第11話 新たな発見
◆◇◆◇◆◇
瑞那区のDランクダンジョン〈スライム湿原〉に今日もやってきた。
同ダンジョンに三日連続で挑んでいるが、慣れと行動の効率化もあって金と経験値の稼ぎは日々増えていくばかりだ。
「五千円札が一枚、二枚……三枚……」
初日はヒルハ草のみで十万円ほどになり、そこから税金が差し引かれた結果七万ほどの稼ぎだったが、これは初めての採取で状態の悪いものがあったからだ。
二日目は前日に魔力核買取所に併設されている素材買取所の職員が言っていた点に注意して集めたため、ヒルハ草の数は多少減ったが稼ぎは七万円と一日目とほぼ同額だった。
そして三日目の今日は、十万円超えの稼ぎを目指して次々とヒルハ草を採取していた。
「そして八百円を……ゲット」
現在の魔力核の買取価格が一個八百円であるスライムを渇きの石を投げて瞬殺する。
スライムの魔力核の稼ぎはバラバラで、初日が二万半ほどで、二日目が一万を超えたぐらいだった。
今日はヒルハ草の採取ポイントに到着するまでに二十体も倒しており、今倒したのが二十一体目になる。
こちらでの稼ぎも期待出来そうだ。
「うーん、スライムだけだとレベルも上がり難くなってきたな。そろそろボスモンスターを倒すべきか?」
現在のレベルは24。
出来ればレベル30になって第四次能力を覚醒させてから挑みたいところだが、レベルが上がり難くなった所為でいつになったら達成できるか分からない。
それに楽に倒せるのは良いことだが、身体が鈍ってきた気がするのでほどほどに暴れたいというのもあった。
「……よし。試したいこともあるし倒すか」
それから二時間かけて全てのヒルハ草の採取ポイントで採取作業を終えると、少し離れた場所にいるボスモンスターの元へと向かう。
昨日のうちに居場所は把握しており、今現在も同じ場所に反応があった。
固有能力【
「〈ヒューミッドベノム〉か。分かりやすいな」
死角となる場所から【
その槍へこのダンジョンで非常に世話になった【
創造した槍が力に耐えられず破壊される前に、三重強化状態の槍をヒューミッドベノムへと投擲した。
「ジシャアァッ!? アアァ、アアァ、ァァ……」
俺を丸呑みできるほどに巨大な蛇の身体へと風で加速した槍が深々と突き刺さると、見る見るうちにヒューミッドベノムの身体が枯れていき、数瞬後には発火し燃焼し始めた。
ピクリとも動かずに倒れ伏して燃えていく様子からも、ヒューミッドベノムが一撃で死んだのは明白だった。
「おお、まさか一撃とはな。蛇の干物が焼けてる……」
激しく燃え上がり続けるヒューミッドベノムの死体に近寄ると、【不全なる熱】で鎮火させた。
その直後、近くに宝箱が出現した。
中には深蒼色の革鎧と黒い靴が入っていた。
「〈アクアリルの革鎧〉と〈黒水蛇の靴〉か。Dランクダンジョンのボス宝箱で二つ入ってるのは稀らしいから運が良いな」
早速装着してみると不気味なほどにピッタリだった。
ソロで倒すとほぼ確実に討伐者のサイズに合ったアイテムがドロップするという情報は本当だったようだ。
○名前:天宮セイジ
⚫︎レベル:27
⚫︎個人特性:反逆、不屈、勇猛
⚫︎クラス:勇魔
⚫︎固有能力
・【
・【
・【
・【
・【
・【
・【
⚫︎能力
第一次能力【
第二次能力【
第三次能力【
第四次能力〈未覚醒〉……覚醒まで残りレベル3
⚫︎各種能力値
筋力値:66(+3)
耐久値:66(+3+5)
敏捷値:66(+7)
精神値:66(+5)
知能値:66
体力値:66(+7)
魔力値:66
幸運値:7
⚫︎装備
〈中鬼首領の籠手〉
〈アクアリルの革鎧〉
〈黒水蛇の靴〉
現在のステータスを【
次に現在の装備品を鑑定していった。
○ 中鬼首領の籠手
ボスモンスターであるホブゴブリンリーダーからのドロップアイテム。
【首領の制裁】……任意発動。発動すると一定時間、筋力値が更に+10される。使用後は3時間使用不可。
○アクアリルの革鎧
ボスモンスターであるヒューミッドベノムからのドロップアイテム。
【水耐性(中)】……常時発動。水属性事象による影響を軽減する。
○黒水蛇の靴
ボスモンスターであるヒューミッドベノムからのドロップアイテム。宝物級。装備時、敏捷値+7、体力値+7。
【静謐の歩】……常時発動。移動時に発する音を大幅に減衰する。
ふむ。中々良いんじゃないか?
少なくとも、一般的なEランク覚醒者が装備しているような代物ではないのは間違いない。
「贅沢を言えば武器が良かったが、こればかりは運だからな」
【創造の光】の創造能力では、これらのドロップアイテムのような魔法的な力を持つ〈マジックアイテム〉は生み出すことはできない。
以前作った偽の探索者ライセンスのような魔力を含むだけのアイテムならば創造できるが、それらはマジックアイテムではなく、魔力がある分だけ普通よりも頑丈なだけのアイテムだ。
先ほど創造した投擲槍のような魔力を含むだけの武器でも戦えるが、やはり探索者であるからにはマジックアイテムの武器が欲しくなる。
「普通に買うと最新スマホ以上に高いんだよな。買えないならドロップアイテムを狙うか、作るかなんだが……牙でも持ち込んでみるか?」
今の世の中にはマジックアイテム製作を生業にしている覚醒者も存在している。
そんなマジックアイテム職人の元へ素材を持ち込めば通常よりも安く手に入れることができるそうだ。
「問題なのは職人の伝手がないという点だな。魔界でも悪魔の素材で武具を作っていたから自作という手もあるけど不恰好なんだよな……まぁ、取るだけ取っとくか」
先にヒューミッドベノムの魔力核を採取すると、次に口内に生えている二つの鋭い牙を剥ぎ取っていった。
「……あん?」
[素材アイテム〈ヒューミッドベノムの鋭牙〉を獲得しました]
[素材アイテムを使用して、第一次能力【創造の光】でマジックアイテムを創造することが可能です]
[第一次能力【創造の光】の〈創造の御手〉が解放されました]
なるほど……どうりでS+ランクの創造能力のわりには微妙だったわけだ。
【正義と真実】で発現した能力の詳細を見れたら、もっと早く分かったのにな。
素材アイテムに分類される牙に触れたことで解放されたようだが、明らかに素材アイテムであるヒルハ草では解放されなかったのはどうしてだろう?
「武器限定なのか、それとも条件があるのか。取り敢えず作ってみるか」
剥ぎ取った牙を地面に置くと【創造の光】の〈創造の御手〉を発動させる。
すると、牙に光の粒子が入っていき、牙自体が光を放つと徐々に形が変化していった。
やがて、牙があった場所には刃が黒い一振りの短剣が存在していた。
○黒牙剣ベノムファング
ボスモンスターであるヒューミッドベノムの素材から製作されたマジックアイテム。宝物級。装備時、筋力値+5、敏捷値+3。
【毒蛇の刃】……任意発動。刃に毒効果を付与可能。発動時に魔力を消費する。
まぁ、予想通りの力を持つマジックアイテムだな。
もう一つの鋭牙でも同じアイテムができるんだろうか?
「んー、同じアイテムか。取り敢えず、こっちは予備武器かな」
足元の影の中へと二つ目の黒牙剣ベノムファングを収納すると、目の前のヒューミッドベノムの死体を使って色々検証してみた。
その検証の結果、損傷が大きい素材アイテムではマジックアイテムは創造できないことと、防具タイプのマジックアイテムの創造も可能であることが分かった。
また、素材アイテム次第では創造するアイテムを選択することも可能らしい。
これらの情報は、枯れた後に燃えてボロボロになっていたヒューミッドベノムの死体から剥ぎ取った状態の良い皮によって判明したことだ。
今後もマジックアイテムを自作する気ならば、倒し方には気を付ける必要があるだろう。
○黒蛇のコート
ボスモンスターであるヒューミッドベノムの素材から製作されたマジックアイテム。宝物級。装備時、耐久値+5、体力値+5。
【気配希薄】……任意発動。気配を希薄化させる。発動中は魔力を消費し続ける。
「何というか、暗殺者スタイルな感じだよな……」
着ていた上着を脱いで代わりに黒蛇のコートを装着する。
少し色合わせが微妙な気もするが性能優先なので贅沢は言えない。
最後に今のステータスを確認してからダンジョンを出た。
○名前:天宮セイジ
⚫︎レベル:27
⚫︎個人特性:反逆、不屈、勇猛
⚫︎クラス:勇魔
⚫︎固有能力
・【
・【
・【
・【
・【
・【
・【
⚫︎能力
第一次能力【
第二次能力【
第三次能力【
第四次能力〈未覚醒〉……覚醒まで残りレベル3
⚫︎各種能力値
筋力値:66(+3+5)
耐久値:66(+3+5+5)
敏捷値:66(+7+3)
精神値:66(+5)
知能値:66
体力値:66(+7+5)
魔力値:66
幸運値:7
⚫︎装備
〈中鬼首領の籠手〉
〈アクアリルの革鎧〉
〈黒水蛇の靴〉
〈黒牙剣ベノムファング〉
〈黒蛇のコート〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます