第2話 精神科医:中園誠心
「うわっ。本だらけじゃないですか…。」
私は今、この埃っぽく古臭い診療所(疑わしい)に自分の好奇心に負けて足を踏み入れてしまっていた。
「うるさいなぁ。人が来ないんだからしゃーねぇだろ。」
目の前を歩くこの不健康そうな男、本人曰く医者だというのだ。一体誰がこんな怪しい医者(自称)の、怪しげな診療所にかかるというのか。
(まぁ、そんなこと言って足踏み入れてるのは私なんだけど…)
好奇心に負けた自分に少し後悔を抱きつつも、本を倒さないように慎重に男の後を追う。5分ほど歩くと、診察室のようなドアの前についた。
「ここが診察室だ。入ってみな。」
男に言われるがまま、その部屋に入ってみる。すると、そこには不思議な光景が広がっていた。部屋の中心には、一台のベットがあり、その周りを囲むようにもふもふのぬいぐるみが置いてある。診察で使うはずの机の上も、イルカやクマのぬいぐるみで覆い尽くされている。
「うわぁ…。」
「おい。引くなよ。お前くらいの歳の女子なら、こういうの好きじゃないのか?かわいいもの、好きだろ?」
「そういうの、あんまり言わない方がいいですよ。今の時代、いろいろありますからね。あと、若い女の子が全員かわいい物好きとは限らないですからね?」
「そうなのか?今の若ぇ子の趣味はわかんねぇな。」
そう言いながら男は、ボサボサの頭を掻いた。
「とりあえず、そのベットに寝てみ?」
「え?いやですけど。」
「まぁまぁ。いいじゃないの。」
「いやいや。怪しい男にベットに寝ろって言われて素直に寝る奴がどこにいるんですか?」
「ギャーギャーうるせぇな。じゃあお前は自己紹介すれば俺が医者だって信じるのか?」
「まぁ。名前を知らないよりはいいですね。」
「ったくしゃーねぇな。俺は、中園誠心。28歳でちゃんとした精神科医だ。どうだ?信じたか?」
「精神科医…。名が体を表してますね…笑」
「うっせ。俺の名前は精神科医の精神じゃなく、誠実の誠に心だ。ちゃんと違うぞ。」
「そうですか。まぁ、それはどーでもいいんですけど。」
「自分から聞いといてお前…。というか、お前はなんていうんだよ。名前、まだ聞いてねぇぞ。」
「え?私も名乗るんですか?」
「当たり前だろ。名乗ったんだから、お前も名乗れよ。礼儀だろそれくらい。」
「まぁ。確かに。それもそうですね…。」
「私は
「真中…。そうか。真中か…。」
「まぁ、とりあえずベットに寝てみろよ。皐月」
「ちょっと。なんで下の名前で呼ぶんですか。」
「いいだろ別に。ほれ、早く行った行った。」
「お前の心の重荷、俺が解放してやるから。」
そういうと中園はまたニヤッと、怪しげな笑みを浮かべた。
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