中園誠心の本心診療所

ちくわです

第1話 中園本心診療所

 『中園本心診療所』そのちょっぴり風変わりな名前の不思議な診療所は、私の住む住宅街の少し奥の方、静かで自然に囲まれた場所にひっそりと建っていた。

 

 本来なら私は今、机に向かって必死に問題を解いているはずだ。そうになければいけないはずなのに。なんで私は今、外をほっつき歩いているのだろう。頭ではちゃんとわかっている。自分がこうなったのは自分のせいで、それを解決するには勉強するしかないって。

空をただ見て歩き続けると、そこには一軒の建物があった。

 「こんな建物あったっけ?この辺あんまり来ないから、できたなんて知らなかったな。」

『中園本心診療所』とその建物の看板には書かれていた。

 「本心診療所?なんじゃそりゃ。へんな名前笑。」

風変わりな名前に多少困惑しつつも、声に出してみると不思議と安心感のようなものを感じた。

 「笑っているが、一応ちゃんとした診療所だぞ。」

一人で看板を眺めていたら、少し上の方から声がした。声の主が見当たらないので、あたりをキョロキョロしていると、窓からひょっこり少し痩せ気味で不健康そうな男の人が顔を出した。

 「人の診療所を馬鹿にするとは、いい度胸だな。」

その男は、私の顔を見ながらニヤリと笑った。

 (やばい。やらかした。へんな人に目をつけられちゃった。私、殺されるかも。)

 「おいおい。そんなに怖がるなよ。いったろ?ここは診療所。そして、俺は医者だ。」

そんなわけない。どう見ても医者には見えない。こんな、痩せほそった、小汚い医者がどこにいるのだろうか。

 「そんな嘘、通じると思いますか?馬鹿にしないでください。」

私はその男を睨みつけながら、キッパリと言い放った。すると、男がまたニヤリと笑い言った。

 「じゃあ、お前のこと視てやるよ。入りな。」

少し警戒しつつも私は、その不思議な雰囲気に好奇心をくすぐられ、悔しくも怪しい診療所(偽かもしれない)に自ら足を踏み入れてしまったのである。

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