第7話 雪の中のクローバー

小さな白いうさぎが足を引きずって、雪山を歩いていました。

お腹もぺこぺこ、体は冷たくなってきて、ガタガタ震えています。


仔うさぎはふと、向こうに灯りを見つけました。

いつもだったらそんな所へは近寄りません。人間の炊く火かもしれないからです。

人間の側へ行ったら、捕まって食べられてしまいます。


けれど仔うさぎは、そのとき本当にくたくたで、頭がぼーっとしていました。

もうどうにでもなれという気分で、足をひきずりながら、灯りの方へ歩いていきました。


灯りは焚き火でした。

横にまるたんぼうがあって、白いひげを生やしたおじいさんが座っています。

おじいさんは仔うさぎに気がつくと、何も言わずにこくりとうなずきました。

仔うさぎは焚き火に近づくと、丸くなって眠ってしまいました。


朝になりました。

体はポカポカと温かく、焚き火もまだ燃えているのに、おじいさんの姿は見えません。


仔うさぎは目を見張りました。自分の眠っていたところに、青々としたクローバーがたくさん生えているのです。

クローバーは仔うさぎの大好物でした。

仔うさぎは夢中で食べました。

そのうち、自分の足のケガが治っていることに気がつきました。


お腹がいっぱいになると、クローバーはすーっと消えてなくなって、あとには他の場所と同じように雪が積もっていました。

いつの間にか焚き火も消えていました。

おじいさんは戻って来ません。


仔うさぎは何度か跳んでみました。

すっかり元気です。

キラキラ光る朝の雪野原を、お母さんの待つ穴ぐらへ向かってぴょんぴょん走っていきました。

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