第10話

 数日後、グレッグの鍛冶工房でガルス用の剣と鎧が完成した。

 メタリックシルバーに薄い青い光が宿るようなデザインで、見るからに高性能そうだ。


「おお……これはすげえ。まるで力がみなぎるような感じがするぜ」


「間違いなく最高の仕上がりだね。グレッグの腕前には感謝しきれないよ」


「へっ、気にすんな。払うもん払ってくれりゃ、おれはそれで充分だ」


 残りのルミナイトも小分けにして加工済み。

 玉状のものと、板状のものがあって、用途に合わせて売りやすそうだ。

 俺はさっそく、王都の武器商や宝飾品の店を回って買い手を探すことにする。


「さて、どれだけ買ってくれるか、腕の見せどころだな」


「だが、王都には競合も多い。簡単にはいかないだろうが……お前の値切りスキルがあるなら、逆にこっちから値を吹っかけてやればいい」


「そうそう。値切りは仕入れだけじゃなく、売るときの駆け引きでも活きるんだよ」


 俺は街のバザーに出店している貴金属商に話を持ちかける。

 しかし、そこでも当然駆け引きが待っていた。


「ルミナイトねえ……確かに珍しいが、ここ最近は偽物も出回っていてね。そんなに高くは買えないよ」


「いやいや、こいつは鑑定済みの本物。値踏みするにもあまり侮らないほうがいい」


「ふん。じゃあ、このくらいでどうだい?」


 提示された金額は、俺の想定よりもずいぶん低い。

 ここで負けるわけにはいかない。


「オーケー、その金額で買いたいなら、もっと大量に仕入れてくれ。そっちが数を買うなら、俺も価格を下げる意味があるってもんだ」


「なるほど。一度に大量に買い取れば、相場のリスクもあるが、その分市場シェアを押さえられる。悪い話じゃないな。よし、もう少し数を出せるなら、もうちょっと上乗せするよ」


 こういう交渉を何度か繰り返し、最終的にそこそこの金額でまとめることに成功した。

 相手も商売人だから、お互い落としどころを探ってのやりとりだ。


「やったね。これでかなりの利益が出たよ」


「リオン、お前本当にすごいな。俺も隣で見ててハラハラしたが、気持ちよくディールがまとまったぜ」


 俺は手にした金貨を抱え、にんまり笑う。

 こうして初めての大きな転売が完了し、俺の商人としての自信はますます高まった。


 さらに、ここで繋がった貴金属商から「他にも面白い商品があるなら紹介してほしい」と依頼を受ける。

 俺はその言葉に内心ガッツポーズ。

 人脈が広がれば、もっと大きな取引に繋がるだろう。


「ビジネスは人と人との繋がりが大事……って前世の上司も言ってたけど、あながち間違いじゃないね」


「次はどんなレア物を仕入れるんだ? 龍の鱗とか、魔導具とか、そういうのも面白そうだな」


「それいいね。夢が広がるじゃん。もっとド派手なアイテムを安く仕入れて、大儲けしてやりたいぜ!」


 そうして俺は、王都での大成功に味をしめながら、さらなるビッグディールを目指して動き出した。

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