第12話 再びのランク測定
◆◇◆◇◆◇
ダンジョンを出ると、退場用の受付で手続きを行う。
採取したヒルハ草はクラブバッグを開けてチラッと見せるだけでいいが、魔力核については個数までしっかりと調べられた。
これは現在のダンジョン内のモンスターの数の増減を記録し、ダンジョンブレイクが起こる可能性について予測するためだ。
大量のスライムの魔力核だけでなく、大蛇型ボスモンスターであるヒューミッドベノムの魔力核も提出すると受付の探索者協会の職員が驚いていた。
「ボスモンスターもお一人で倒されたのですね」
「ええ。相性が良かったみたいです」
「なるほど。あ、だから装備が変わっていたんですか」
「はい。運も良かったんです」
羽織ってるコートの襟を指先で摘み、コートとその内側に装着している革鎧に自然と職員の目が向かうようにする。
実際のドロップアイテムは革鎧と靴なので靴も変わっているが、元々の靴と同じ黒系なので気付かれることはなかった。
ボスモンスターからのドロップアイテムが全部で何種類あるかについては分かっていない。
分かっていないというよりは、挑戦する覚醒者によってドロップするアイテムが異なるため、全てのドロップアイテムの情報を網羅するのはほぼ不可能だから、と言うべきか。
ただ、他者が手に入れたドロップアイテムと全く同じドロップアイテムが手に入ることも結構あるようなので、情報を調べるのが無駄になることはないだろう。
和やかに職員と話しているうちに確認作業が終わったので、個数確認を済ませた魔力核を再びリュックに収納すると、瑞那区にある魔力核買取所に向かった。
先ずは魔力核を査定に出して番号札をもらい、すぐ隣の素材買取所でもヒルハ草を査定に出して同じように番号札を受け取る。
同じ建物内であるため待合室も共有しており、俺以外にも査定待ちの探索者の姿がチラホラといた。
「セラさんにもそろそろ連絡をするべきか……」
地球に帰還したばかりの時は他にやるべきことが多くて後回しにしたが、今日で地球に帰ってきて四日目だ。
ネカフェ暮らしではあるが、Dランクダンジョンで結構な額を稼いでいるのもあって懐は暖かい。
帰還一日目のような爆食はもうしていないので金は貯まる一方だ。
生活に余裕ができたおかげで、金稼ぎ以外のことに目を向けられるようになった。
「そういや、あの封鎖地区のブレイクしたダンジョンのランクって何だろう?」
今まで気にしてなかったが、セラと会った場所の近くのダンジョンのランクを調べれば、俺が倒したラプトルモドキの強さも大体分かるだろう。
スマホを操作して探索者協会のサイトの『封鎖地区情報』と表記されたところをタップする。
その中からC市の封鎖地区を探すが、もう封鎖が解かれたのか何処にも見当たらなかった。
仕方ないのでネットで『C市 封鎖地区』で検索すると、一番上に詳しい情報が載っている記事があった。
「ブレイクしたのはCランクダンジョンか。つまり、その封鎖地区に入れるのもダンジョンと同じで入場できるのは最低でもDランク覚醒者からというわけだな……あ、呼ばれたか」
魔力核の方の番号札の呼び出しがあったので立ち上がって買取カウンターに移動した。
手続きをしながら先ほどの続きを考える。
セラに見せてもらった探索者ライセンスに記載されていた覚醒者ランクはCランクだったことから、彼女は俺とは違って正規の手続きを経ていたのは間違いない。
セラに再会した時に話の流れで覚醒者ランクの話になるのは十分考えられる。
となると、今の探索者ライセンスに記載されているEランク覚醒者という表記は非常に拙い。
「……ま、四日目なら更新してもおかしくないだろう」
魔力核買取カウンターの次に呼ばれた素材買取カウンターでも手続きを済ませて代金を受けとると、そのまま一番近くの探索者協会支部へと向かった。
まだ受け付けていたのでライセンスの更新をお願いした。
「それでは、こちらに手を載せて魔力を注いでください」
「分かりました」
登録時と同じように測定水晶玉に魔力を注いでいく。
以前は第一次能力のみでEランク判定だったが、今は第三次能力まで覚醒させている。
一般的に覚醒者ランクは、測定時のレベルと各能力の等級、そして固有能力の存在を照らし合わせてランクが決まるそうだ。
俺の場合は固有能力の存在を測定水晶玉が読み取れていないが、基本的にはそうなっているらしい。
S+ランクの【
今はそこにSランクの【
【創造の光】だけでEランク判定だったのだから、流石に今回もEランク判定ということにはならないはずだ。
透明な水晶玉が白く濁っていく。
Eランク判定の時は水晶玉が少し白く濁って終わりだったが、そこでは終わらず更にモヤが増していくのが見える。
水晶玉の中身が全て白いモヤで染まると、その白いモヤの一部が灰色になったところで変化が止まった。
「今の天宮セイジさんのランクはCですね。それではライセンスを更新させていただきます」
「お願いします」
うーん。予想の範疇ではあるけど、Sランク能力が二つ増えてEから Cまでしか上がらなかったのは少し意外だったな。
覚醒者のランク測定にはレベルも関係しているというから、今のレベルではここまでしか上げられないということかもしれない。
「お待たせしました。こちらが新しいライセンスになります」
「……カードの色が変わりましたね?」
受け取った新しい探索者ライセンスは色が白から赤褐色に変わっていた。
「はい。一定以上の活動実績を上げた探索者のライセンスは更新時に色が変更されます。覚醒者ランクが現在の才能を示すなら、ライセンスの色はこれまでの実績を示しています」
職員曰く、ライセンスの色は中々上がらないそうで、チマチマと日銭を稼ぐだけでは上がらないらしい。
俺のライセンスのグレードが上がったのは、これまでの稼ぎと二体のボスモンスターの討伐が評価された結果とのこと。
ダンジョン入場の際の専用端末を使ったライセンスのスキャンと、各買取所での取引時のライセンス提示には、身元を証明する以外にも意味があったようだ。
「たった四日でEから Cにランクが上がっただけでなく、ライセンスもブロンズに上がるなんて、素晴らしい実力をお持ちですね」
「はは、ありがとうございます」
更新カウンターにあるパソコンの画面を見ながらの職員の言葉に愛想笑いをしておく。
数百年ぶりに他者から褒められたが、生活のために邁進しただけだから反応に困る。
まぁ、成果が認められることは良いことだよな。
これで最低限の格好はついただろうから、さっそくセラに連絡を取るとするか。
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