第9話 暗黒龍ディブロスとの死闘

精霊の剣を手にしたリアは、その輝きが増すたびに体中に力が漲っていくのを感じていた。


ディブロスの硬い鱗に攻撃が入るようになっていた。


しかし、その一方で、ディブロスもその鋭い目を光らせ、彼女の存在を完全に捉えたように闇の魔力をさらに増幅している。


クルスも異世界ブラウザで攻略情報を探す。


「リア、気をつけろ……ディブロスが何か大きな攻撃を仕掛けてくる!」クルスの警告にリアは緊張感を増し、戦闘体勢を一層整えた。


次の瞬間、ディブロスが大きく口を開き、巨大な黒炎のブレスを彼女に向けて放ってきた。その迫力とスピードに、リアの心が一瞬揺らぐ。


「くっ……!」リアは咄嗟に反応し、精霊の剣を前にかざして防御の構えを取る。しかし、ディブロスのブレスの威力はあまりにも強力で、彼女の周りに揺らめく精霊の加護の光が削り取られていくのを感じた。


「くそもっと強力な防御が必要だ!」クルスはすぐに魔法翻訳アプリで防御魔法を検索し、十詠唱の「聖域の防壁」を見つけ出す。


「リア、聖域の防壁を試してみよう。二詠唱に短縮して防御力を上げられるはずだ!」


リアはクルスの指示に従い、力を込めて詠唱に入った。「聖なる守り手たちよ、闇の力から我を守れ――聖域の防壁!」


リアの周囲に輝く聖なる結界が広がり、彼女を包み込むように盾を張り巡らせた。その瞬間、黒炎が結界にぶつかり、激しい衝撃音と共に広間全体が揺れる。


「……すごい威力だ……」リアは息を呑みながら、何とか耐えきったことに安堵したが、ディブロスの攻撃はまだ終わっていなかった。


ディブロスは次にその巨体を振りかざし、鋭い爪でリアに向かって一撃を放つ。その速度と力は、並の防御では通用しないほどのものだった。リアは精霊の剣でその攻撃を受け止めるが、あまりの衝撃に足元がぐらつく。


「クルス、これじゃ防ぎきれない……!」リアが必死に踏ん張りながら叫ぶ。


「リア、持ちこたえて!次に使える魔法を……」クルスは焦りながら、さらなる対策を探し始める。


「これもダメだ……落ち着け闇雲に探してもダメだ。必ず突破口はあるはずだ」


ディブロスが再び大きく息を吸い込み、今度はさらに強大なブレスを放とうとしているのを見て、クルスの心拍数が上がる。スマホの画面を強く見つめ、必死に検索結果に目を走らせた。”暗黒龍 ブレス 絶対防御”クルスは検索を続ける。


「あった!大地の守護霊」


「リア、次はこれだ!十二詠唱の『大地の守護霊』!長い詠唱が必要だけど、これならディブロスのブレスも防げるはずだ。三詠唱での発動方法を伝える。」


リアは深く息を吸い、全身の魔力を集中させた。「クルス、これがうまくいかなかったら……」


リアはディブロスの圧倒的な力の前に弱きになる。

視覚共有の視線も俯いているようだった。


「リア、弱きになるな!大丈夫だ!信じよう」


リアは彼の言葉に勇気をもらい、顔を上げて詠唱を開始した。「大地の精霊よ、我が身を護りし盾となれ――大地の守護霊!」


その瞬間、リアの周囲に大地の精霊たちが集い、彼女を包み込むように結界が形成されていった。ディブロスのブレスが放たれ、激しい衝撃が彼女を襲うが、大地の守護霊の力がそれをしっかりと防いでくれた。


クルスはリアの防御が成功したことに安堵する。

「でも防御だけではダメだ。なんとかしないと…」


リアの体には大地の精霊が生み出した守護がまとわりつき、ディブロスの猛攻を受け流していた。しかし、その代償として彼女の身体も限界に近づきつつあった。


クルスの支援で高位の魔法を次々と駆使してきたものの、暗黒龍ディブロスの力は圧倒的だった。


視覚共有をしながらの戦いはリアにも負担がかかっていた。


「リア、このままじゃ消耗しきってしまう……最後の一撃にかけるしかない!」クルスの声が焦りを帯びて響く。


リアは深くうなずき、手にした精霊の剣を見つめた。「……クルス、もう一度、君の力を借りるわ」


魔法翻訳アプリであらゆる攻撃魔法を検索した。すると一つの魔法が目に留まる。


「リア、これだ!十二詠唱の『天雷の降臨』。だけど……詠唱数が四つも超えてしまう……」


「……四詠唱か……」リアは息を整えながらその詠唱数に躊躇した。だが、クルスと視覚共有で繋がる今の共鳴の強さが、いつも以上の力を引き出しているのを感じていた。


「リア、君ならできる。共鳴が今まで以上に強まっている今、君なら四詠唱を超えて放てるはずだ」


リアは決意を固め、静かに深呼吸をし、天を仰ぐように剣を掲げた。視覚共有による精神的な負荷がじわりと押し寄せるのを感じながらも、彼女はクルスと共に戦っていることを胸に詠唱を始めた。


「雷鳴の力よ、我が剣に宿り、暗黒の災いを討て」


あたりに静寂が訪れる。リアの詠唱を大地が聞いている感覚に包まれる。自由自在に魔力をコントロールできる感覚がリアにはあった。


その瞬間、強大な魔力がリアの体に流れ込み、その負荷が彼女の精神をさらに圧迫する。


共鳴を維持しながら長い詠唱を続けることがいかに難しいかを、リアは肌で感じていた。


視覚共有でディブロスの猛威を目の当たりにするたびに、恐怖と集中を同時に維持することが困難になっていく。


「リア、あと少しだ!魔力のコントロールに集中して……君ならできる!」クルスの励ましが届き、リアは歯を食いしばり、全力で魔力を制御した。


やがて剣先が青白く輝き、リアは最後の一撃を放つための詠唱を続ける。「降臨せよ雷の裁きよ!――天雷の降臨!」


彼女が全力を込めて振り下ろすと、剣から放たれた雷光がディブロスに一直線に飛び、広間を閃光が包み込んだ。暗黒龍ディブロスは雷に飲まれ、全身が焼き尽くされていく。


光が消え去ると、ディブロスは巨体を崩し、静かにその場から消え去った。リアは安堵の息をつき、膝をついて深い呼吸を整えた。「……終わった……」


クルスの声が優しく響いた。「リア、よくやった。本当にすごいよ……」


リアは彼に向かって微笑みながら、深い疲労の中で「ありがとう、クルス。君がいなければここまで来られなかったわ」と静かに答えた。


二人は深い共鳴の中で、勝利に安堵した。


「さあ目的のものを回収して戻ろうか。」

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