第4話

 薬草の取引がうまくいき、父さんからも「よくやったな」と褒められた。

 その夜の食卓では、家族みんながいつもより上機嫌だった。


「リオン、マジでありがとうな。これで店の在庫が充実しそうだわ」


 父さんが、やや照れくさそうに酒をあおる。

 母さんも微笑みながら料理をよそってくれる。

 俺の妹、パティは幼いながらもピョンピョン跳ね回って喜んでいた。


「わーい! リオン兄ちゃんすごいね! 将来はお金持ちになって、お城に住んじゃったりして?」


「ハハ、そりゃ夢があっていいね。でもまあ、まだまだ修行中のみだからさ」


 そんな和やかな時間を過ごした翌日、店のドアを勢いよく叩く音がした。


「おい、いるか? 話が聞きたいんだが」


 現れたのは、筋肉ムキムキで髭面の男。

 いかにも冒険者って感じだ。

 背中に背負った大剣を見れば、戦うのが仕事というのは一目瞭然である。


「はいはい、いらっしゃい。何をお探しですか?」


「おれはガルスってんだが、この辺りで『値切りをする不思議な商人』がいるって噂を聞いたんだ。もしかして、お前がそのリオンってやつか?」


 値切りの噂がもう広まってるのか。

 早い展開に、俺はちょいと嬉しくなった。


「そう、俺がリオンだよ。どこで聞いたかはわからないけど、とにかくいらっしゃいませ!」


「ふん、おれはある珍しい金属を探してる。だけど高価すぎて手が出ないんだ。お前の力で、もっと安く仕入れられないか?」


「なるほど、それってどんな金属だい? やっぱレアメタルなのか?」


「『ルミナイト』って金属だ。鍛冶屋によれば、魔力を帯びやすくて剣や鎧に仕込むと性能アップが期待できるんだと。だが、王都じゃべらぼうに高い値がついてる。下手すると破産だ」


「了解だ。そりゃ面白そうじゃねえか! いいね、スリリングな交渉は大好物だ」


 俺の胸はすでにワクワクで高鳴っている。

 いきなり大きな案件が舞い込んできた感じがして、腕がなる。


「ただ、仕入れ先がどこになるかだよな。王都だとライバル商人も多いし、値切りがどこまで通用するか」


「そこをなんとかしてほしいんだ。おれは戦闘のプロだが、商売はさっぱりなんでな。リオン、報酬は弾むぜ」


「オーケー、引き受けた。じゃあ近いうちに、一緒に王都へ行くしかねえな。すべては交渉次第ってやつだ」


 そうして俺と冒険者ガルスは、次なる大きな交渉に向けてタッグを組むことになった。

 値切りスキルの噂は、どうやら少しずつ広がり始めているらしい。

 この勢いのまま、さらにデカい商談をまとめてみせようじゃないか。

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