それいけ初公募マン!

未録屋 辰砂

コンテストに応募してみないか?

 死のうと思う。

 秋用に買った服が視界に入るが、そんなものどうでもよかった。


 カードゲームのオンラインガチャで百万円を溶かした。届いたカードを売って返ってきたのは五万円だった。

 『このガチャを引き切りたい』という謎の衝動に駆られ、一回二万五千円のガチャを回しに回した。ソコには何もなかった。

 いつかやると思ってたんだよな。パチンコやってても千ハマりが見たくなるタイプだし。


 カスみたいな貯金と今月の給料、夏のボーナスだけでは足りず、母親から二十万円の借金をした。

 百万というわかりやすく、そして程よく大きな金額に驚き困惑する母に俺は癇癪を起こした。


 借金という単語だけ聞いて想像する額からすれば、大したことのないモノだと鼻で笑われるレベルかもしれないが、そもそも浪費や癇癪を起こす自分自身が嫌だったし、これから先、更なる浪費や、ともすれば犯罪にまで手を染めるのではないかという不安があった。


 父親はポイ活が趣味で、一円単位の利益でさえ大切にする人だ。何故それを俺は引き継がなかったのだろう。何故父のその姿を見ていながら俺には浪費癖があるのだろう。


 俺がクズだから。

 少しの困難で根を上げ、今という苦しく感じる現実を恨み、死というわかりやすい終わり救いに縋ろうとする。残された家族がどういう気持ちになるかわかっているはずなのに。


 自室がある三階の窓から飛び降りても死にきれないかもしれないな。

 仮に死ねてもこの部屋は事故物件になり、後始末だって、大変だろう。

 鉄道自殺はほぼ確実に成功するだろうが、別に他人に迷惑をかけたいわけじゃあない。


 そもそも、死にたいという言葉が間違っているかもしれない。静かに消えたい。ただそれだけで。


 死ぬということはどうしても他者に迷惑がかかるという事実に唸っていると、一件のMINEが届いた。


『なあ、アタシと一緒に小説のコンテストに応募してみないか?』

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