第4話 運を極める試練

 レオとセリーナの旅は険しかった。ゾルドの影響を受けた人々はどこか歪んでおり、街道を歩く彼らの目には荒廃した村々や疲れ果てた表情の人々が映る。運を貯め直す方法を模索する中、レオは自らの経験をもとにセリーナに「運の極意」を教え始める。



 「運は目に見えないけど、確実に存在する力だ。」

 ある日、森の中で焚き火を囲みながら、レオが語り始めた。


 「運を貯めるってどうやるの?」

 セリーナの問いかけに、レオは少し考え込んだ。


 「まず、運は一人で貯めるものじゃない。人との関わりの中で、善意や感謝を通じて生まれるんだ。」

 そう言って、レオは小さな例を挙げた。


「 例えば、僕が村でやっていたことは、ごく普通のことだったよ。道端のゴミを拾うとか、誰かが重い荷物を持っていたら手を貸すとか。でも、それを続けていると、不思議と『ありがとう』って言葉が増えていったんだ。」


 「それだけで運が貯まるの?」

 セリーナは首をかしげた。


 「そうだ。運は見返りを求めない行動に反応する。それを積み重ねることで、目には見えないけれど、運の流れが良くなるんだよ。」



 その夜、セリーナは自分の過去を思い返していた。家族がゾルドとの契約を結んだ時、自分は何もできなかった。その無力感が、ずっと心に影を落としていた。だが、レオの話を聞いて、彼女の中に小さな希望が芽生え始める。


 「私も……運を貯められるのかな?」

 セリーナの呟きに、レオは力強く頷いた。


 「もちろんだよ。まずは小さなことから始めてみよう。」



 翌朝、二人は旅の途中で出会った村で運を貯めるための試練を始めることにした。


 村には、川が氾濫しそうになって困っている老人がいた。川岸の堤防が壊れかけており、急いで修理しなければならない。レオはセリーナにこう言った。


 「僕たちで手伝おう。これが運を貯める第一歩だ。」


 セリーナは最初、戸惑っていた。だが、レオの背中を見ながら、少しずつ行動を起こす勇気を持つようになる。


 二人は泥まみれになりながら堤防を修復した。その過程で、村人たちも協力し始め、次第に作業が進んでいく。


 「ありがとう、本当に助かったよ。」

 老人が涙を流しながら二人に感謝の言葉を述べた時、セリーナは胸の奥に温かい何かを感じた。それは、久しく忘れていた感覚だった。



 作業を終えた後、レオはセリーナに言った。


 「今、君の中に少しだけ運が戻ってきたはずだよ。」


 セリーナは自分の手のひらを見つめた。見えないけれど、確かに何かが変わった気がした。それは、自分が誰かの役に立てたという実感だった。


 旅を続ける中で、セリーナは少しずつ自分の心が軽くなるのを感じていた。レオの教えを通じて、彼女は運を貯めることの意味を学び、それを実践し始める。


 「運を貯めるのは、自分のためだけじゃないんだね。」

 セリーナが呟くと、レオは微笑んだ。


「そうだよ。運を貯めることで、自分も周りも幸せになれるんだ。そして、それが次の運を生むんだ。」


 

 こうして、レオとセリーナは運の本質を学び、共にそれを極める旅を続ける。彼らの心には、ゾルドを倒すための新たな覚悟が芽生えていた。


 「次はどんな試練が待っているのかな?」

 セリーナが笑顔で尋ねると、レオも笑顔で答えた。


 「それを楽しみにしていよう。」


 二人の運の旅は、まだ始まったばかりだった。

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