プロットを考え……うわぁ妖怪ネタバレ男だ!!!!

 俺はしろがね 皆星みなせ

 会社勤めの二十七歳。

 趣味はゲームと小説を書くこと……だが。

 最近は大作ゲームをやる気力が無く、小説だって十数年書いてきて一度しか作品を完結させたことがない、エタり星人だ。その上書く頻度も落ちてる。

 どちらも子どもの頃の趣味だったから『趣味です』と言っているだけで、実際のところは、なんかもう……無趣味と言って差し支えないかもしれない。


 そんな俺に届いたMINEがこれだ。


『なあ、アタシと一緒に小説のコンテストに応募してみないか?』


 さっきまで死にたいと考えていた脳は疑問符で埋め尽くされ、俺は速攻でヤツに電話をかけた。


「もしもし?」

『おう、もしもし〜?』


 陽気な声が耳に響く。

 通話相手の名は薬袋みない 栄華えいか

 とあるゲームがキッカケで知り合った同い年のリア友で、本人は否定しているが陽キャだと断言できる女。


「なんだよさっきのメッセージ……小説のコンテスト?」

『そう! ラノベのコンテストでさ〜、幻想大賞って言うんだけど』


 もちろん知っている。俺は幻想文庫の作品がキッカケでオタクと化したのだから。

 なんなら高校生のときに応募するぞ〜と意気込んで七万文字超えても話の山場に辿り着かなかったので諦めたこともあるコンテストで。


「まあ、いいけど……」


 実際、俺にとっても悪い話じゃない。少しは気を紛らわすこともできるしな。

 それに、口で言うだけなら簡単だし。いざという時は諦めてしまえばいい。


「おっ、即決! ありがとなー。アタシ、オマエの小説ならきっと通るだろうなと思っててさー」

「いやいや……」


 謙遜してみるが、実際自分の小説は面白い自信があった。そこそこの名作になるだろうと思っている。まあ実際はそんな事もないんだろうけれど。


「ほら、去年オマエが書いてたヤンデレのアレ! 面白かったし!」


 オレは十数年小説を書いてきて一度しか作品を完結させたことがない、エタり星人だ。

 そんな宇宙人が一年前にやっとこさ完結させた八万字程度の作品がある。

 それを書くキッカケになったのも、この栄華だ。

 一年半前に自分が小説を書いている事を明かしてエタりまくったソレらを読んでもらったところ、彼女も感化されて小説を書き始めた。

 その姿を見たことと、『完結したオマエの作品が見たい』という要望からオレはとあるヤンデレ作品を書き上げた。

 一話ごとに面白い面白いと感想をくれる彼女のおかげでほぼ毎日更新を成し遂げることができたのだ。

 長編……というには少し短い気もするが、やっとこさ完成と言える状態になった作品で愛着がある。

 ちなみに、彼女の作品はコロナに罹り毎日更新が途切れやる気を失くしたことでエタっていた。


「でもあの作品はまだまだ改善点があって……というかあのエタってる作品はどうすんだよ」


 どの口が、と言われそうだが、俺も一読者として彼女の小説更新を待ち侘びていたので聞いてみる。


『アタシはもう『前』を向いてるんだ』

「おい」

『アレもう続き書ける気しないしやる気が起きないからさ〜。あっ、そうだ! コンテストに応募する作品のプロットを作ろうぜ〜!』

「はいはい……」

『アタシは既にちょっとだけ考えててさ〜。今定番のダンジョン配信モノ! ブラック企業に勤めて自称闇堕ちしたヒロインと実は秘めたる力を持ってる主人公が出るヤツ!』


 ダンジョン配信か。たしかに流行っていて、もう定番とも言えるジャンルだろう。


「なるほど……実は俺も少しだけ考えている話があってさ」

『おっ、聞かせろよ〜!』

「一族郎党を皆殺しにされた侍が仇を追っていたら異世界に転移する話でー」

『なるほどなるほど! 面白そうじゃん!』

「それでー、転移先で仇そっくりの美女と出会って稽古をつけてもらうんだけどー」

『……』

「実は仇の双子の姉で主人公の侍の祖母なんだよね〜。で、巫女のヒロインも出てくるんだけど、その子は主人公と祖父が同──」

『待て待て待て! ソレ、ネタバレじゃん! 隠しておくべき要素じゃん! そこまでは聞いてないよっ!』

「あっ、ごめん……」

『まったく〜! この妖怪ネタバレ男め〜!」

「変な妖怪にしないでくれる?」

『それじゃ、これから二日に一回、これくらいの時間に通話しようぜ〜! で、互いに進捗を送り合う!』

「了解了解」


 そんなこんなで、栄華との作業通話が始まるのであった。

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