第5話 ステータスと測定について



 ◆◇◆◇◆◇



 覚醒者ランクの測定結果に軽く、いや、かなりのショックを受けつつも探索者協会を後にした。

 探索者協会からほど近くにある公園のベンチに座ると、似たような事例がないかネットで調べてみた。



「あ、この事例とか似ているな」



 ネットで見つけた記事によると、ごく稀に一部の覚醒者が持っている固有能力の中には、各地にある探索者協会のランク測定できる水晶玉の性能ではその力を読み取れないモノもあるらしい。

 探索者協会が覚醒者の能力ランクを測定するのに使っている水晶玉は、基本的にはオリジナルの水晶玉のレプリカだからだそうだ。

 実際にこの記事で取り上げられている探索者は、このオリジナルの水晶玉でランクを測定した結果、覚醒者ランクが一気に跳ね上がり、初期Fランクで当時はCランクだったのがSランクになったと書かれていた。

 そんなことがあった所為で、ダンジョンで稀に見つかるオリジナルの水晶玉が置かれている探索者協会の支部や本部で探索者ライセンスを登録、または更新する探索者は多いとのこと。



「……確実に俺もこのパターンだろう。でも、それにしたってランクが低すぎるな」



 ネットで調べた限りでは、創造系能力は固有能力に迫るほどに希少であり、第一次能力で創造系の能力に覚醒した者の多くは高ランク判定になっている。

 そんな創造系能力の中でも俺の【創造の光スプンタマンユ】は強力な部類のように感じられる。。

 それなのにEランク判定なのは明らかにおかしい。



「もしかして【原初の闇アンラマンユ】があるからか?」



 闇の力が強すぎて光の力が測定し難かったとか、そんな抽象的な理由じゃないだろうな……。

 でも、それなら闇の力である固有能力達の方が圧倒的に強いから【創造の光】の分を測定できるのは不可解だ。

 もしくは、固有能力の力を中途半端に測定できているから、光の力を一部のみ相殺した結果がEランク判定なのかもしれない……。



「はぁ、正解が分からないな。ま、どんどん能力を覚醒させていけば分かる話だろう。〈ステータス確認〉」



 探索者協会の公式サイトに載っていた通りに声に魔力を込めて決まったワードを呟くと、目の前に数時間前にも見た半透明の板が出現した。



○名前:天宮セイジ

⚫︎レベル:8

⚫︎個人特性:反逆、不屈、勇猛

⚫︎クラス:◼️◼️

⚫︎固有能力

・【原初の闇アンラマンユ

・【悪しき思考アカマナフ

・【不義と虚偽ドゥルジ

・【背教の空タローマティ

・【無秩序の風サルワ

・【不全なる熱タルウィ

・【必滅なる渇きザリチュ

⚫︎能力

第一次能力【創造の光スプンタマンユ

第二次能力〈未覚醒〉……覚醒まで残りレベル2



 そこに表示されていたのは今の俺の〈ステータス〉だった。

 レベルが上がっているのは四体のラプトルモドキを倒したからだろう。

 四体倒して7レベルも上がったということは、あのラプトルモドキ達はまぁまぁ強いモンスターだったのかもしれない。


 この板は他人からは見られることはないそうだが、一部の能力は他者のステータスを看破することができるらしい。

 ふむ。魔界由来の固有能力や謎のクラスを見られたら変な誤解を受けそうだな。

 せめてヤバそうな字面の固有能力ぐらいはどうにかしたいところだ。

 【不義と虚偽】の力なら隠せるだろうか?



○名前:天宮セイジ

⚫︎レベル:8

⚫︎個人特性:反逆、不屈、勇猛

⚫︎クラス:戦士

⚫︎固有能力

・【無秩序の風サルワ

・【不全なる熱タルウィ

・【必滅なる渇きザリチュ

⚫︎能力

第一次能力【創造の光スプンタマンユ

第二次能力〈未覚醒〉……覚醒まで残りレベル2



 おっ、できたできた。

 これならば万が一にもステータスを看破されても危険視されることはないだろう。



「良し。早速ダンジョンに挑戦してみるとしよう」



 辺りを見渡して誰も俺を見ていないことを確認すると、足元の影ーー闇の中から鞘に納まった長剣と剣帯が浮かび上がってきた。

 【原初の闇】に収納していた物が全て消えていたのもショックだったが、収納量が激減していたのもショックがデカいよな……。

 まぁ、【原初の闇】の数々の便利能力が使えるだけマシなんだけど。

 なお、この長剣の鞘と剣帯は、セラと探索者ライセンスを探すフリをしている時に創造しておいたものだ。

 それらを装着すると、スマホで一番近くのダンジョンを検索した。



「Eランク覚醒者だから入れるダンジョンはEか一つ上のDランクのダンジョンのみだったな」



 探索者ライセンスには覚醒者のランクも記載されている。

 ちなみに、ランクを偽装してまで高ランクのダンジョンに入る者は滅多にいないらしい。

 ランク偽装が普通に違法なのも理由だが、実力以上の高ランクダンジョンに入っても危険度が増すだけでメリットがないからだ。

 偽のランク設定が面倒でセラに偽物の探索者ライセンスを見せなかったのは正解だったな。

 登録したのはセラに会ったのと同日だし、再会した時にライセンスを見せても怪しまれることはないだろう。



「ふむ。ここから近いし、蓑木区のEランクダンジョンにするか」

 

 

 もう少しで日が暮れ始めるが、あと2レベルだし今日中に第二次能力を覚醒させておきたい。

 今でもネカフェは一日中開いているようなので、ダンジョンの後で向かっても問題はないはずだ。

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