第6話
二日かけて山道と森を抜け、ようやく王都の門が見えてきた。
高い城壁がそびえ立ち、門の前には行列ができている。
冒険者や商人、旅人がひっきりなしに出入りしていて、その規模に圧倒される。
「うわっ、めちゃくちゃ人が多いな。さすが王都って感じだぜ」
「ここじゃなんでも揃うし、珍しい商品も手に入る。お前の値切りスキルがどこまで通用するか、試すにはもってこいだろう」
ガルスが馬車を門番に見せ、入国許可の証紙を提出する。
俺も一緒に中へ入ると、そこには広大な通りと数えきれないほどの店が並んでいた。
「ヒャッホー! 見てくれよ、この活気! まるでお祭りみたいだ!」
「興奮するのはわかるが、まずは宿を確保しよう。荷物を置いてから動きやすくするんだ」
なるほど、商談をするにも拠点が必要だ。
街の中心に近い宿は高そうだが、移動が楽だ。
ちょいと外れれば安い宿があるが、治安が心配だな。
「値切りスキルで宿代も安くならないかな?」
「ハハ、お前はどこでもそれ使う気か?」
「もちろん! スキルは活用してナンボでしょ?」
そう言いながら、俺は宿の受付へと足を運ぶ。
笑顔の女将が出迎えてくれたが、王都の宿はやはりいい値段だ。
「ここ、わりと良い部屋をそろえておりますわ。お客様、お一人様で一泊銀貨五枚になりますが」
「うーん、ちょっと高いっすね。もう少し下がりませんか?」
俺はさっそく値切りモードに入る。
ただの客として対応してくる女将に対して、背後からスキルの力がじわりと湧き上がる感覚。
「実は俺、遠くの村から来たばかりでして。これから王都で商売をする予定なんです。もし女将さんが協力してくれたら、ウチの村の名産品をここで扱ってもらうように紹介できますよ。それに、俺がこの宿を宣伝するってのもアリじゃないですか?」
小声でささやくように言うと、女将の目が輝いた。
「まあ、宣伝していただけるなら、それは大助かり。では銀貨四枚にいたしましょうか」
「あと一声! 三枚でお願いしたいんだけど、どうです?」
「三枚……うーん、そこまで下げたら商売になりませんわ。でも、リオンさんの商才に期待して三枚半、つまり三枚と小銅貨五枚でいかがでしょう?」
「おっと、その条件ならギリギリ折り合いつきそうだ。ディール成立だね!」
思わず嬉しくなり、ガルスと目を合わせて笑う。
こういう細かい取引でも値切りの力は絶大だ。
俺は今まで感じたことのない充実感に浸りつつ、部屋の鍵を受け取った。
「よし、じゃあ宿の部屋でひと休みしてからルミナイトの仕入れ先を探そうか。ガルス、準備はいいか?」
「もちろんだ。おれが守るから、派手に暴れてこい、商人」
「オーケー、燃えてきたぜ! 王都での大勝負、ガンガン行くぞ!」
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