2ヶ条
「さぁ、牙を抜かれた猫科の巣窟にやってきたよ」
緊張する……
「動物は苦手?」
だったら来ないだろ。猫も何の動物も写真や動画で見る分には好きだ。
「それで?」
……いかんせん実物に好かれる気がしない。
「いただけないなぁ、始めから好かれる意欲が無いのは。彼らはそういうのに敏感だよ? 人間と違ってね」
善処はする。
「その意気やよし。いざ行かん」
「これはこれは…… 普通のカフェ、というかおしゃれなワークスペースみたいだね」
ちょっと意識高い会社みたいなインテリアだな。お、ところどころに猫がいるぞ。
「ほ~う、こちらに一瞥もくれず闊歩している。王様のごとくだ」
お猫様だな。無理に触りに行かず、寄ってくるのを待つ感じだ。
「果たして傲慢な彼らがこちらに関心を持ってくださるだろうか?」
おもちゃがある。これで誘ってみるか。ほら……
「見向きもされてないが?」
……屈辱だ。
「せっかく下手に出ておもちゃをふりふりしてたのにね。あぁ、その姿を写真に収めるべきだったなぁ」
お前を壊す。
「ひぇ~」
仕方ない、おやつを買おう。1番手っ取り早い。
「『キャットアイス』だって。何とも映えそうな代物だ」
これ2つください。
「キャンディみたいだね。さて、ヒト科は釣れるかな? ほれほれ~」
お前を滅ぼす。
「とにもかくにも、これで玉座を引きずり下ろせるかな?」
下に向けて、待つ…… おぉ、寄ってきた。
「なんともあっさり。野生の本能と誇りは塵になったのかにゃ?」
語尾やめろ。
「もぅ、いけず」
「絵に描いたような夢中さで舐めてるね。気分がいい」
触われそうだ、どれ…… ふんふん、サラサラだ。
「そんな指先だけなんてもったいない。もっとガッと…… あぁ?!」
ほら逃げた。無理にやるからだぞ。
「なんでだよぅ! おやつだけ食べてってさぁ! 恩知らず、世間知らず! ファンサができないアイドルは生きていかれませんよ!」
それが彼らなんだろうが。
「そうとも言う……」
「はぁ〜 全然触らせてくれなかった」
おやつがなくなったら全くだったな。本当に気ままなんだ。
「せっかくのサラサラモフモフを眺めるだけなんて…… 新手の拷問かい?」
仕方ないだろ。猫カフェは通い詰めて、猫との関係値とか探りつつ楽しむものかもな。
「そっか、残酷極まりない」
あぁ。
「次はいっぱい触れるのになったらいいね」
そうだな。
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