第7話 灼ける剣
◆◇◆◇◆◇
「ーー【
携える長剣の刃を固有能力を使って赤熱化させる。
鋼色の剣身を赤々とした色に変貌させるとホブゴブリンリーダーへと振るう。
「グゥオオァッ!?」
「やはり、これでも断つのは無理か」
「グゥオオオオオォーー!!」
頑強なホブゴブリンリーダーの体皮を焼き切ることは出来たが、風刃の時と同様に身体を両断するほどの攻撃力はなかった。
予想通りの結果だったので、慌てることなく棍棒を振り回すホブゴブリンリーダーの攻撃を避け続ける。
加熱したことで直に脆くなる長剣がまだ硬さを保っているうちに、憤慨しているホブゴブリンリーダーの腕へと突き刺した。
「グゥッ、グウゥ!?」
ホブゴブリンリーダーが痛みに呻いた隙に【
俺の姿を見失ったホブゴブリンリーダーの背後に回って【
「ゴゥアアアアァッ!!」
「まだまだ行くぞ」
それからもホブゴブリンリーダーを翻弄しながら短剣や長剣を創造し、赤熱化させてから目の前の巨体へと突き刺していく。
数分後、ホブゴブリンリーダーの身体には、まるで剣の墓場の如く多くの短剣が生えていた。
この数分の間に俺達の攻防に巻き込まれる形で他のホブゴブリン達は死んでおり、今も立っているのは俺とホブゴブリンリーダーだけだ。
「グゥ、グゥア、ガァアアァアーーッ!!」
「ホントにタフだな。まぁ、これで終わりだがな」
俺の創造物であり俺の固有能力を付加されたことがあるという、直接触れずに能力を発動する触媒として使うには最適な大量の創造剣へと【不全なる熱】を行使する。
直後、ホブゴブリンリーダーの身体に突き刺さった全ての剣が一斉に赤熱化、そして発火した。
全身の至るところから発生した炎が、身体の内と外からホブゴブリンリーダーを灼いていく。
「ゴッ、ガッ、ガカ……」
首の近くにも刺しておいたからか、早々に喉が灼かれたらしく声が出せないようだ。
ここまでしないと全身を燃焼させられなかったが、手間と魔力が掛かっただけはあったようで、ホブゴブリンリーダーはそのまま崩れ落ちて動かなくなった。
能力値が増大したことでレベルが上がったことを感じ取ると、【不全なる熱】の力でホブゴブリンリーダーの死体を灼く火と熱を一瞬で消滅させた。
触媒を用意しないと遠距離発火はできないのに、今でも消すことはできるんだよな……。
「というか、自分でやっといてなんだが、あれだけ燃えていたのに全く熱くないなんて不思議だよな」
魔界時代にも似たような感想を抱いていた気がするが、それだけ不思議な現象なのは間違いない。
常温にまで下がったホブゴブリンリーダーの焼死体から魔力核を取り出そうとしていると、すぐ近くの空間から宝箱が出現した。
「……これが噂の宝箱か。中身はなんだ?」
ボスモンスターを倒した際に出現することは知っていたが、実際に遭遇するとその現象の奇怪さが気になってしまう。
気を取り直して報酬の宝箱を開くと、中には暗い緑色の革製の籠手型防具アイテムが両手分入っていた。
どうやら宝箱の中身はこれだけのようだ。
アイテムの効果などの詳細を調べるには、アイテム鑑定能力を持つ覚醒者が営む〈鑑定屋〉に頼む必要があるが、鑑定料は決して安くはない。
そんな金はないので実際に装着して確かめてみることにした。
「んー、感覚的には筋力値と耐久値の強化かな?」
特殊効果の有無までは分からないが、後でネットで調べればEランクダンジョンのボスモンスターからドロップーーボスモンスターの宝箱の中身などの俗称のことーーするアイテムの情報ぐらいは見つかりそうだ。
中断していた作業を再開して死体から魔力核を採取した。
魔力核はとても頑丈だという噂通り、ホブゴブリンリーダーから採取した魔力核には傷一つついていなかった。
これならばちゃんと高く買い取ってもらえるだろう。
「〈ステータス確認〉」
集落にいた全てのゴブリン種の死体から魔力核を採り終えると、現在のステータスを確認すべく偽装無しのステータスを表示させた。
○名前:天宮セイジ
⚫︎レベル:15
⚫︎個人特性:反逆、不屈、勇猛
⚫︎クラス:◼️◼️
⚫︎固有能力
・【
・【
・【
・【
・【
・【
・【
⚫︎能力
第一次能力【
第二次能力【
第三次能力〈未覚醒〉……覚醒まで残りレベル5
⚫︎装備
〈中鬼首領の籠手〉
どうやらアイテムを装備した上でステータスを開けばアイテムの名前ぐらいは分かるらしい。
この籠手以外の装備は表示されないことから、ドロップアイテムなどの魔力を有するアイテムしか表示されないのだろう。
このあたりの情報も後で調べることを決めると、目的を果たしたのでダンジョンを出るべくゲートへと向かった。
帰りは普通に歩いて戻ったため多少時間がかかったが、三十分も経たないうちに無事にダンジョンを脱出することができた。
退場用の受付で職員に探索者ライセンスを見せてからダンジョンを後にする。
ダンジョンの中はまだ明るかったが、外では既に陽が落ちており夜になっていた。
その足で魔力核買取所に向かい全ての魔力核を換金した。
Eランクダンジョンのゴブリン種とはいえ、Eランク覚醒者が一人で三十個以上の魔力核とボスモンスターの魔力核を手に入れてきたことにかなり驚かれたが、無事に買い取ってもらえた。
全部で四万円ほどになったので少し余裕ができたな。
「なんか妙に驚いていたけど、ボスモンスターの推奨戦力ってどのくらいなんだろう?」
すごく今更なことを気にしつつも、近場のネカフェを検索する。
わりと近い場所に大きめの店があったので此処にしよう。
「……まずは汗を流したほうが良さそうだな」
自分の臭いを嗅いでそう判断すると、ネカフェへと直行した。
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