(4)閃海機救
ロードラストは、砂浜の上で青白い光を静かに放ち続けていた。低く規則的な振動音が、機体から足元の砂に伝わり、視界の端では小石がかすかに跳ねている。この感触、ロードラストが確かに「生きている」と思わせる手応えに、俺の胸が高鳴った。
「とりあえず、ここまで動いてくれただけで十分だ。」
肩をすくめながらアヤカに言う。冷静を装ってみたけど、実際は頭の中でガッツポーズを決めてた。「よっしゃあ!」とか叫びたい気分。でも、それを出すとまたアヤカに「調子乗りすぎ」って言われそうで、ぐっと堪えた。
けど、その安堵も束の間だった。
突然、視界が閃光に包まれる。眩しい――というより痛いくらいの光が海から走った。一瞬で昼間みたいに周囲を照らしたかと思えば、轟音とともに「ザバァン!」とでかい水音が耳を劈いた。波が予想外に高くなって、砂浜まで押し寄せてくる。潮風が急に冷たくなり、肌に刺さるような感触が広がった。
「今の…なんだ?」
思わず呟く。いや、そんなこと言ってる場合じゃない。何か、ヤバいことが起きてる――そんな予感が全身を駆け巡った。
操縦席から降りて、急いで周囲を見回す。すると、波間に何かが浮いているのが目に入った。波がそれを砂浜の方にゆっくり押し流している。
「…待てよ。あれ、人か?」
息が詰まる。いやいや、こんなところで人が?でも、波間に浮かぶ小柄な影はどう見てもそうだった。
俺は考える間もなく、ロードラストから駆け出した。砂浜を走るたびに足が取られるけど、そんなこと気にしてる場合じゃない。潮風が冷たいとか、靴の中に砂が入ったとか、どうでもいい。
波打ち際に近づくと、それが少女だということがはっきり分かった。銀髪は濡れて砂に絡みつき、肌は透き通るように白い。顔立ちはあまりにも整いすぎていて、まるで精巧な人形みたいだ。いや、人形なわけない。呼吸してる、微かに胸が上下してる。
「おい、大丈夫か?」
膝をついて彼女の顔を覗き込む。声をかけても反応は薄いけど、微かに瞼が震えた。あとは、濡れた唇が微かに動いて――。
「…助けて…」
掠れた声が、胸の奥に鋭く突き刺さる。
なにこれ?頭がぐちゃぐちゃになった。なんでこんな子がここにいる?海に?助けるって、どうすればいいんだよ。考えようとするけど、胸の奥で鳴り響く「助けて」の言葉が全てをかき消す。
「おい、しっかりしろ!」
とっさにそう叫んだけど、声が震えてるのが分かる。心臓の音が耳まで響いてきて、手も震えてる。でも、助けなきゃ。俺が、なんとかしなきゃ。
銀髪の少女は、波に濡れた体をそのまま砂浜に横たえている。その小さな声だけで、俺の中で何かが動き始めているのを感じた。
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