(16)水鋼決戦
サイレンが鳴った瞬間、全身が硬直した。決勝戦の舞台に立っているのに、頭の中は真っ白で、手の震えが止まらない。操縦桿を握りしめるものの、汗で滑りそうになり、まともに力が入らない。夢じゃないのはわかってる。でも、これが現実だと思うと体が動かなくなる。
目の前には、青と白に塗られた巨大な機体――シラハマ三号。その背中にはクジラのヒレみたいな装飾が揺れ、ウォーターブラスターの砲口がこちらを捉えている。その異形のフォルムに加え、どことなく知性すら感じさせる動き。その威圧感に、これまでの対戦相手とは格が違うことを嫌でも思い知らされる。
「俺が…勝てるのか?」
心の中で問いかける。でも、答えなんて出ない。観客の歓声がコックピットを振動させる中、ディスプレイ越しに映るシラハマ三号が、巨大な影のように俺を圧倒してくる。その時、奴が動いた。
背中のヒレが波打つように動き、ウォーターブラスターがこちらに向けられた。その瞬間、全身に鳥肌が立つ。
「来る…!」
反射的に操縦桿を引いた。ロードラストが鈍く後退を始めたが、その動きはぎこちない。遅い――遅すぎる!その時、シラハマ三号が高圧水流を放った。視界が一瞬、真っ白に染まる。
「っ、くそ!」
左腕に装着したシールドが水流を受け止め、機体全体に激しい振動が走る。後退しようとしても水流の勢いに押されて、まるで機体が宙に浮いているような感覚に襲われる。焦りが胸を締めつける。
「動け…頼む、動いてくれ!」
操縦桿を握り直すけど、ロードラストは応えてくれない。水流に押され、もがいているだけだ。ディスプレイ越しに、シラハマ三号が次の射撃体勢に入るのが見える。その動きはゆっくりで余裕すら感じさせる。まるで勝負の流れを完全に握っていることを誇示しているようだ。
またしてもウォーターブラスターが唸りを上げる。次の瞬間、再び高圧水流がシールドを叩きつけた。その振動が操縦席全体に響き渡り、心臓が喉の奥で跳ねる感覚がする。
「これじゃ、まともに動けねえ…!」
苛立ちと焦りで頭がいっぱいになる。どうにか反撃しなければならないのに、思いつく手がない。シラハマ三号は水流で俺を完全に封じ込めて、じりじりと距離を詰めてくる。その完璧すぎる戦術に、全身が冷たくなる。
「こいつ…完璧すぎるだろ…!」
ウォーターブラスターで動きを封じた次は、クジラスラッシャーでとどめを刺すつもりだ。その動きには無駄がなく、全てが計算され尽くしているように見える。
何とかしないと、このままじゃ終わる。それなのに、体が思うように動かない。操縦桿を握る手に力が入らない。
「くそっ…何とかしろよ、俺!」
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