第7話

 荷物を宿に置いて、まずは情報収集だ。

 王都には大規模な商業区があり、鉄や木材から宝石まで、あらゆる商材が集まる。

 その中心にあるマーケットプレイスには活気に満ちた人々の声が響き渡っていた。


「ここならルミナイトを扱ってる店もあるかもな」


「俺、血が騒ぐぜ。絶対に安く買ってやる!」


 ガルスと一緒に雑踏をかき分け、鍛冶屋が集まる通りへ足を向ける。

 そこは金属の音が響き、黒煙や火花が散って独特の熱気を放っていた。


「いらっしゃい、武器が欲しいのか? それとも防具か?」


「いや、実はルミナイトを探してるんだよね。どこか扱ってる店、知らない?」


 若い鍛冶職人は首を振りながら答える。


「ルミナイトか。それは希少金属だからな。大抵は王宮や大貴族に抑えられてて、市場に出回ることは少ないんだ。扱ってるとしても、かなりお高いはずだぜ」


「やっぱそうか……でもどこかで手に入れられないと困る。ガルスは高い金払う気がないからこそ俺に頼んだんだし」


「そもそも、おれは破産したくないだけだ。命削って稼いだ金だからな」


 あちこち鍛冶屋を渡り歩いて聞き込みするが、どこもルミナイトの在庫がないか、あっても天文学的な値がついている。

 さすがに値切りでどうこうなるレベルじゃない気がしてくる。


「でも、諦めるのはまだ早え。絶対にどこか穴場があるはずだ」


「そうだな。マーケットプレイスだけが全てじゃない。外れのほうに倉庫街や闇市みたいな場所があるって話を聞いたことがある」


「闇市か……ヤバそうだけど、行ってみる価値はあるぜ」


 俺たちは王都の中心から外れていき、徐々に人通りが少なくなる裏通りへ足を踏み入れた。

 そこで怪しげな路地に佇む集会所みたいな建物を見つける。

 扉には鍵がかかっているが、中からざわざわと話し声が聞こえてきた。


「ここ、どう見ても普通じゃないわね。ガルス、準備オーケー?」


「おれの大剣があれば、どんなチンピラだって叩きのめせる。問題ない」


 俺は恐る恐る扉をノックする。


「オイラは客だ。ルミナイトを探してるんだけど、売ってるって噂を聞いて来たんだが」


 しばらく沈黙が続き、やがて重そうな扉がゆっくり開いた。

 そこに現れたのは痩せぎすの男で、片目に眼帯をしている。


「へえ、ルミナイトだと? あんたら、正気で言ってんのか?」


「当たり前だぜ。そんなに危険な代物なのか?」


「ふっ、ここに来るってことは覚悟もあるんだろう。いいぜ、あんたらに会わせたい人がいる。そいつがルミナイトを扱っているかもしれん」


 そう言われ、俺とガルスは薄暗い建物の中へと通される。

 どうやら一筋縄じゃいかない雰囲気だが、今さら引き返す気はない。


「この世界で最強の商人になるためなら、闇だろうとどこだろうと踏み込んでやるぜ」


 内心、わずかに震えながらも、俺は闇市の奥へと足を踏み進めていくのだった。

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