第3話 紫の妖精

連なる山の一角に、アメジストの谷がありました。

谷一面をアメジストが埋めつくし、まばゆい光を放っています。


紫の妖精はその谷で生まれます。

紫の妖精の仕事は、夕焼けが宵闇に変わる頃、空を紫に染めることでした。


今日、新しい妖精が生まれます。

秋の初めの晩に妖精の子どもたちはアメジストのらきらめきから生まれてくるのです。


紫の妖精達が見守る中、新しい妖精が三人生まれてきました。

三人はうーんとせのびをしてあくびをすると、辺りをゆっくり見回しました。


一番年かさの妖精が近づいて、生まれたばかりの妖精の額にそれぞれキスをしました。

これで新しい妖精達は、自分達がこれからすべきことをすっかり理解しました。


歓迎の宴の始まりです。

ぶどうを食べながら、りんどうの花を愛で、薄紫の羽を揺らしてダンスを踊ります。


通りがかった旅人が、この素晴らしい光景を目にしました。

旅人は自分の幸運に感謝しながら、一言もしゃべらずに物陰から妖精達のダンスを見ていました。

妖精に声をかけたら、たちまち谷に引き込まれて、二度と帰ることができないのを知っていたからです。


朝になると、妖精達はどこかへ消えてしまいました。


旅人のポケットにはいつの間にか、磨き上げられた一粒のアメジストが入っていました。

旅人はそれを妻への贈り物にしようと思いながら、山を下っていきました。

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