(13)決戦準備

 ロードラストのコックピットを開けると、涼しい風が一気に流れ込んできた。身体はまだ緊張で固まったままだが、観客席からの歓声がそれを少しずつほぐしてくれる。


 下を見ると、アヤカが急いで駆け寄ってきて、手慣れた動作で梯子をかける。そして、さっさと登ってくる彼女の顔には笑みが浮かんでいたけど、その目の奥には心配の色が見え隠れしていた。


「リュウト!初戦突破、おめでとう!」

 元気な声でそう言ったかと思うと、すぐに彼女の目はロードラストのコンソールに向かう。賞賛よりも、次の戦いを見据えた彼女の鋭さが垣間見えた。


「でさ、エネルギー残量は?どれくらい使った?」

 言われてハッとする。コンソールに目を向けると、ロードラストのエネルギーメーターが微妙な位置で点滅しているのが見えた。


「えっと…半分くらいかな。」

 正直、あまり自信がない。戦闘中は夢中でドリルを使いすぎた気がする。


 アヤカは目を細めて眉をしかめた。

「半分って!初戦からそんなに使ったら次、マジで厳しいよ!ルナドライブからのエネルギー供給って、そんなに早くないんだからさ!回復待ちで不戦敗になったらどうすんの!」


「ああ、わかった、次はもう少し抑えるって。」

 そう答えながら、内心では少し焦っていた。エネルギーの使い方なんて、まだ全然慣れていない。


 ふと、下からルナの声が聞こえた。彼女は少し控えめに近づいてきて、ロードラストを見上げている。


「でも、すごかったです。リュウトさん、ロードラストも…本当に見事な戦いでした。」

 その声には純粋な驚きと喜びが混ざっていた。


「まあ、運が良かっただけだよ。」

 照れくさくてそう答えると、アヤカがすかさず口を挟む。


「運だけじゃないでしょ!あんな派手なドリル攻撃、観客も大盛り上がりだったんだから!」

 そう言う彼女の顔は、なぜか誇らしげだった。


 ルナはふと考え込むように言葉を続ける。

「ルナドライブって、本当に興味深い動力機関ですよね…。ルナリウムがどうやってエネルギーを補充しているのか未解明の部分が多いにも関わらず、これだけ信頼されて使われているなんて…。」


「さあな、俺には難しすぎてわかんねぇよ。ただ、今はこいつを信じて次の試合をどうにかするしかない。」


 ロードラストを軽く叩きながら言うと、ルナは静かに頷いた。その目はどこか遠くを見つめているようだったが、すぐに微笑みを浮かべる。


「次もきっと勝てますよ、リュウトさんなら。」


「…ああ、勝つよ。」

 その言葉に自分の中で静かに湧き上がる決意を感じながら、俺はロードラストのエンジン音が再び高まるのを心に思い描いた。次の戦いに向けて、気持ちは少しずつ整い始めていた。

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