第2話 銀の舟
川に銀の舟が浮かんでいました。
星の明るい晩、女の子が灰色の猫を抱えてその舟に乗り込みました。
舟はゆっくりと進み始め、葦の茂みを抜けると、右手には野原が、左手には遠くに教会が見えました。
女の子は教会をじっと見つめていましたが、やがて前を向きました。
猫は一度にゃあと鳴いたきり、あとは女の子の膝の上で、丸くなって眠っていました。
やがて、辺りが湿ってきたかと思うときらきら光る雨が降り始めました。
それは宝石の雨でした。
サファイア、エメラルド、アメジスト......
女の子は手のひらに雨を受けてみましたが、手で触れると宝石は溶けて消えてしまいました。
宝石の雨とはそういうものなのです。
女の子も眠くなって、猫を抱えたまま舟の中で横になりました。
銀の舟は固く冷たかったけれど、ここには猫の他誰もいません。
女の子は安心して眠ることができました。
銀の舟は流れ続けていきました。
やがて大海へ抜け出て、そのまま見えなくなりました。
女の子と猫がどこへ行ったのか、それを知っているのは銀の舟に乗ったことのある人だけです。
水面はいつもと変わらず、静かなままでした。
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