第11話 迷路の犬

ピンク色のドレスを着た女の子が、迷路の中で迷っていました。

大きなお屋敷のパーティーに呼ばれ、庭園で遊んでいるうちに、他の子どもたちとはぐれてしまったのです。


女の子はべそをかきながら、木々で作られた迷路の中を歩いていきました。

誰かが気づいてくれないかしらと思い、空を見上げましたが、鳩が一羽飛んでいったきりでした。


そのうち女の子は、どんどん心細くなってきました。

このまま、迷路から出られなかったらどうしよう。

誰にも見つけてもらえなかったらどうしよう。

みんながわたしのことを忘れてしまったらどうしよう。


頭の中はぐるぐるで、そこもまた迷路のようです。

女の子はくたびれて、座り込んでしまいました。


そのとき、ガサゴソと音がしました。

見ると迷路の木々の根元に穴が開いていて、耳のとがった大きな犬が一匹のぞいています。


「人間ってばかだよな」

犬は言いました。

「ついてこいよ」


女の子は言われるままに、犬の後をついていきました。

四つん這いになって、いくつもの穴を通り抜けました。

迷路の穴は、犬が噛みちぎったり、掘り進めたりして、広げて作ったようでした。


やがて最後の穴を抜けると、女の子は元いたお屋敷の前に立っていました。

お屋敷の脇でガーデンパーティーを楽しむ人々も見えます。


犬はこのお屋敷の旦那様の犬でした。

けれど、迷路を抜けた後は、女の子が話しかけても、一言も口をききませんでした。


ただきりりとした顔立ちが、

「だから人間はバカだって言ったろ」

と、鼻で笑っているように見えました。

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