第4話 疲れたうさぎ

うさぎはとても疲れていました。


きつねから逃げて走って走って、自分がどこにいるのかも分からなくなって、やっと見つけた木のうろに飛び込むと、そのまま動けなくなったのです。


「このまま木の一部になってしまいたい」と思うほど体は重たく、張りつめていた心は今や石のようになっていました。

うさぎは全てがどうでもよくなって、丸くなって眠ることにしました。

うろにたまった木の葉は少し湿っていたけれど、柔らかくて森のにおいがしました。


まぶしい光が差し込んできました。

朝がきたのです。

うさぎはそっと穴から顔を出し、鼻をひくひくさせました。

きつねはいないようです。


うろからぴょんととび出ると、薄紫のつゆ草が咲いていました。

うさぎはつゆ草の葉にたまっていた朝露を飲んで、喉の渇きを癒しました。


夕べの疲れはもうすっかり溶けてなくなっていました。

今は帰り道もわかります。

うさぎはうーんと背中をのばすと、森の中を駆けていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る