(18)激戦制覇
エアバーストキャノンの爆風を浴びたシラハマ三号が、ゆっくりと姿勢を立て直している。その動きは相変わらず滑らかで威圧的だが、さっきまでの余裕は薄れているように見える。
「月と繋がっとるスペースポートとか、金の匂いしかせん場所に、うちらが負けるはずないやろ!」
通信越しに響くユイの挑発的な声。その言葉が胸に鋭く突き刺さる。
「ふざけんな…!」
奥歯を噛みしめながら、操縦桿を握り直す。何も知らないくせに――俺たちがどんな状況から這い上がってきたのか、どれだけ必死にここまで辿り着いたのか。
「俺たちはなぁ!」
思わず叫び声が漏れる。操縦桿を全力で押し込むと、ロードラストが轟音を上げて突進を開始する。右腕に装備したドリルタービンが鋭く唸り、回転の振動がコックピット全体を駆け巡る。胸の奥に宿る熱がさらに燃え上がった。
「月のジャンクでマイナスから這い上がってきたんだよ!金の匂い?んなもんするわけねぇだろおおおおお!」
叫び声がコックピット内に響き渡る。ディスプレイに映るシラハマ三号がウォーターブラスターを構えようとしているが、その動作は明らかに遅い。エアバーストキャノンの衝撃でシステムが狂ったのかもしれない。
「これが俺たちの全力だ!」
ロードラストの右腕が大きく振り上げられる。ドリルタービンの回転が最高潮に達し、轟音がコックピットを揺らす。ディスプレイ越しに見えるシラハマ三号が巨大なクジラスラッシャーを展開して反撃しようとするが、俺はそれより早く操縦桿を倒す。
「貫けぇぇぇぇぇ!」
ドリルタービンがシラハマ三号の側面装甲に突き刺さる。金属が裂ける鈍い音と共に、激しい抵抗が操縦席全体に伝わる。だが、それは一瞬だった。ドリルが装甲を貫き、内部の構造を破壊する感覚が手に伝わる。破片が飛び散り、ディスプレイの端で火花が散る。
「うそやん…!」
通信越しに聞こえるユイの震える声。ディスプレイには大きく傾いたシラハマ三号が映し出される。その巨体は完全に動きを止め、地面に膝をついている。
「マイナスからだって、こんなふうに這い上がれるんだよ…!」
操縦桿をゆっくり引き戻し、ロードラストのエンジンが低く唸りながら静かに静止する。コックピット内に広がる静寂が、勝利の実感をじわじわと押し寄せてくる。外からは観客の歓声が爆発的に響き、その熱が肌に伝わるようだった。
「決まったーーーッ!勝者、リュウト選手!和歌山大会の新たな王者は、スペースポート紀ノ國の挑戦者、リュウトとロードラストだ!」
司会者の声がアリーナ中に轟く。ディスプレイには、停止したシラハマ三号と堂々と立つロードラストが映し出されている。その対比が俺たちの勝利を鮮やかに物語っていた。
「俺たち、やったんだ…!」
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