ふうちゃんこっち来て
タラバガニ持ち男
第1話
小学生の頃、ふうちゃんは言っていた!
「親のだから、良いんだよ。」
先生は最近の異常気象について珍しく長いこと話していた、ほとんどのクラスメートは大して聞いていなかったし、僕もほとんど聞いてはいなかった、だって僕はそんな話よりも、漫画の続きを描くのに忙しかったから!
「君たちにはまだよく分かんないと思うけどさ」
先生が小さく呟いた、その声だけ嫌にはっきり聞こえた、そのとき風に飛ばされた石ころが窓にこつんとぶつかった。僕は窓際の席だったからその音が良く聴こえた、先生が壊れたように話し続けている寂しい教室で、その音はなんていうか、ものすごくリアルに僕の耳に届いた。
僕は、分かったよ、と石ころに伝えたかった、何が分かったのかは分からなかったけどね、でも分かったって伝えちゃえばそれも分かると思ったんだ、そんな適当なことを言ったら石ころは怒るかもしれない、でも怒られたとしても伝えた方が良い、だって僕の意思と関係なく発散していく思考を逃がさないようにする方が、僕にとってはきっと大切なんだ!だから僕は飛んできた石ころを探したんだけど、石ころはもう別のどこかへ飛んで行っちゃってた、それで気づいたんだけど、いつの間にか外はびゅうびゅう風が吹いているんだ、雨も血しぶきみたいに窓を殴りつけていた、まるで風が殺されていくみたいだった、もちろん漫画なんてとっくに描くの止めちゃってたよ。
頭を教室の方に戻したとき、気を抜いていてうっかり壊れた先生と目を合わせちゃった、そうしたら先生は壊れ続けたまま僕に頭を向けて温かく頷いて、それで僕はすっかり腹が立っちゃって、もう話なんて聞いてやらない、って思ったんだけど、聞かないようにするとよく聞こえてきちゃうんだ、聞かなきゃって思ってるときよりもずっと鮮明に頭に入ってくる、僕の頭に元々先生の話の形をしたくぼみがいくつもいくつもあって、先生が話す言葉達は次々とそのくぼみにはまっていく、僕はやっぱり先生のことがそんなに嫌いじゃないのかもしれない。
「とにかく、今日みたいに急に雨とか風が強くなったり、かと思ったら急に晴れたり、急に暑くなったり寒くなったり、まあ変な天気だけど、まだしばらくは続くらしいからね、風邪とか引かないようにね。それと、授業中でも、具合が悪くなったらすぐに先生に言うんだよ。先生も毎日頭痛くって大変だよ。保健室で授業出来たら良いのにね…こんなこと先生が言ったらだめか!」
6月、突然の暴風雨に見舞われたこの町は、ジイジイと低く鳴いているようだった。この嵐を耐え忍ぼうとしているのではなかった、この嵐は私たちが生み出したものなのだと、絶えずジイジイと鳴き続けている。晴れた日は素朴に彩られていたこの町、例えば公園のブランコに鉄棒、子どもたちと遊ぶ柔らかなボール、反抗的な目つきの高校生の頭髪に、おしゃれを気取った大学生の服、視界を突き刺すファストフード店の看板、飲み屋の提灯に、車、木。それらは今ひとまとめに灰色に塗られている。悲しい一体感だけを残して後は捨て去られてしまったこの町は、建物という建物が地面から剥がれて飛ばされ、そうなることでやっと鳴くのをやめるのだろうか。この天気は自分が生み出したものではない、自分は最初から、ただ何かに殴られ続けていただけなのだと気づくだろうか。町が完全に崩壊する瞬間を思い浮かべる。町が低く言う。
「これは自殺だ。」
「このままずっと、こんな変な天気が続いたら、みんなはどう?先生は嫌だな、ずっと頭痛いし、蕁麻疹は出るし、内臓もずっと変な感じするんだよ。やっぱり季節の通りの天気であってほしいよね、梅雨はずっと雨が降ってて、夏はずっと暑くて晴れてて、たまに夕立とかあって、秋は涼しくて空気が澄んでて、冬は寒くて乾燥して火事も起きやすくって、唇がカサカサして、ねえ、唇って乾燥するとなんか重たくなった感じするよね、乾燥してるんだから軽くなってるはずなのになんでだろう…ん、なんの話だっけ?季節の話か、それで春になればあったかくなったねってみんなで笑いあってね、そんなのが好きだな、先生は。みんなもそう思うでしょ?…大丈夫だよ、きっと何とかなるよ。地球もさ、ぐれたくなるときもあるんだよ。背伸びして悪ぶってみたいときもあるんだと思うな。見守ってあげようよ、みんなでさ。多分、もう少しの辛抱だからさ。体育、ずっと体育館でつまんないよね、晴れててもいつ天候が変わるか分かんないからって、ずっと校庭出てないもんね。少しくらい使わせてくれても良いのにね、天気が変わったら中に入れば良いんだし。あ、そうだ、朝も言ったけど、来週からは自宅学習になるからね、しばらくはお別れだよ。対応遅いよね、ほんとに。まあ、先生はまだしばらく来ないといけないんだけど。それでもまあ、仕事楽にはなるのかなあ。あ、でもね、みんなと会えなくなるのは寂しいよ、次会うときは、お家で何してたか、いっぱい聞かせてね!」
先生はまだまだ壊れ続けていて、だんだん言葉が頭のくぼみに上手くはまらなくなっていく、踏切のカンカンという音と交互に点滅する赤いランプみたいな、転びそうになるずれが徐々に広がっていって、あっという間に先生は見えないところまでいってしまった!僕は飛行機が嫌いなんだ、置いて行かれそうになるから、その感覚と似ている気がするんだ、嫌なこと思い出しちゃったよ先生のせいで、それで漫画の続きも描けないし、石ころも見つからないしで、僕はいよいよ宙ぶらりんになってしまった、見つけなくちゃいけない、何か掴まれるものを、でないと僕もあの石ころみたいにどこかへ飛ばされて行ってしまうから、あの石ころが言いたかったことは、助けて、とかだったのかな、違う気がする、だってこんなに思考が散らかっているときに考えることが正しいわけがないから!
町が苦しそうに呼吸をしているときだけ、生きていると分かる。
「今日も集団下校だからね、ランドセル持ったら廊下に並んでね。じゃあまたいつか、みんなと会えるの楽しみにしてるね。はい、号令係さんお願いします!」
みんなは一斉に立ち上がって、すると右前の辺りからせんせいさようなら!遅れて僕たちもせんせいさようなら、先生は廊下に移動する前、僕の方までやってきて、
「こわいのは分かるよ、先生もとってもこわい。」
そう言って、その後付け足すように笑って、その後付け足すように廊下に出ていった。僕もそれに掴まって廊下に出た。僕は怖がっているようにみえたのかな。
最後の集団下校で、天気は最悪だった、でも窓の外を見ると風が少し弱まっていることに気が付いて、それだけ少しうれしかった。風が弱まることで当然、血しぶきもなくなっていた。風が弱まれば、風が殺されることもなかったのに。自分で自分を殺すなんて、それはとっても変な感じだ!
無数のビルが立ち並ぶ。高さはまちまち、しかし全て銀色。だがよく見るとその窓ガラスには高級そうなレストランやハンバーガーショップ、そして大量の居酒屋の看板が張り付いている。ビルの足元には人、人、人は例えば久しぶりに会う友人と賑やかな時間を過ごすために、例えば恋人とゆっくり過ごすために、例えば一人で暇をつぶすために、例えば雨をやり過ごすためにそれぞれがビルへビルへと吸い込まれて、吸い込んだ分だけビルは吐き出す、吸い込んで吐き出す、また吸い込んでは吐き出す。ビルは人工呼吸器を取り付けられている。アイロンスチームのように吐き出された人々はやがて見えなくなるほど分散していき、各々の寝室に戻っていく、都会で取り込んだ原液の思い出は帰りの電車内で希釈されてやっとその色が分かる、それは思っていたよりもずっと複雑な色だった。美しくはないけれど好きになることはできるであろうその色は、すっかり暗くなった自分の町に薄いベールをかける、それによってやっと「ここはつまらない町だ」と優しく思える。改札を出る、駅前に敷かれた太い道路を西に進む、5分ほど歩いて脇道に入る、小さな学習塾が目に付くことで、ここは同じような家ばかりが並んでいるなと毎回思う、また太い道路にぶつかる、西に進む。
左手には小学校が見える。暗闇の中で静かに根を張る小学校、かつて通っていたあの学校は、形はそのままだが今は全く別のものになっているのだろう。銀色のパイプを緩く纏って寒そうなその建物には、今でもあのときのまま時計が張り付いている。時計は学校の顔だ。顔のあるものはとっつきやすい、だから車も好きだった。最後までこの建物を嫌いになり切れなかったのは、この顔が理由かもしれない。時計は午後9:30を指している。それで、学校にも夜があることを改めて理解できた。夜の学校には一度だけ行った、でもそれは夜の学校に行っただけのことだった。こうしてみると、学校の夜という感じがする。学校自体が、夜になろうとしてなっているのだという気がする。この学校には明確に意思がある、ただの子ども達の受け皿ではない。食虫植物のイメージが頭に浮かぶ。風が出てきた。雨が降り出す前に、家に帰らなくてはいけない。
集団下校のペアはいつも通りふうちゃんだ、僕たちは薄暗い廊下で少しの間待たされる、何度も一緒に帰っているのに、何度も一緒に話しているのに、僕はやっぱり話しかけ方が分からない。
ふうちゃんの、肩につくくらいのさらさらの髪は、まるで人形みたいだけど、この間おもちゃ屋さんで人形をみたら、本物はもっとがさがさでがっかりした。ふうちゃんの方が本物の人形だ、毎日似たような服を着ているところもそれっぽい。ふうちゃんはいつも、水色のTシャツにジーンズを履いている、前に気になって、水色が好きなの、と聞いたことがあったけど、好きとかは考えたことないって言われて、確かに僕も服の色のことなんて考えたことなかったから、それ以上は聞かなかった。だけど、服の色のことを置いておいても、ふうちゃんはちょっと変だと思う、だって一人だけランドセルの形が違うし。
「先生、今日たくさん話してたね」
そういえばふうちゃんと話すときは、大体向こうから話しかけてくれていたんだった。
「いっぱい話してた、壊れちゃったみたいで怖かったよ。」
僕ができるだけふざけることを意識してそう言ってみたら、ふうちゃんは、
「壊しちゃったんじゃない、ユウくんが。」
と言った。
「だってユウくん、先生の話ほとんど聞いてなかったでしょ。ユウくんだけじゃなかったけどね。」
そう言ってふうちゃんが笑っちゃったから、僕は話を聞いていなかったことになっちゃったけど、僕も一応聞こうとはしてたんだ、だって先生と目が合っちゃったんだから、でも結局置いて行かれちゃったけどね。それにしても、話を聞かなかったことと先生が壊れちゃったこと、なんの関係があるの?ふうちゃんはやっぱりちょっと変だと思う。
「話は確かに聞いてなかったけど、それが先生を壊したことになるの?」
すると、ふうちゃんはにこにこして言ったんだ。
「だって、誰にも聞かれてないんだったら取り繕う必要なくなっちゃうもん。みんなの求めてる先生である必要ないもんね。みんなが話を聞かなかったせいで先生が壊れちゃったんなら、それはみんなが壊したことになるよ。」
そうなのかな。僕はとりあえず頷いた。するとふうちゃんは続けて言った。
「私のお兄ちゃんがね、ミニカーとか壊して、よくお母さんに怒られてるの、でもそれって、ただタイヤが外れただけだし、ドアがとれただけだし、ミラーが曲がっただけなの。お兄ちゃんが求めてる形じゃなくなったってだけでね、タイヤもドアもミラーもずっとあるの、位置が変わっただけ。」
ふうちゃんは一体、何の話をしているんだろう。
「私は『壊れた』ミニカーの方がかっこいいと思うんだ。あのミニカーね、今お父さんが修理してくれてるんだけど、余計なことするよね、私からしたらわざわざミニカーを壊してることになるの。」
お父さんって呼び方は、なんだか大人っぽい気がした。
「今日の先生は、位置が変わってただけなんだよ。ユウくんからしたら壊れてるように見えたかもしれないけど。先生のパーツを少し並び替えただけなの、私たちみんなで、ほら、私も話聞いてなかったから。」
小学校から子ども達が並んでぞろぞろと出てくる。雨は、風は、弱まり続ける。雲は様々な濃淡で描かれて安定している。かつて雨を降らせたことも、これからまた雨を降らせることも分かっていないようだった。
小学校は昨日もそこにあった。薄汚れた銀色のパイプに締め付けられ苦しそうにしながらも、依然として小学校は子ども達を吐き出し続けている。今日もこの建物の中では、様々な人々が様々なことをしていたのだろう、そして彼らが何か求める度にこの建物はその要求に応え続けた、苦しそうに息をしながら。パイプがずるずると動いた気がした、そしてさらに強く小学校を締め付ける。
小学校から子ども達が並んでぞろぞろと出てくる。彼らは成長する。そのほとんどはやがて、ビルが立ち並ぶあの都会に放たれていく、眩しくて銀色のあの街に。彼らがそしてまたこの場所に戻ってきたとき、この建物はどのような表情をするのだろう。
どこからかジイジイと音が聞こえる。町が鳴いている。求愛行動なのだろうか。
ふうちゃんは、さっきからジュースを飲んでいる!ランドセルからおもむろに取り出して、多分家から持ってきてたんだ、もちろん下校中にこんなことしちゃいけないんだけど、普通は注意されるんだけど、でもふうちゃんはこういうの、何故かバレない。なんでだろうと思いながらジュースを飲むふうちゃんを見る、見たことのないジュースだけど体に悪そうなことは分かる、だってラベルには体に入れちゃいけなさそうな色しか塗られていないもの。ふうちゃんはジュースを飲み終わる、右手、つまり並んで歩く僕と隣り合う側の手で空になった缶を持っている、UFOキャッチャーのアームみたいに不安定な持ち方だったけど、それは滑るように歩くふうちゃんにとても良く似合っていた、両の手に空き缶を持っているような、どちらの手にも空き缶なんて持っていないような感じ、ふうちゃんをまだ見る、ランドセルや水色のTシャツ、ジーパン、スニーカー、空き缶、全部が正しい位置にあるんだって思った、もしかしたらふうちゃんは生まれたときからこうだったのかも、ガチャガチャから出てきた小さな人形、そんな感じ。
僕も正しい位置にありたい!ねえふうちゃん、石ころ、あれは弾き飛ばされていたのかもしれない、ここはお前のいる場所じゃないって、だって外は風でいっぱいで、石ころが居れるスペースなんてなかった、だから殺されることすらなかった、「分かった」、何が分かったのかな僕は、今日の先生はいつもと違った、やっぱりあれは壊れていたと思うよ、正しい位置ではなかった、ふうちゃんはみんなのせいでああなったって言ったけど、先生の位置を変えたのは先生自身でしょ?先生が決めたことだから、やっぱりそれは先生のせいだ、そうだよ石ころだってきっとあんなところに居たくなかったんだ、弾き飛ばされたわけじゃない、自分で居場所を探してたんだ!
「ふうちゃん、先生は自分で壊れたんだよ、僕たちが壊したわけじゃない。」
言ってから唐突だったかな、と思ったけれど、ふうちゃんはとても自然に笑いながらに言った。
「私たちはいつだって影響を与える側だよ。壊す側なの。落として壊す、濡らして壊す、放置して壊す、先生を放置したから壊れたの。」
絶対に違うと思う。
「僕たちは確かに話を聞かなかったけど、それは壊れたことの原因の一つなだけで、そんなことだけじゃない、もっといっぱい考えてることがあって、そういうごちゃごちゃしたものが全部合わさって、それで位置が変わっちゃったんだ。」
僕が言いたかったことはこういうことなのかな、違う気もする、だけどそんなこと考える暇なくふうちゃんは言った。
「そんなのどうでもいい、放置してたら壊れた、それだけだよ。」
そして彼女は、停めてある自転車のかごに空き缶を放り投げた。からん、と音がする、空き缶はかごの中に入った。その後は、ただ味気ない色と形をした自転車のかごの隙間から毒々しい色が漏れ続けて静かになった。そしてそれは、一瞬で景色になってしまった。
「そんなことしたらだめだよ、怒られちゃうよ。」
「あの自転車、親のなんだ。親のだから、良いんだよ。」
僕はなんだかとても怖かった、親のだから良い、そうなのかもしれないとも思った、通り過ぎるまで僕はずっと自転車を見ていたけど、自転車も、かごに捨てられた空き缶も、全く違和感なく僕の頭に流れ込んできた、これが正しい位置だとすら思ってしまった!
先生、僕が怖がっているんだとしたら、それは何に怖がっているんですか?
先生もやっぱり、怖いんですか?
深夜1:30頃、窓から突き刺さる日差しで目が覚めた、カーテンを閉め忘れたせいだ。この町ではもう一年以上、太陽が顔を出し続けている。かつて、小学生だった頃は不安定な天気が続いていたが、中学校に上がる頃には安定していった。しかし、今度は日に日に太陽が出ている時間が長くなっていき、ついには夜が来なくなってしまった。そして秋のような、涼しい気温で安定したこの町は、そこで完全に時を止めてしまった。どうしてこんなことになったのか分からない。僕が分からないだけでなく、世界中の科学者も、どうやらよく分かっていないようだった。今まで積み重ねてきた理屈では説明できないのだと、テレビでよく言っていた。今の科学を一から考え直さなくてはいけないらしいのだ。科学はいつの間にか信仰の対象から外れつつあった、今も理科の教科書はものすごい速度で書き換わっているのだろう。注釈に次ぐ注釈で分厚くなり続ける教科書は、静かなこの町で唯一うるさかった。
このような信じられないことが起こっているにも関わらず、この町は全てがうまくいっている。以前よりも、ずっと。町は正常に機能し続けているのだ。こうしている今も、過不足なく、求められたものだけを正確に人々に与え続けている。そして人々も、正確に要求を与え続けている。町はもう、ジイジイと鳴くことはなかった。
ふうちゃんのことを思い出す。小学校の頃の友人。とてもきれいな人だった。
ふうちゃん、この町は正しい位置になったね。僕たちも。だからもう何も動かす必要はないね。影響を与える力はなくなっちゃったけどね。だって、この町は正しい位置で固定されているから、もう動かすことはできないんだ。町の外は大変みたいだよ、色々な人が頭を抱えてる、問題がいっぱいあるみたいなんだ。でもどうでもいい、この町では全て、うまくいっているから。ふうちゃん、僕ふうちゃんが怖かったよ。全部が正しい位置にあるみたいで、不気味だったんだ。まあ、先生も怖かったし、石ころも怖かったんだけどね。あの頃は怖いものがたくさんあった、今思うとかわいそうだね。大丈夫だって、言ってやりたいよ。強がる必要もないってことも。町は、少し寝つきが悪かっただけなんだね。最初からぐれてなんかなかった。やっと、よく眠れる位置を見つけたみたいだね。
今僕はほとんど何も考えずに済んでる。ずっと心地よくて幸せなんだ、何も考える必要なんてないからね。僕らは町の一部になった、そうでしょ?それってすごく良いことだ。
もうあんまり話したくないな、あとは、そうだな、ふうちゃんが今もどこかで生きていて、それで少しだけ不幸だったら良いなって、そう思ってるよ。
ふうちゃんこっち来て タラバガニ持ち男 @kazeron
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