(11)機魂覚醒
ルナの父親らしき男のメッセージが終わった。でも俺の頭はまだ混乱していて、うまく整理がつかない。けど、会場全体に漂う熱気が、それを押し流していく。
「いや~、すごい時代になりましたよね!」
司会者のテンション高めな声が、アリーナ中に響き渡る。
「声を変えずに完全同時通訳が自動でできるなんて!まるで未来そのものじゃないですか。」
確かに便利な技術だ。でも、この場面でそれを強調する必要があるのか?観客席が少しざわつく中、司会者はさらに軽口を挟む。
「僕が子供の頃なんて、英語がわからない時には、とりあえず『ニーハオ!』って言ってたもんですよ。あっ、それ中国語でしたね!」
観客席から笑い声が広がる。俺もつい苦笑い。いや、そのネタ、無理がありすぎだろ。けど、この雰囲気に飲まれかけている自分がいる。
会場全体の拍手と笑い声が一段落すると、司会者が話を切り替える。
「さて、それでは気を取り直しまして、第一回戦、登場するパイロットと機体をご紹介しましょう!」
スクリーンに映し出されたのは、俺たちのロードラスト。そして対戦相手、赤と黒の派手な機体だ。
「まずは赤と黒のツートンカラーが目を引くマルドウィング!パイロットは、地元の老舗商家の跡取り、荒田選手です!」
観客席から拍手が起きる。中には笑い声も混じっているのがわかる。派手な外見と、「跡取り」という肩書きが面白いのかもしれない。
「さて、マルドウィングのスペックを見てみましょう。全高8.3メートル、重量8.8トン!翼状パーツが特徴的で遠目には鮮やかで目を引く外観ですが、実戦向きの性能かどうかは未知数ですね!」
スクリーンに次はロードラストが映し出される。
「一方の対戦相手は、高校二年生の若き挑戦者、リュウト選手!」
俺の顔が映ると、観客席から歓声が湧き上がる。少しざわついているのも感じた。観客たちが俺をどう見ているのかはわからない。ただの若者が挑戦するってだけで面白がっているのかもしれない。それにしても、アヤカが俺の登録名を下の名前にしてたのが気に食わない。苗字でよかっただろうに。あんにゃろう、絶対わざとだ。こんな場面で俺の下の名前を大声で呼ばれるのは、正直、ちょっと恥ずかしい。
「こちらのロードラスト、全高8.5メートル、重量9.7トン!スペースポート紀ノ國の職人たちがジャンク品から修復した機体です!月面採掘用のドリルをそのまま流用している点も興味深いですね!」
観客の視線が一斉に俺たちに向けられる。その期待と熱気が、肌に刺さるようだった。心臓が少し早く鼓動を打つのを感じる。
そして試合開始のカウントダウンが始まった。スクリーンには大きな数字が映し出される。観客席の歓声がさらに大きくなっていく。
「5、4、3…!」
俺は操縦席で拳を握りしめた。
ロードラストが静かに唸り始める。その振動が全身に伝わってくる。
「さあ、行こうぜ、ロードラスト。」
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