2話

「へぁ?」


 突然視界にダイヤの原石が現れ、驚いて情けない声が出た。


「なんだかボーッとしている見たいだけど……大丈夫?」

「え、あ、はい、大丈夫です!」


 そう早口で言うとヒロインちゃんは、目を丸くした後。

 口元に手をあて花が咲くように笑う。


「ふふ、戌井いぬいさんって思ったより、かわいいね」


 ヒロインちゃんに名前を呼ばれ、認知されていることに驚く。


「へっ? あたし、自己紹介しましたっけ」

「さっきホームルームで自己紹介していたよ?」


 キョトンとした顔をヒロインちゃんがすると、すでにホームルームが終わっていることを教えてくれた。

 あまりにも反芻しながら、行動することに慣れすぎていた。


(って、もう放課後なのか……)

「私は、弥生美奈子やよいみなこ。改めてよろしくね」


 どうやらこのゲームのヒロインちゃんは、デフォルトネームらしい。

 あたしと同じ転生者の可能性を少し疑うが、安心できるかも知れない。


「同じクラスだし、仲良くしてくれると嬉しいな」

「あたしでよければ、よろしく願いしますッ」


 美奈子ちゃんの攻略状況を、自然に聞ける魅力的な立場に、当然食いつく。


「ありがとう、戌井さん」

「その、高校生になってこよみ市に戻ってきたから」


 そう安心したように微笑む美奈子ちゃんを見てつい言葉が溢れる。


「あ……そっか」


 入学してすぐは、友人キャラも出てこないから、当然不安に思ったってしかたない。


「いやっ! ほら弥生さん、見たことなかったなって」


 そう不思議そうな顔をする美奈子ちゃんに、慌てて言葉の理由を弁明する。


「戌井さんって、中学も暦学園なの?」


 その美奈子ちゃんの問いに肯定する。

 暦学園は、中高一貫校なので当然あたしは、中学も暦学園にした。


「こ〜ら、そこで青春している女子二人〜始業式はもう終わっているぞ?


 なんて話していると、霜月先生があたしたちを注意する声が聞こえ振り向く。


「あ、霜月先生」


 教室の入り口に、担任の霜月先生がカッコよく立っていた。


「俺が怒られるから、大人しく帰ってくれよ?」

「はい! 行こ、戌井さん。霜月先生さようなら!」


 そう、美奈子ちゃんに手を引かれ、私も先生に一礼してから教室を出る。


「ね、戌井さん。明日も、話しかけても良い?」


 校舎を二人で出た所で、そう改めて聞かれる。


「え、もちろん。逆に、あたしなんかで良いんですか? って感じだけど」

「もちろんだよ! それじゃあ、また明日ね! 戌井さん」


 そう手を振る美奈子ちゃんに手振り返し、頬が歪む。

 嬉しさと共に、この選択が正しかったのか? と嫌な汗が伝った。


「げ、ゲームと違う……」


 戌井春はるなんて友人キャラ、

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