第5話:廃坑の魔物と、冒険者達の帰還

 翌日、冒険者達は早朝から廃坑へと向かった。

 修理した武器の調子を確かめて、かなり満足げに出発していったのを覚えている。

 そして日が暮れはじめた頃、ドカドカと騒がしい足音と共に、彼らは戻ってきた。


「おーい! 鍛冶屋の兄ちゃん、助かったぜ。おかげで魔物どもを狩れたよ」


「ハハ、よかったな。斧も剣も槍も、ちゃんと使えたかい?」


「バッチリだ。それでな、ちょっとしたお礼がある。お前が興味を持ってた魔鉱石、実は廃坑の奥で少しだけ見つかったんだ」


 そう言って、リーダー格の冒険者は手のひらに小さな青白い光を帯びた鉱石を見せてくれた。

 なにこれ、めちゃくちゃ神秘的じゃないか。

 こんな小さいのに魔力の波動が感じられるなんて、さすがは魔鉱石と呼ばれるだけのことはある。


「うわー、これが噂の魔鉱石か。こんなに小さくても高価なんだろ? 本当にくれるのか?」


「いくつか見つけたうちの一部だけどな。お前さんの修理がなけりゃ危なかったかもしれんから、そのお礼だよ」


「ありがてえ! めちゃくちゃ嬉しいぜ。こいつは大事に使わせてもらうからな」


 俺は高揚感を胸に、魔鉱石の欠片を丁寧に受け取る。

 これをどう加工するかは慎重に考えたいが、とにかく手元に魔鉱石があるってだけでテンションが上がる。


「そうそう、あんたが修理してくれた武器のおかげで魔物も倒せたし、これから他の冒険者仲間にも推薦しとくよ。腕のいい鍛冶屋がいるってな」


「それは助かる。俺はどんな仕事もガンガン引き受けるから、みんな来てくれよな!」


 冒険者達とがっちり握手を交わし、見送ったあと、俺は工房で父さんに報告をする。

 魔鉱石の欠片を手に、子供のようにはしゃぐ俺を見て、父さんは苦笑しながらも嬉しそうだ。


「やったな、息子よ。ほんの欠片とはいえ、そいつを使ってどんな武器を作るんだ?」


「まだわかんねえけど、小さくても魔力を宿した金属だから、きっと普通の剣とは違う力を秘めてるはずだ。これを上手く使いこなせば、俺の名が村を飛び出して広まるかもしれない」


「ふむ、ただ扱いが難しいことは覚えておけ。変に温度や扱いを間違えると、ただの石くれと化しちまうぞ」


「わかってる。慎重にやるさ。俺の前世の知識に、この世界の技術をプラスして、最強の魔剣を生み出してやる!」


 そう宣言すると、父さんは頼もしくうなずく。

 俺がこの村に転生してから、まだそう時間は経っていないが、確実に鍛冶師としての道を駆け上がっている気がする。

 今回の魔鉱石が俺をもっと高みへと導く。

 いつかは伝説級の武器を手掛けてやるぜ。


 夜になって工房を閉めたあとも、俺は布団に潜り込みながら魔鉱石のことを考えていた。

 加熱のタイミングや溶融温度、どんな金属と合わせるか。

 失敗は許されないが、成功すれば飛躍的に強力な剣が生まれるかもしれない。


「いいね。心臓がバクバクして眠れねえじゃないか。まるで初めてバイクのエンジンを組み上げた時みたいだ」


 こうして胸の高鳴りを抑えつつ、俺は明日に備えて瞼を閉じる。

 次なる目標は、この魔鉱石を使った一振りの剣。

 成功すれば、俺の名声はさらに高まる。

 異世界に転生した以上、俺は最高の鍛冶師としての道を突き進むしかないんだ。

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