Intermission 7

「んー、おはようございます、…あれ?」

「おまえは、…――何故人を枕にする」

和室に幾つか纏めて敷かれた布団の上で目を醒まして。

滝岡の文句に、思わず隣をみる。

「…ええと、滝岡さん?」

「寝相が悪いにもほどがあるぞ?確かに、それは隣の布団に入れたが」

「…―――運んでもらったんですか?申し訳ありません」

「まあ、構わんが、…関?」

開いた障子の向こうから、関の声がする。

「おまえら、さっさと起きて布団片付けないと飯くわせないからな!」

「…――――はい」

布団に正座する神尾に、頭を掻きながら、身を起こす滝岡。

 それに、布団を二つ折りにして畳む途中で、俯いて寝ている鷹城に、その隣の布団で、丸めた布団に抱きついて寝ている永瀬と。

 一角だけ、きちんとたたまれた布団があるのは、先に起きている関の分だろう。

 ぼんやりとした視線で鷹城達を眺めて、滝岡がぼそりという。

「神尾、…――連中を起こして布団畳ませるぞ」

「…え?――はい、いま何時ですか?」

「わからん、…――――」

寝惚けながら滝岡が云うのに、神尾が外をみる。

 澄んだ空気は冴えて寒いくらいだが。

「…―――――起きろーっ!秀一!永瀬!」

「…うわ」

突然響いた大音声に、神尾が跳び上がる。

「あの、滝岡さん、…」

驚いている神尾に、まだ少し寝惚けた顔で振り向いていう。

「すまん、後は頼む。顔洗ってくる」

「…――珍しいですね、まだちゃんと起きてないなんて」

思わずそれに呟く神尾に、永瀬が目をしょぼつかせながらいう。

「…病院じゃないからー、ここ。それにしても、あんな大声で起こすことないだろー、…もっとやさしくさー、って、起きてないのもいるのか」

「…―――――」

きちんと膝の上に畳みかけた掛け布団に手を揃えておいて。俯いたまましっかり寝ている鷹城に永瀬が感心する。

「流石、しゅーいちくん、っていうか、…。いまので目えさめないの?すげえ」

感心してみている永瀬の肩に神尾が手を置く。

「感心してないで、布団畳んでください」

「はーい、せんせいー、」

「あのですね」

苦笑して永瀬が手をあげていうのに神尾がいって。



 一応、それぞれ洗濯が終わっていた元の服に着替えて。振り向いてまだ鷹城が寝ているのに顔を見合わせる。

「どうします?」

「どーやったら起きると思う?」

 首を傾げる神尾と永瀬の前に。

「あ、関さん、おはようございます」

「ああ、おはようございます。鷹城」

神尾に答えてから、関が右手に持ってきたものを、鷹城の前に突き付ける。

「え?」

「…―――――っ、おはよう」

「起きたら、顔洗って歯を磨いて着替えろ。さっさとしろよ」

「…――――関、…その御味噌汁っ!」

「食いたかったら、さっさとしろ」

「ちょっとまって、…――――急がないとっ、」

関が顔に近付けた味噌汁の碗に一気に起きた鷹城と。既に背を向けて出て行った関を思わず見送って。

「…関さん、…―――」

「うまそーな匂いだったなー、あれは目覚めるな」

「確かに、そうですね。…」

そして、慌てて鷹城が顔を洗いに出て行った後に、滝岡が戻って来て。

 無言で、鷹城が寝ていた布団を片付け始めるのに、つい少し神尾が笑う。

「…―――どうした?」

「いえ、」

微笑む神尾に、滝岡が首を傾げて。

 ―――そういえば、関さんも、秀一さんには布団畳むようにとはいいませんでしたね。

寝るときにもあらためて巻き直している足首を思い出して。





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