が強すぎるのか、俺が弱すぎるのか、どっちなんだろうか。どっちもなんだろうな。


「ファンタジーの代名詞のゴブリンとかスライムはどれくらいなんですかね」

『ファンタジーだとよくスライムって雑魚になりますけど貴方の転生先の世界だとスライムはかなりの強者ですよ?ゴブリンは1000、スライムは500000くらいですね平均』

「絶望しかないですね」


 ゴブリン俺の333倍は強いの?スライムに至ってはもう何?分かんねぇよもう。


『そんな貴方にはもう成長すら見込めないのでこれを渡すしかなかったんですよね』

「残酷ですね。真実って」

『そっその代わり一つだけなら好きな物あげますよ?強力すぎるものは駄目ですけど……まぁ何持たせても弱そうなんで』

「隠しましょうよ最後の本音。泣いちゃいますよ?」

『やめてください』


 欲しいもの……欲しいものかぁ……。武器とか防具はどうでもいいからなしにするとして……あぁあれにするか。


「じゃあスマホみたいなの欲しいですスマホみたいなの。写真とか動画撮りたいです異世界の」

『あぁー……それくらいなら大丈夫ですよ。どうぞ』


 そう言って見た目が完全にスマホの物体を手渡される。


『起動してみてください』

「りょ、うかいです……どうつけるんだ?これ。あっついた」

『そのスマホにはカメラと軽いマップ、ツインターと言うアプリが入っています。』

「ほんほん……ツインターってなんです?」

『2人用のTw〇tterみたいな感じですね。写真や動画を貼り付けたりも出来るので良いの撮れたら投稿してください。見ます』

「あぁこれ女神様と俺専用なんすね」


 やっぱあれかな?娯楽とかに飢えてんのかな。


『神になってから中々良い景色と言うものを見る機会がなくてですねぇ……期待してますよ■■さん』

「任せてくださいよ女神様」


 こんだけ良くしてくれたなら頑張りますよしっかり。


『では諸々終わったことですし、貴方をこれから異世界に転生させます。基本的な情報はそのスマホに詰めておいたので確認してくださいね』

「了解です女神様」

『では、良き旅を』


 その言葉と共に視界が光に包まれ浮遊感が全身を襲う。


 目が覚めた時目の前に女神様の姿はなく、緑一色の草原がその存在を主張していた。





 そんな一年前のことを思い返しながらツインターについた反応に返信する。


シロ『なんで結構な頻度でロック鳥に連れ去られるんですかクロさん』


「『運命力ゥ……ですかね』っと。いやぁ確かになんでこんな連れ去られるんだろうなぁ……」


 異世界に来てからこれで4度目なんだけど。呪われてる?ロック鳥に。いやシロさんには呪われてんだけどさ。


 異世界に来てからの1年間でツインターを通してシロさんとかなりのやり取りをした結果かなり仲良くなってしまった。いやいい事だけどね?


 元の名前が思い出せないしと適当にシロさんに合わせてクロと言う名前を自分に着けたのも仲間意識につながり友情を後押ししたのかもしれない。


 まぁいいか、楽しいし。


 相も変わらずロック鳥に咥えられながら口角を吊り上げ笑う。


 さて、今日はどんな写真が撮れるかな。


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