第14話 迫り来る脅威
クルスはスマホの画面をじっと見つめ、再び異世界アプリが復活したことを確認すると、喜びに震えた。
やっと戻ったこのつながり、そしてリアを探す新たな手がかりを得たことで、彼の胸には希望が蘇っていた。
「リアを探すにはセルスの助けが必要だ。闇の魔女が復活した今、この一年で開発した新しいアプリも必要だな」
クルスは慎重にフォルダを開き、最新のアプリを異世界アプリのフォルダに入れていった。
まずは、「
続いて、「
クルスはこれらのアプリをフォルダにまとめ、万全の体制を整えた。その瞬間、スマホが再び鳴り、セルスからの緊迫した声が耳に飛び込んでくる。
「クルス、今アゼルド帝国とエルスフィア王国の国境近くに魔物の大群が現れて、王国に向かって進行しているの。どうか、あなたの不思議な力を貸して!」
クルスは即座にマップアプリを開き、魔物の進行状況とエルスフィアの軍の配置を確認する。
「セルス、判明している分でいい。敵の種族を教えてくれ」
「右に展開しているのはゴブリン、中央は魔法師団のように見えるわ。空を飛ぶ部隊もいるみたい。左はオーク」
クルスは「
「セルス、まず右翼の騎兵部隊を敵の側面に回り込ませ、中央魔法師団は雷と炎を組み合わせた呪文で主力を攻撃するんだ。左翼の弓兵は防御を固めつつ後方支援を」
セルスはクルスの指示に従い、手際よく部隊を動かし始めた。
「右翼騎兵、側面から突撃して敵を攪乱せよ!中央魔法師団、雷と炎を組み合わせて攻撃を仕掛けるわよ!」
セルスの号令で、右翼の騎兵部隊が疾風のごとく側面から攻め入り、ゴブリンの陣を混乱させた。
続いて、中央の魔法師団が雷炎の呪文を唱え、魔物たちの主力を圧倒的な炎と雷の嵐で焼き尽くしていく。
魔物たちは押し寄せる力を失い、次々と後退していった。
「これで、敵は崩れるはず!」セルスは自信に満ちた表情で指揮を続ける。
だが、クルスの「
しかしセルスはその指示をすぐには受け入れなかった。「今はこの流れを大切にしたい。今こそ攻め時よ!中央魔法師団、火球を連続して放って敵を仕留めるわ!」
セルスの命令で魔法師たちは連続攻撃を開始したが、それは敵の罠だった。予想以上に魔力を消耗し、次第に兵たちの疲労が浮き彫りになってきた。
勢いを失った兵士たちの連携が乱れ始め、再び押し寄せてくる魔物の群れに対応しきれなくなっていく。
セルスは悔しそうに唇を噛みしめ、クルスに謝った。「ごめん、指示に従わなかったのが間違いだったわ」
クルスは冷静に対応し、迅速に新たな指示を出した。「まだ挽回できる。左翼の弓兵を前線に配置して防御を固め、右翼騎兵で敵の背後を突こう」
セルスは今度こそクルスの指示に従い、盾兵を前に配置して防御陣を固め、弓兵が後方から援護射撃を行った。
騎兵たちは素早く敵の背後に回り込み、徹底的に攻撃して魔物たちの陣形を崩した。兵たちは見事な連携で動き、敵を徐々に圧倒していく。
戦場が彼らの優位に傾く中、セルスは新たな敵の動きに目を光らせていた。
「クルス、なんとか戦況を立て直せたわ」
クルスも応えた。「いや、エルスフィア軍が高いし士気で連携しているおかげだ。でもまだ油断はできない。次に現れる敵に備えて、準備を怠らないように」
再びストラテゴウスから警告が入る。マップを見ると大きな点が急速にこちらに向かっている。
その瞬間、戦場の端から異様な気配が立ち上り、兵たちの間に緊張が走る。セルスもふとその方向に目をやり、闇の中にうごめく巨大な影が姿を現した。
「セルス!部隊をすぐに下げろ!」
セルスがそれに応えて全軍に指示を出す。
「全軍後退!!!」
「何だ……あの巨大な影は?」
セルスは、黒い影がじわじわと戦場に迫ってくるのを見つめ、全身に緊張が走った。
それがただの魔物ではなく、異常な力を持つ敵であることが、近づくにつれて明らかになってきた。
すでに小規模の魔物は撃退したとはいえ、この巨体が前に出てきたら、王国の兵士たちにはもはや太刀打ちできないだろう。
「全軍、後退!この場は私が引き受ける!」
セルスは声を張り上げ、全軍に指示を出した。部隊が慌ただしく下がる中、彼女は一歩前に進み、クルスと通話を続ける。
「セルス、あの魔物に一人で挑むなんて無茶だ!いくら君でも、相手は尋常じゃない力を持っている!」
「わかってるわ。でも、ここで兵士たちを犠牲にはしたくないの。エルスフィア王国の守りを託された身として、誰一人この地で命を落とすことは許されない」
セルスの真剣な瞳が闘志に燃え、彼女の強い決意がクルスにも伝わってきた。しかし、彼は心の中でその優しさが危険に直結することを感じていた。
「その優しさが、君を苦しめるかもしれない……でも、俺が必ず君を勝たせる」
セルスはその言葉に少しだけ微笑み、構えを正した。
「ありがとう、クルス。まず、あの魔物のことを調べてほしい」
クルスは即座に異世界ブラウザを立ち上げ、セルスから魔物の特徴を聞き取った。
「大きな黒い体、背中には無数の棘、鋭い爪と牙……おそらく東の大陸にのみ伝承されていた古の魔物だ。こいつがなぜ西の大陸に……」
検索結果が瞬時に画面に現れた。
「セルス、その魔物は『ダークスパイン』と呼ばれるものだ。伝承によれば、強力な魔力で闇を纏い、かつて東の大陸の一族を滅ぼしたって言われている」
目の前に立ちはだかる異様な黒い巨体を見つめ、セルスは息を呑んだ。
巨大な闇の力に包まれたその魔物「ダークスパイン」は、一見して普通の魔物とは違う、異次元の存在感を持っていた。手強いと直感したセルスだったが、民と兵士を守るため、一歩も引かずに向き合った。
「セルス、気をつけろ。普通の攻撃や魔法は効かないかもしれない」
クルスの警告が耳に届くが、セルスは苦笑するように剣を握りしめた。
「わかってる……でも、ここで止めなければこの大陸にも闇の瘴気が広がってしまうわ」
ダークスパインが低く唸り声を上げ、黒い爪を振り下ろす。セルスはその攻撃を寸前でかわし、剣を握り直して一気に切りかかった。しかし、剣は黒い鱗に阻まれ、まるで刃が通らない。
クルスの声に、セルスは緊張を押し殺して剣を握りしめた。
「それでも……ここで止めなければ、皆が危険に晒される。私が何とかするわ」
ダークスパインが低い唸り声を上げ、黒い爪を振り下ろす。セルスはかろうじてその攻撃を避け、体勢を整える。硬い装甲を目の前に、彼女は幾度も剣を振りかざすが、その刃は悉く弾かれてしまった。
「なんて硬さ……!クルス、弱点はわかる?」
「ダークスパインの弱点はまだ不明だ。だが、今のところ防御を優先して、隙を見つけて攻撃するしかない」
セルスはクルスの助言に従い、守りに徹しながらダークスパインの動きを見極めた。だが、巨体に見合わない俊敏さで次々と攻撃を繰り出してくる魔物に、彼女の体力は次第に削られていった。
「まだよ……絶対に倒さないと!」
セルスは再び攻撃を試みるが、ダークスパインの硬い装甲に阻まれるたびに焦燥が募っていく。幾度か隙をついて剣を振るうも、効果は薄く、逆に魔物の攻撃がじわじわと彼女を追い詰めていった。
「セルス、いけるか?」クルスの不安げな声が聞こえるが、セルスは気丈に笑みを浮かべて答えた。「もちろんよ。でも……このままじゃ厳しいかもしれない」
クルスはアルケウスを使ってダークパイソンに効果的な魔法を合成する。
「魔法剣だと………?そうかそういう事か!」
その時、クルスが提案した。
「セルス、炎の力を剣に宿せば、闇を貫けるかもしれない。魔法剣の一撃で決めるんだ!」
「魔法剣?聞いた事ないよそんな技」
セルスは一瞬迷ったが、覚悟を決めて大きく息を吸い込み頷く。
「詠唱は三詠唱。剣に魔力を込めるイメージだ!」
クルスは剣に炎の力を注ぎ込むことを決意した。心を集中させ、深く呼吸し、炎の力を求めて詠唱を始める。その時セルスはクルスと繋がる感覚を持った。
「これが共鳴なの?不思議…でも温かい」
「烈火よ、我が魂を燃やし、剣と共に闇を断て!」
詠唱が進むにつれて、剣が赤々と燃え上がり、まるで自身の意思を持つかのように激しく燃え上がる。
炎の光がセルスの周囲を照らし、彼女の決意を宿した剣が、次第に灼熱の力で輝きを増していく。
「すごい!この一撃に、全てをかけるわ……!」
セルスは全身全霊を込めて剣を振り上げ、ダークスパインに向かって一直線に突進した。そして、渾身の力を込めてその剣を振り下ろした。
「これが、私の新しい力……“
燃え上がる剣がダークスパインの装甲を突き破り、灼熱の炎が魔物の体内を焼き尽くしていく。激しい火炎に包まれたダークスパインは絶叫を上げ、やがてその巨体は崩れ落ち、黒い闇が消え去っていった。
戦場に静寂が戻り、セルスはその場に立ち尽くしたまま、肩で息を整えながら、静かにクルスに告げた。
「クルス……貴方がいてくれ良かった」
クルスも静かに答えた。「セルス、君が俺を信じてくれた。そしてそれを全て実現した君の力だ」
セルスとクルスはお互いに一歩共鳴の力が高まっていることを感じた。
「ここは片付いた!城へ退却する」
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