第5話 ある海賊の人生
その初老の男は海賊船の乗組員だった。
今首にかけられたこの縄に、値する人物だと自分で思っていた。
人を殺したし、金品も奪った。
捕まれば罰を受けるのはこの世の理りだ。
なぜ海賊になったのかは分からない。
それ以外の生き方を選べなかったからだと言えばそれまでだし、選ぼうとしなかったらからだと言われれば、またそれも的を射ている気がする。
自分は地獄へ行くのだろうなと思った。
男は神の存在など信じていなかったが、なぜか天国と地獄は信じていた。
真っ当に生きてきて死んだ人間が、自分と同じ場所へ行くとは思えなかった。
真っ当に生きてきた人間が、自分に手を差し伸べてくれたことはなかったとしてもだ。
男はある晩のことを思い出した。
大きな海軍の艦船をやっつけて、皆で葡萄酒片手に一晩中歌い、踊り明かした夜のことだ。
月が明るくて、船長の機嫌もよく、酒はいくらでもつがれた。
その船は数年後に沈没した。
男は運良く生き残って別の海賊船に拾われてここまできたが、とうとう運が尽きたようだ。
(地獄にあいつらもいるだろう)
ほくそ笑みながら、男は静かに目を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます