第10話 オレンジ色のドラゴンと七つの宝物

人のこない山奥の洞窟の奥に、オレンジ色のドラゴンが住んでいました。

ドラゴンは伝説の通り、宝を守っていて、宝を狙ってやってくる盗賊や、剣士や、魔法使いを、こてんぱんにして追い返していました。


このドラゴンが守っていたのは、七つの装飾具です。

ルビーの指輪、サファイアの耳飾り、真珠のネックレス、エメラルドの髪飾り、ダイアモンドのティアラ、トパーズの腕輪。

いずれも金や銀で飾られ、大粒の宝石をあしらった素晴らしい物でした。


これらはみな、一人の女性の持ち物でした。王の娘として生まれ、何不自由ない暮らしをして、世間のことを何も知らずに育った王女様でした。


その王女はある日、隣国の王子に嫁ぐことになりました。

持っていくことを許されたのは、この日のために作られた、嫁入り道具の七つの装飾具だけ。

それも、隣国のお城へ着くなり、王妃様や王女様たちに、みんな取り上げられてしまいました。


しかも王子様には愛人がいて、王女は名ばかりの花嫁だったのです。

王子が最後に残っていたトパーズの腕輪を、その愛人に渡してしまったとき、王女は人の心と姿を失いました。


炎をはき、逆らう人々を鋭い鉤爪で引っ掻くと、七つの宝を取り返し、そのまま飛び去っていったのです。

王女は、世にも珍しいオレンジ色の髪だったということです。


七つの宝を守るドラゴンは、何も知りません。

生まれたときからずっとドラゴンで、この宝を守る役目を背負ってきたと思っています。

誰かに倒されるか、病にかかるか、寿命が尽きるそのときまで、ドラゴンは宝を守り続けるでしょう。

七つの宝を抱えて眠るとき、オレンジ色のドラゴンはとても幸せでした。

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