第2話  助けてくれ!相棒!

2話 助けてくれ!相棒!



 いきなり飛んできた火球にダメージを受ける俺。

 クソッ!配信者か!油断したッ!


「カイト!プランBだ!!」


「おう!」


 俺の声に、何らかの反撃があると警戒する配信者。


「ひゃははははは!!レアモンスっぽい奴連れてるって垂れ込みがあったが、呆気ないなぁ!!何がプランBだ!来るなら来てみろよ!!!俺のインプの経験値になれやって!」


 火球をバンバン打ち出すインプ、だがクールタイムがあるはずだ………今ッッ!


 俺は相棒のツチノコを肩に担いで配信者に猛然とダッシュする。


「ヒャハ!遠距離攻撃が無い奴はクールタイムを狙って近付くしか無いよなぁ!!その弱点をこの天才タクマ様が気付いて無いとでも思ってんのかァ?」


 懐から赤い小石を取り出して投げつけてくる。あの小石はゲームでよくある魔法を1回分使うアイテムだな。だがあのサイズでは低級だ。問題無い、ウチのノコならね。


 ドガガァン!と爆裂音が鳴り響く。


「あの石は低級だが、この辺でレベリングしてる奴らに取っては大ダメージだろ!皆さん!やりました!レアモンス当ててイキッてるクソ野郎をこの正義のほぉげぇぇっ!」


 天才タクマ様はツメが甘いな、当てただけで勝利を確信しエフェクトの中から出てくる俺に気づかなかったんだからさ。


「正義のほげー、か。それはどんなほげーなんだ?」


 ぶっ飛ばされて木に激突したタクマ様が立ち上がって怒りの声を上げる。


「てめぇ!ズルして勝って楽しいのかよ!!ここらへんのレベル帯ならいくら低級とは言え大ダメージだろ!!なんで爆発の中を突っ切って来れるんだ!絶対に許さない!レアモンスなんて目立つモノは俺みたいな真の強者にふさわしいハズなのに!!!」


「知るかよそんなもの!!てめぇの都合だけで気持ち良くなってんじゃねぇぞ!!こちとらお前らみたいな自己顕示欲の固まりに目を付けられてウンザリしてんだ!痛い目見たくなけりゃ俺とツチノコの事は諦めて放っといてくれや!!!」


 大天才タクマ様の叫びに俺の魂のリリックを返す。コレはフリースタイル!先に折れた方が負けさ!


「経験値落としてデスペナ食らってろ!!ファイア!!」


 再びインプから炎が放たれる。コイツはアホなのか?効果が無かった攻撃を繰り返すなんぞ愚の骨頂!ぬぅん!


「ハハッ今度こそダメージを受けたハズだ!どうだ!何か泣き言を言って見ろよ!!!」


 俺は抱えていたノコを盾にして炎をやり過ごしていた。コイツは攻撃力は皆無に等しいが防御力はなかなかのモノで同レベル帯のモンスにダメージを与えられた事無いんだよな。


「俺はお前の泣き言を聞きたいなぁぁぁ!」


 ノコの尻尾を掴み、全力でフルスイングする。


 ぼぐっ……と鈍い音がしたが、まあゲームだし無問題よね。さらに倒れた大賢者タクマ様にノコを何度もバッチンバッチン叩きつける。


 近くに居るインプは指示が無いと動けないのかオロオロとしているばかりだ。


「何もデスペナまでするつもりは無い。上級騎士様が出張って来たら面倒臭いからな。まだ配信してるんだろ?ここで視聴者とオベロンに向かって二度とツチノコを連れたプレイヤーに関わらないって言え。後で魚拓取りに行くから。言わずにログアウトしようとすると即座に潰す。分かってるよな?」


 アカデミックマイスタータクマは歯をギリギリと歯軋りしながらものすごい目で俺を見ている。

 

 あ、オベロンに誓うって言うのはプレイヤー間で問題が起こった時の対処法でまあ一言で言えばゲームマスター召喚コマンドなのよ。


 2人の間で取り決めをしてオベロンに報告するとゲーム内でもそれが反映され破れなくなるというね。主に問題を起こしたプレイヤーへの接近禁止やプレイヤー間でのアイテム取引時の契約に使われるシステムなのである。


「ぐぅぅ………ズルいズルいズルいズルいドラゴンとツチノコなんて卑怯だ卑怯だ卑怯だ……俺なんて街を歩けばその辺で見かけるインプなのに……」


「で、誓うの?デスペナ受けたいの?どっち?早くしてくれない?」


 早くしてくれないとノコがお前の服の裾を食ってるんだよ!!メッ!そんなもの食べちゃダメでしょ!!ペッしなさい!!!


「すまんコウタ!!上級騎士様が来た!!足止めしようと思ったが、この娘なかなか強くて押し込まれた!アホは?!」


「今やる!」


 ノコを振り下ろそうとするとバチィン!と弾き飛ばされ、そのスキにタクマが逃げる。あっクソッ!落とし前つけ損ねたぜ……


「プレイヤー間での私闘は闘技場以外では禁じられています!そこのプレイヤー!迷惑行為をしていましたね!!私の権限で貴方を牢屋送りにします!!1日そこで反省しなさーい!!」


「うるせぇ正義マン!!正義を振りかざすのは良いが振り下ろす先を俺にするんじゃねぇ!さっき逃げたアイツがツチノコが羨ましいって因縁つけて来たんだよ!!」


「話は神殿で聞きます!!」


「今ここで聞け!!」 


 上級騎士の女は魔力弓をこちらに撃ってくる。ああ、この世界は基本的に遠距離攻撃は魔力依存なのよね。鏃のついた矢を撃つ弓や投石は武器種としては存在しなかったりする。まあ弓道警察に配慮したのかな。


 ベチィン!バチィン!と炸裂音が響く。………なん……だと?!ノコが僅かながらダメージを受けている?!


「相棒を盾にするなんて人間性を疑いますね!イナちゃん!」


「気をつけろコウタァ!俺はソイツにやられた!力はそうでもないがやたらすばしっこい!」


 ずん………と腹部に衝撃を受け足が止まる。そこに女の魔力矢が飛んで来て俺の胸を突き刺した。ヤバい回復回復回復!!あっ間に合わな……

 

 地面に身体が横たわる前にノコが口で俺を受け止めるとそのままゴクンと丸呑みにされる……丸呑み?!ノコさんやあなたを武器にしたワイに恨みをお持ちで?!

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