第11話 シリアの影
和真と貴恵は、施設の深層部へと進む中で、さらに危険な状況に直面していた。無数の虫たちが監視する中、ようやくたどり着いたガリウム製造装置の前で立ち止まると、和真はその先に待ち受ける新たな脅威に気づくこととなった。
施設の内部は、メガの研究が進められていた一大拠点だった。その中でも、特に目を引いたのは、古びたスクリーンに映し出された地図と通信ログの内容だった。それは、シリアの一部地域と関連しているようだった。和真は驚きの表情を浮かべ、スクリーンに映し出されたデータを見つめた。
「シリア…?」和真は呟いた。「ここに、メガが関与していた痕跡がある」
貴恵もそのスクリーンを覗き込んだ。「シリアって、あの戦争が続いている地域よね。どうしてこんなところが…」
和真は、シリアの名が浮かび上がった理由をすぐに理解した。過去、メガの一部勢力がシリア内戦に関与しており、特にその周辺地域において密かに資金提供や軍事技術を支援していたという情報があったのだ。今、この施設で見るこの情報は、メガの影響力が依然としてその地域に根強く残っていることを示唆していた。
「シリアでの争いに、ガリウムが関係していた可能性がある」和真は言った。「もし、メガがこの地域でガリウムを兵器や監視装置に転用しているとしたら、今後の戦局に大きな影響を及ぼすかもしれない」
貴恵は恐るべき事実を感じ取った。「つまり、メガはシリアで新たな戦争を引き起こそうとしているの?」
和真は肩を落とし、深く息をついた。「おそらく。それに、ガリウムを使ってサイバー戦争を仕掛けるつもりかもしれない。通信の制御、情報の操作、それに監視システムを駆使して、シリアをさらなる混乱に陥れる可能性がある」
その時、警報が鳴り響き、施設内が赤い警告灯に照らされ始めた。和真は冷静に周囲を確認し、すぐに動き出した。「まずは、このデータを持ち帰って、メガのシリアでの動きを止める方法を見つけなければ」
二人は急いで施設を脱出しようとするが、ガリウムを含んだ装置が異常をきたし、周囲が混乱に包まれていった。警備システムが作動し、虫たちがその周囲を埋め尽くすように集まり、和真たちの動きを監視していた。
「時間がない、急ごう!」和真は貴恵に声をかけ、走り出した。だが、道を遮るように現れたのは、メガのエージェントたちだった。彼らは、和真と貴恵が施設に潜入していることをすでに察知しており、戦闘態勢を整えていた。
「和真、後ろだ!」貴恵が叫び、和真は振り返った。
エージェントたちは、冷徹な表情で二人に向かって銃口を向けていた。和真は瞬時に判断し、周囲にあった無線通信装置を使い、メガのセキュリティシステムを一時的に無効化させる。
その隙に、二人はさらに深い暗闇へと逃げ込んだ。施設内の迷路のような構造を通り抜け、ついには外へと脱出した。外の冷たい夜風に触れた瞬間、和真は一息つくことができたが、その表情は険しかった。
「今すぐ、シリアの問題を解決しなければならない」和真は決意を新たに言った。「メガがシリアで動いているなら、早急にそのネットワークを破壊しなければ、また新たな戦争を引き起こすことになる」
貴恵はその言葉に重みを感じ、真剣に頷いた。「でも、和真、私たちだけで解決できるの?」
「シリアでの事態は予想以上に広がっている。だが、私はもう迷わない」和真は貴恵の目を見つめて言った。「君と一緒に戦う。それが、今の私たちの使命だ」
二人は、シリアの情勢を覆すために、世界中に広がるメガのネットワークをどう崩すか、その手掛かりを求めて動き出した。しかし、その先に待ち受けるのは、これまで以上に強大な敵と、予想もしなかった陰謀だった。
シリアの地で、メガが仕掛けた巨大な罠を突破するためには、さらなる覚悟と勇気が必要だった。
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