(7)猛練日常

 そっからは、本当に目が回るような毎日だった。


 スペースポートの先輩たちが、俺たちのムーンギアバトル参戦を聞きつけてからというもの、やたらと気合いを入れて協力してくれた。正直、仕事サボってるんじゃないかってくらい全力だ。


 特に熱心だったのが、いつもニヤニヤしてるメカ担当の田島先輩だ。「実は俺、ムーンギアバトルの大ファンなんだよ!」とか言いながら、倉庫の奥から謎のパーツを持ち出してきては、「これを武器にできないか?」とか「このパーツ、ロードラストに合いそうじゃね?」とか、次々に提案してくる。


「おいおい、田島さん、それ何年前の機体のパーツだよ。」


「いいんだよ!夢を持とうぜ、リュウト!」


 …いや、夢とかじゃなくて現実見てほしいんだけど。でも、田島さんが提案したブースターの部品が意外と使えたりして、反論できなくなる俺がいる。


 それに、メンテナンスに関してはみんなプロ顔負けだ。スペースポートのいつもの仕事っぷりを見てたら、こんな頼りになる人たちだとは想像もしなかった。


「しっかりやってこいよ、リュウト!」

「優勝したら焼肉おごれよ!」


 背中にそんな冗談混じりの声を浴びながら、ロードラストが戦闘用に変わっていくのを見ると、俺もだんだん「もしかして、やれるかもしれない」って気分になってきた。自分で言うのもなんだけど、ロードラストがカッコよく見えてきた。


 一方のルナはというと、大会までの一ヶ月間、俺の家で居候することになった。


 最初はアヤカの古い服を着てた彼女だけど、母さんが押し入れから引っ張り出してきたワンピースを着せたら、驚くほど馴染んでしまった。俺もアヤカも思わず二度見したほどだ。


「あの、ありがとうございます。お借りしてしまって…」

「いいよ、夏だし、涼しい方が楽だろ。」


 銀髪が太陽の光を受けてきらきらと光る。麦わら帽子をちょこんとかぶった彼女は、まるで絵に描いたような夏の少女だ。


「ルナフロントでは太陽光が調整されているので、こんなに眩しいのは久しぶりです。」


 そう言いながら目を細める彼女に、俺は無意識のうちに自分の麦わら帽子を差し出してた。


「ほら、これ使えよ。」


「え、でも……」


「いいって。」


 帽子をかぶったルナは、さらに夏らしい雰囲気になった。妙に似合いすぎて、ちょっと複雑な気分になったけど、まあいいか。こんな感じで日々は過ぎていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る