第12話 アマルガムの秘密

 和真と貴恵は、シリアで起きているメガの陰謀を阻止するため、世界中に散らばる情報を集めながら、次の一手を考えていた。彼らは、シリアの戦争を操るためにガリウムが兵器として使用されることを阻止したい一心で、メガが企む新たなプロジェクトについての手がかりを追い続けていた。


 その中で、和真がある暗号を解読することに成功した。それは、メガが開発している「アマルガム」と呼ばれるプロジェクトに関する情報だった。和真はその名前に驚き、すぐに貴恵にその内容を伝えた。


「アマルガム…これがメガの次なる秘密兵器の名前だ」和真は、手にした資料を貴恵に見せながら言った。「このプロジェクトは、ガリウムだけではない。アマルガムは、異なる元素を融合させて、全く新しい種類の兵器を作り出すことを目的としている」


 貴恵はその情報を聞いて、驚きと不安を感じた。「異なる元素を融合させる?それって…ガリウムと組み合わせて、より強力な兵器を作り出すということ?」


 和真はうなずいた。「その通り。アマルガムは、複数の元素を組み合わせ、これまでの兵器をはるかに超える威力を持つ新たな物質を作り出すことが目的のようだ。メガは、これを兵器としてシリアの戦争に投入しようとしている。もし成功すれば、全世界に衝撃を与えるだろう」


 アマルガムのプロジェクトは、メガが進めていた最も高度な研究であり、ただの兵器開発ではない。新たな合金やエネルギー源として、戦争を凌駕する力を持つ物質を作り出すことを狙っていた。和真は、その情報を手に入れたことで、メガがシリアだけでなく、世界規模で戦争を引き起こそうとしていることに気づいた。


「和真、このままでは、アマルガムが完成してしまう」貴恵の声に焦りが混じっていた。「どうすれば、この研究を止められるの?」


 和真はしばらく沈黙し、考えた。「アマルガムの研究が進んでいるのは、シリアの南部にある秘密の施設だ。この施設は、メガの最重要拠点となっていて、そこに大量の研究データと、アマルガムの原料が保管されている。私たちがそこに潜入し、データを破壊し、アマルガムの研究を止めるしかない」


 二人は、決して簡単ではない任務に取り組む決意を固めた。シリアの南部に位置するメガの研究施設には、厳重な警備と最新の技術が待ち受けていた。しかし、和真はその障壁を突破し、アマルガム計画を阻止するためには、リスクを取らなければならないことを理解していた。


 施設に近づく途中、和真と貴恵は、アマルガム計画がいかに巨大なスケールで進行しているのかを目の当たりにした。周囲の土地には、かつて見たこともないような構造物が立ち並び、研究施設はまるで無数の巨大な鋼鉄の塔が連なるような形で建設されていた。その周辺には、強力なセキュリティシステムが張り巡らされており、施設内には最先端の兵器と、無数の警備員が配置されている。


「どうやって中に入る?」貴恵が不安げに尋ねた。


 和真は、施設の外壁に設置されたカメラの配置を見ながら計算した。「この施設は、完全に隔離されている。だが、外部と連絡を取るための通信回線はある。そこに潜り込めば、内部のセキュリティを突破できるはずだ」


 二人は慎重に行動し、通信回線を使って施設に潜入する方法を見つけ出した。和真は持ち前のサイバーセキュリティの技術を駆使し、施設のネットワークにアクセス。その間、貴恵は警備員の動向を見張りながら、和真をサポートした。


 ようやく施設内に入った二人は、アマルガム計画に関する核心的なデータが保管された研究室へと向かう。しかし、そこには予想以上の厳重な警備が待ち受けていた。和真はデータを破壊するための装置をセットしながら、貴恵に言った。


「ここから先は、私が引き受ける。君はこの装置を持って逃げて」


「和真、私も一緒に行くわ」貴恵は決して後ろに下がろうとはしなかった。


 和真は一瞬ためらったが、貴恵の覚悟を見て、二人でこの危機を乗り越える決意を固めた。


「よし、一緒に行こう」


 研究室の中で、二人はアマルガム計画を阻止するため、最終的な決戦を迎える。


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