(14)機戦頂点
そうやって、アヤカの的確なアドバイスに助けられながら、俺たちは二回戦、三回戦をなんとか突破していった。正直、最初の緊張はどこへやら、戦いの流れに乗っている自分がいるのが不思議だった。とはいえ、戦うたびに疲労もたまるし、正直、勝ち進むたびにプレッシャーも重くのしかかってくる。
今回の大会は三十二エントリーで受付が締め切られたらしく、四回戦を突破した時には、次が決勝だと聞いて驚いた。え、もう決勝?そんな軽い気持ちでいいのかよ…いや、よくないだろ。だが、ここまで来た以上、逃げるわけにもいかない。
どうやらムーンギアバトルには公式の賭け事があるらしく、俺たちに賭けていた人はほとんどいなかったらしい。観客席のざわめきの中に、「まさかリュウト選手がここまで来るとは!」みたいな声も混じっていて、なんとも言えない気持ちになる。胴元がめちゃくちゃ儲かったんだろうな、とふと思いつつ、勝ち進んで損をさせた人たちがいるのかも、と考えると妙に申し訳なくもなる。
決勝戦に向けて、アヤカが武器の交換をサポートしてくれた。大会期間中は、事前に申請しておいた武器や防具なら自由に交換可能だということを初めて知る。俺は全然気づいてなかったけど、アヤカはしっかり申請してくれていたらしい。ほんと、アヤカがいなかったら俺はここまで来るどころか、一回戦で終わってたんじゃないかと思う。そもそも、ロードラストの修理だって、アヤカがいなかったら完成しなかったはずだ。
ふと、勝ったらスペースポートのみんなを焼肉に連れて行こうなんて考えが頭をよぎる。いやいや、まだ決勝が残ってるんだぞ、早く気持ちを切り替えろ、俺。
メンテナンスと武装の切り替えが終わった頃、アヤカが汗をぬぐいながら近づいてきた。真剣な表情で話し始める。
「次の相手はシラハマ三号。海に囲まれたアリーナをフル活用して、水を使った攻撃が本当に厄介な相手よ。月面採掘ドリルも酷使してきたから、もう一つのドリルに切り替え済み。そして、新しい対策武器の使い方を説明するから、しっかり覚えてよね!」
頼もしすぎる。俺は一言も反論できず、頷くだけだった。
そんな俺たちを見ていたルナが、ふっと笑みをこぼす。
「本当に素敵です…。仲も良くて、物事を変える力も持っていて。私にはないものを、リュウトさんたちは持っていらっしゃいますね。本当に…尊敬します。」
ルナのその言葉に、一瞬だけ言葉を失った。アヤカは軽く笑いながら、「何よ、急に」と返したけど、俺は少し違う気持ちだった。尊敬されるほどのことを、俺たちは本当にやってるのか?そう自問する中、改めて目の前のロードラストを見る。この機体と俺たちの努力がここまで連れてきてくれたんだ。
「よし、行くか…ロードラストで、俺たちの全力を見せるんだ。」そう呟いて、次の戦いに向けて準備を始めた。
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