プロローグ(2) 加賀東冶(カガトウヤ)
天国とは、誰もが思っているような
「美しく、生前の苦難が癒されるような場所」
ではない。
それは言わば人々の願いや思いが全て詰まった宝箱の様な物である...
...
「おじいちゃん!おじいちゃん‼︎またあの話してよ!」
ある老人は純粋そうな子供に微笑み言った
「×××はその話が好きだなぁ...
わかった。よーく聞いておくんだぞ」
子供は言う。
「うん!」
...
...
...
...
コツ...コツ...コツ...
アスファルトと硬い外底が当たった、高く重みのある音が蛍光灯に照らされる夜道に轟く。
「じいちゃん...」
一人で歩いていると、昔の事が思い出されるのは俺だけだろうか、
「もう入社して5年目か...なんで会社員してんだろ...」
〜〜〜〜〜
俺は消防士になりたかった。
子供の頃に体験した大火事から救ってくれたおじさんと昔観ていたヒーローアニメに憧れて。
ただ、俺は体が弱かった。
消防士に向いている体じゃなかった。
だから筋肉をつけようとして、トレーニングも沢山した。
だが、どうしても届かなった。
消防士にはなれなかった。
会社員しか残された道はなかった。
俺はそれでも踏ん張った。
人並みの努力をして少しばかりの成果を残して何とかしがみついて社会に揉まれながら生きてきた。死にたくなるぐらい苦しくなる事もあった。本当に死んでしまおうかと思っていた。
そんな中で嫁ができた。
そして、今はまた守る者ができた。
娘だ。
俺はどんなことがあろうとこの二人を守ることを誓った。
〜〜〜〜〜
「そうだったな」
絶対に死ねない。
死んでも生き返ってみせる。
そう思っていた時だった。
ある小さな人影が見えた。
「女の子...?」
なぜこんな遅い時間に一人で歩いているんだ?
その少女は信号の無い横断歩道を渡り対岸に行こうとしていた。
そこへトラックがスピードを出して走ってきている。
どちらもお互いの存在に気づいていない様子だった。
このままだと少女に突っ込んでしまう。
「危ない‼︎」
考えるより先に体が動いた。
「ドンッ」
...
...周りで人々が叫ぶ声、助けを呼ぶ声が聞こえてくる。
...遠くでは救急車がサイレンを鳴らす音が聞こえる。
...「こりゃ...駄目だな...」...
...俺そんな酷いのか?...
...そういえばあの子どうなったんだ?
...「女の子の意識はあるぞ!」...
...よかった...無事か
...
...眠いな
...
...あぁ
...
...死にたくないな
...
...さやか...あや...
...「か?」
...「です...」
...「大丈夫ですか?」
何者かが東冶の体を揺さぶる
...「おーい」
...大丈夫じゃないって...
...「おーい」
...なんだようるさいなぁ
...「起きてくださーい」
...起きればいいんだろ?起きるよ
東冶は目を開けた
「あ、起きた」
...女性?
「あのー...大丈夫ですか?」
東冶はなぜか冷静だった。
「まあ...」
東冶の目の前には辺り一面に彼岸花が咲いていた。
一緒にして彼の冷静さは消え散った。
...「は?」
「ここどこだ?」
「てかなんで生きてんだ?」
プロローグ 終
天獄 @ma-pa
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