(19)闘志新章

 勝利のアナウンスが響いた瞬間、全身から力が抜けた。深く息を吐きながら、ロードラストの操縦桿をそっと手放す。コックピットを開けると、外から押し寄せてくる観客の歓声と熱気に一瞬たじろいだ。でも、それ以上に自分の鼓動がうるさく感じる。震える手を抑えながら梯子を降りると、地面に足が着いた瞬間、安堵の息が漏れた。


 すぐにアヤカとルナが駆け寄ってくる。二人の顔には笑顔が浮かんでいて、その表情を見ていると自然と俺の口元も緩む。


「リュウト、優勝だよ!すごいじゃん!」

 アヤカが勢いよく肩を叩いてきた。少し痛いけど、それがアヤカらしくてなんだか安心する。


「みんなのおかげだよ。本当にありがとう。アヤカが武器を交換してくれなかったら絶対無理だった。」

 本心だ。あの装備がなかったら、間違いなく勝てなかった。


「でしょ?でも、まだまだ改良の余地はあるんだからね!」

 アヤカは得意げに胸を張る。「次もちゃんと頼ってよね!」


 その言葉に胸が温かくなる。俺一人じゃここまで絶対に来られなかった。


 ルナが少し恥ずかしそうに微笑む。

「本当におめでとうございます、リュウトさん。戦い方、とても素敵でした。私には…きっと真似できません。」


 その柔らかな声が心に響く。ちょっとドキッとするけど、嫌じゃない。こうして誰かに褒められるのも、案外悪くないな――そんなことを考えていると、司会者が歩み寄ってきた。


「さて、リュウトさん、今のお気持ちを聞かせてください!」

 差し出されたマイクを前に、一瞬だけ戸惑う。でも、この場の雰囲気を考えると、素直に言うしかない。


「俺一人じゃ無理でした。アヤカやルナ、そしてスペースポートのみんながいたからこそ、この勝利を手にできました。そして送り出してくれた母さん、本当にありがとう!」


 自分の声がアリーナ全体に響き渡る。観客の拍手が耳に届き、緊張していたはずなのに少しだけ胸が軽くなった。


 その後、スタッフが近づいてきてニコニコしながら言う。

「リュウト選手、おめでとうございます!次の関西大会への出場資格が付与されます。ただし、次回は二対二のタッグ戦形式となりますので、相方を確保してエントリー手続きをお願いいたします。」


「は?タッグ戦?」

 思わず声が大きくなる。なんだよそれ、急に言われても困るだろ。


「リュウト、これはまた面白いことになりそうね。」

 アヤカがニヤニヤしながら俺を見ている。頼むから、その顔で煽るのはやめてくれ。


「…ちょっと待ってくれ。まだ勝利の余韻に浸りたいんだけど!」

 頭の中がぐるぐるしている。さっき勝ったばかりなのに、もう次の試合のことを考えなきゃいけないなんて。


 二人が肩を震わせて笑っている。その笑い声に、少しだけ緊張が和らぐ気がした。でも「タッグ戦」の言葉が頭から離れない。期待と不安がごちゃ混ぜになって、胸の奥がじんわりと熱くなる。


「…やるしかないか。」

 静かにそう呟いて、ロードラストを見上げた。そびえ立つその姿が、まるで俺の決意に応えてくれるように見える。


「俺とこいつなら、きっと乗り越えられる。」


 新たな挑戦への意気込みが、静かに心の中で灯り始めた。

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