22話 調味料四天王とのバスケ勝負なのじゃ

「じゃあ、男女1名ずつ名前を呼ぶから、ついてくるんだよ。残りの生徒はドッジボールでもして待っているんだよ」


 ごっちゃんは2名の名前を呼び、地下へと姿を消した。

 いったい、どんな授業なんだろう。


 俺とは違って他のメンツは授業の内容よりも異性が気になるらしく、ちらちらと視線を交換しているようだ。


 塩なんて女子の列に近づいて何か面白いことを言ったらしく、笑いを誘っている。塩め。変態のくせに、何という恐るべきコミュニケーション能力だ。


 さて、俺はごっちゃんの言うようにドッジボール……は大勢の友達が必要だから無理。ひとりでバスケのシュート練習でもしよう。


 俺がダムダムきゅっきゅっしていると、横から忍び寄ってきた何者かがボールを奪ってダムダム。


「女子とのトークも楽しいけど、君とはそろそろ決着をつけないとね」


 塩だ。

 女子から「きゃあ。詩音くん、格好良い」という黄色い悲鳴。てめえ、格好つけやがって。女子にいいところを見せたくて俺に挑んできたな。バスケボールで突き指しろよ。


「おいおい、淀校の天才ミッドフィルダーと言われた俺を忘れてもらっては困る」


 醤油が知的眼鏡をキラーンとさせつつ参戦すると「翔勇くん、素敵―!」という嬌声。くそっ。見た目だけはまともだからな、こいつ。


「天才ハスラーとの呼び声も高い俺もいるぞ」


 ソースにも「宗助くん、がんばー!」という応援。ふざけんな。お前たち、いつの間に他クラスの女子と仲良くなったんだよ。


「なあバスケはやめて、ソフトバレーで遊ばないか? ソフトバレーのボールってふにふにしていておっぱいみたいだよな」


 ケチャップも加わってきて両手を回しながら、俺の動きをけん制するディフェンス。


 ……。

 ……女子の反応なし。

 ケチャップ。お前だけモテてないのか。かわいそうに。キモイしな、お前。


 ダムダム、キュッキュと俺たちはバスケをする。


「SLAM 〇ANKで覚えたテクニックを見せてやる!」


「こっちはアヒル〇空仕込みだ!」


「黒子〇バスケの俺が勝つ!」


「へへっ。ロウきゅーぶは最高だぜ!」


 どれが誰の発言か知らんが、みんな漫画でバスケを覚えたようだな。いいぜ。だったら俺はアオ〇ハコの新体操部員ヒロインを見て鍛えたバスケテクニックでお前たちを叩きのめす!


 ダムダム、キュッキュ!


 俺達はパスを交換しあい、華麗にゴールを決めた。


 テムッ、テムッ、テムッ……。

 ゴールから落ちてくるボールが弾む。その音を聞きながら気づいた。


「おい! 5人でバスケして全員同じチームじゃ、ダメだろ! 何が楽しかったんだよ、今の瞬間!」


 俺はぷちギレして叫んだが、嫌な気分ではない。


 ああ……。

 なんか気づいたら、俺ひとりぼっちじゃなく、よくこいつらとつるんでいるな。


 こっぱずかしいけど、こいつら、もうただのクラスメイトじゃなくて、友だ――。


「2on2にしようぜ」と醤油が提案し「いいね」とソースが賛同、「赤井君、審判お願い」と塩、ケチャップがダムダムきゅっきゅ開始。


 一瞬ではぶられる俺。


 友だ……ち、ではなかったようだ。


 クラスメイトたちは俺をおいて試合を始めてしまった。


 しょうがないよな。奇数になっちゃうんだから。審判だって大事だよな。


 俺は審判を適当にこなしながら体育館の様子を窺った。


 変態紳士に偏重しているA組の中でも特に生粋のイカれたメンツがここに集ったため、残ったメンツの平均値は真人間に近い。


 そのせいか、ちらほらと男女で会話している輪がある。


 地下に続く階段から女子が戻ってきて、次の訓練対象になる2名の名を告げた。


 変態紳士四天王に欠員が出れば俺も2on2に参加できるかと思ったんだけど、なかなか呼ばれない。


 ん?

 試合が白熱してきたころ、何か体育館内の様子がおかしいことに気付いた。なんか華やかなのだ。


「赤井君も気づいた?」


 バスケを中断して塩が話しかけてきた。バスケをしながら周囲を観察する視野まで確保していたとは、なかなかやるな。残りの四天王もやってくる。


「男女1名ずつ呼ばれてふたりが地下に行くのに、戻ってくるのは女子ばかりだよ」


「気のせいじゃ……ないよな」


「うん。女子の方が多くなっているし……。あ、護国先生だ」


 階段から女子生徒とごっちゃんが上がってきた。


 女子生徒は先に訓練が終わった女子が集まっているグループに合流した。

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