メンヘラ二体に囲まれる人

「また駄目だったよ……」

『アレならいけると思ったんだけどなぁ〜! 面白かったし! 幼女転生モノ!』


 幻想大賞の二次選考が出るよりも先にウェブ小説コンテストの結果が出た。

 普通に落ちてた。入賞ではない佳作にも選ばれず……まあ、箸にも棒にも掛からなかったという感じだ。

 けれどまあ、締切ギリギリで校正も間に合わなかったし、当然の結果とも言える。

 この作品は改稿してカクヨムコンテストに出すとしよう。


「本当に面白かったぁ〜?」

『面白かったって〜!』


 コイツの面白いは当てになるのだろうか、なんて失礼なことを考えながら二次選考の結果発表を待つ。


『そういえば二日前に常洲ちゃんから届いたMINEも面白かったから貼るわ〜!』


 常洲さんは栄華の友達で、俺達がCPEXというゲームをやるときによく呼んでいる人だ。


「どれどれ……?」


『A子がEODをお望みじゃ』


 ちなみに、EODというのはFPSゲームのタイトルのことだ。


『起きるのじゃ』

『EODじゃ』

『じゃ』

『じゃ』

『わしをひとりにしないでくれええええ』

『おきて』

『さあおきて』

『きて』

『EODにきて』

『ガン無視を決めこむ気じゃ』

『なんというやつじゃ』

『けしからんやつじゃ』

『じゃどうじゃ』

『じゃあくじゃ』

『なんかいえ』

『まさかパリピ中か』

『ヤバいやつじゃ』

『彼氏とおたのしみちゅうか』

『なんというやつじゃ』

『こんなにも』

『EODは君を求めているというのに』

『たすけてしきかん〜』

『はなしがつづかないよ〜』

『クソ鬼電してやるところなのに』

『A子がMINEで通話してくるせいで』

『MINEで電話できんやんか』

『パーティーで誘ってこいちゅうねん』

『うんこでもしてんのか栄華』

『スルースキル天賦レベル十三やろ』

『だいたい』

『既読無視は悪とかいう文化作ったやつは誰やねん』

『既読さえつけば』

『忙しいんやなと思って』

『それで終わりやけど』

『既読つかないと』

『たんに気づいてない可能性もあるから延々と』

『延々と』

『MINEをおくるはめに』

『なる』

『にゃあ』

『むむむむむ』

『そのスルースキル』

『感服いたしました』

『📞不在着信』

『通話中かよコイツ』

『既読くらいつけろカス』


 ……という内容が爆速で送られてきており。

 栄華、俺と常洲さんというメンヘラ二体に囲まれて大変だな……。

 それはそれとして『感服いたしました』からの暴言が面白くて好きだ。彼女も小説を書いたら面白そうだけどな。


「たしかに面白いな……って、もう発表来てるぞ!」

『えっ、マジ!?』

「通ってる!」

『早すぎるだろ。アタシまだサイト開いたところだわ』


 本人が確認するまで黙っておこうと思っていたのに気づけば声を出してしまっていた。


「ごめんごめん……うわー、それにしてもおめでとう!」

『へへっ、ありがと〜!』


 運も実力の内だと一次選考の時に言ったが、流石に二次選考も通ったのならソレ以外の実力もしっかりとあるということだろう。

 なんかもう自分のことのように嬉しいので、三次選考の発表日が楽しみになってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る