第4話:初めての冒険者仕事

 冒険者達から預かった武器は、見た目以上にガタが来ていた。

 剣は何度も打ち合った跡があり、刃が波打っている。

 斧は柄の取り付けが甘くて、下手したら振りかぶった瞬間にスポッと抜けそうだ。

 あとは槍も一本あったが、穂先がぐらぐらして今にも折れそうな状態になっている。


「こりゃあ、手間がかかりそうだな。でも燃えてきたぜ。こんなダメージを受けた武器を完璧に整備してやるのが俺の生き甲斐ってもんよ」


 鍛冶屋の父さんは横で腕を組み、苦笑しながら俺の作業を見守っている。

 さっそく炉を適温にし、まずは剣から手をつけた。


「この剣は相当ひどいな。刃こぼれと曲がりが混在してる。下手したら作り直した方が早いかもしれねえ」


「けど、完全に作り直すほどの素材は用意してないし、時間もあんましないはずだ。修理を優先した方がいいだろうな」


「オーケー。手先の勝負ってわけか。燃えるじゃないか!」


 俺は気合いを入れ、まずは曲がった刃を少しずつ矯正する。

 加熱温度を絶妙に調整しながら、ハンマーの角度を工夫して刃をまっすぐに戻す。

 そして、破損部分には新たに補強材を溶接して金属を繋ぎ合わせる。


「いい感じに修復できてきた。やっぱり前世の知識が役に立つな。このまま仕上げに入るか」


 続いて、砥石で刃先を丁寧に研ぎながら磨いていく。

 地道な作業だが、これが一番重要だ。

 滑らかに仕上げることで、切れ味と耐久性が大幅に変わる。


「そうそう、この調子だ。息子よ、お前の腕前は本物だな」


 父さんがうれしそうに言う。

 剣の刃が光を取り戻し、まるで新品のような状態に近づいてきた。

 だが、この調子で他の武器もとなると、相当時間がかかりそうだ。


「ふう、次は斧か。こいつは柄がゆるゆるなんだよな。金具をちゃんと固定して、刃の角度も見直さないと」


「いいじゃねえか。お前の得意分野だろ? ガツンとやっちまえ」


「任せろ。こういうメカニカルな作りは、アメリカンスタイルで力づくでも何とかすんのさ!」


 斧は柄の差し込み口を拡張し、金具を新調してしっかり固定。

 柄木を少し削って大きさを調整し、刃に重量がしっかり乗るように配慮する。

 あとは刃自体を研いで、切り口を滑らかに仕上げる。


「ばっちりだ。こいつなら魔物の皮膚だってぶった切ってくれそうだな」


「おお、また一丁あがりか。ほんとにやることが早いんだよな、お前は」


 父さんは半分呆れ顔だが、その目は確かな期待の色を帯びているようにも見える。

 最後の槍は、折れそうな穂先の部分を完全に付け替えることにした。

 ちょうど工房に余っていた槍用の金属パーツがあったので、それを流用する。


「やっぱり在庫管理してる工房っていいよな。適当なメーカーじゃこうはいかないぜ」


「何言ってるかわからんが、まあ、便利なのは確かだ。しっかり仕上げてやれよ」


 そんな会話をしながら、俺は冒険者達の武器を完全修復。

 一通りのメンテが終わった頃には、辺りは夕暮れ色に染まっていた。

 外に出て深呼吸すると、燃え尽きたような達成感が身体を包んでいる。


「やったぜ。これで廃坑の魔物もばっちり退治してくれるだろ」


「お疲れさん。あとは報酬を受け取って、もし魔鉱石が出たら一部もらうって約束もあるんだろ? 変に期待しすぎるなよ」


「まあな。でも、ちょっとぐらい夢見たっていいじゃん?」


 俺は父さんと笑い合いながら、工房の扉を閉める。

 この世界での冒険者の仕事を手伝うのは初めてだが、武器の力で人を守り、未知の素材に挑戦するチャンスを得られるのは最高に熱い。

 もっとすげえ武器を作ってやる。そう胸に誓いながら、俺は夕陽のオレンジ色を見つめ続けた。

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