関&鷹城「鬼灯」10

「ちょっと待て、―――くそっ」

追い掛けようとして、視線を感じて関が止めて。

「…――――橿原さん。…あいつの頼みで、その、…。つまり、」

言い難そうにいう関に、橿原が淡々と。

「先にもいいましたが、滝岡君も随分と大胆です。生きている人間を僕に頼んでいくんですからねえ」

「……――橿原さん、その」

「ああ、御礼はいいですよ?僕としても、生体の観察をするのは随分と久し振りでしたからねえ、…。生きた患者さんの世話は随分としてませんでしたからね」

「…いえ、その、ありがと、う、…ございました。御厄介をかけて」

つかえながらもいう関に、橿原がにっこりと微笑む。

「死んだ患者さんの世話なら得意なんですけどね。生きていると脈があったりねえ、血管も動きますから、採血もしにくくて」

「…―――滝岡、あの野郎、…」

ぼそり、と呟く関に、ちら、と同情する視線を向けてから、鷹城が車椅子をボードの前に進める。

「―――問題は今回の犯人をどうやって捕まえるかですよね」

「八年前の事件からはどれだけ証拠が集まるか難しいかもしれないが、今回の件なら、…」

「血液分析の手配でしたら、既にお願いしてあります」

「…橿原さん、」

「そちらも、西さんの処にいずれ結果が届くはずです。被害者が治療中で、血液がまだ保存されていたのが幸いでした」

「…―――なら、あとは、」

いいながら椅子にどさりと座り直す関に鷹城が頷く。

「あとはこっちの件だけですね。僕達が襲撃された事件の方」

「…―――」

難しい顔をして関が気楽にいう鷹城をにらむ。

「あのな?」

「どうやって犯人をつかまえるか、…そう簡単には尻尾を出しそうにありませんよね」

「そいつは、そう簡単には」

「いえ、尻尾は既に一部出ています」

「橿原さん?」

鷹城に反論仕掛けた関に、橿原が優雅に一歩踏み出していう。

見あげる鷹城に橿原が静かに視線を置く。

「既に犯人は、一部遣りすぎています。尤も、得意分野でないばかりに、足が出たというところなのかもしれませんが。しかし、決め手にかけるのは事実ですがね」

「僕の記憶が戻れば、…」

難しい顔をして沈黙している関。

「あ、そうだ」

そして、軽く鷹城が右手を挙げる。

「一つ、確認しておきたいんですけど」

「何ですか?鷹城君」

「いえ、…、その僕がこの間、病院を移ったのって、かなり斜め上なことでしたよね?」

「そうですね。かなり非常識だといって差し支えは無いと思いますが」

「…橿原さん、…。ですが、それってつまり、常識的には僕は、本当ならまだあの病院に入院していてもおかしくはないということではないでしょうか?」

「…おい、鷹城、」

関が眉を寄せていう。

橿原も沈黙して鷹城を見る。

「つまり、僕があの病院を抜け出したことを、犯人はまだ知らないんじゃないでしょうか」

にこやかに提案する鷹城に橿原が僅かに眉を寄せて。

関が難しい顔で鷹城を見る。




病室の中央にはカーテンが引かれていた。

患者の姿はカーテンの内側に見えなくなっている。

個室から出て扉を閉めた橿原が、廊下に座る警官にお辞儀をした。

「よろしくお願いします」

頷く警官を背に、橿原が廊下を歩き始める。

廊下をしばらく行き、壁に背をつけて待っていた関に声を掛けた。

「鷹城君の意識が戻れば、いろいろなことがはっきりする筈です」

関がそれに眉を寄せて、先に立って廊下を歩き始める。

関達が背にした病院の廊下の角から、花束を持った女性が歩き出していた。

警察官が座る場所から死角になる給湯室に女性が入り、花束を脇に置き、給湯室の濾過装置の蓋をあけ、手許に持った小瓶をあけたとき。

「そこまでです。あなたは、この同じ病棟にいる何人をその毒で同時に殺すつもりだったのですか?鷹城君を殺害し、己の犯罪を隠蔽する為だけに」

手を止めて振り向く女性の白い面に、橿原の呼び掛けを聞きながら関が動きを止める。

白い指先に握られる小さな瓶の傾き。

「関さん」

橿原の声に関が給湯室に入り、女性の動きを手首を掴みとめて押さえる。

「橿原さん」

橿原が慎重に近付き、手袋をした手で女性の手から瓶を取り上げ、蓋をしてビニール袋に入れる。

関が僅かに息を吐いた、そのとき。

 橿原を見つめて、高槻香奈が平板な声でくちにしていた。

「邪魔をするから、眠らせてあげようとおもったのに」

橿原が僅かに眉を寄せ、顔をしかめて厳しい視線で高槻香奈を見る。

「その為に、幾人を犠牲にしても構いませんか」

「だって、沢山いた方がさみしくないでしょう?」

平板な声にぞっとしたように腕を掴んだままの関が彼女を見る。

「――――…橿原さん」

廊下に車椅子を使って来ていた鷹城が警官に付き添われて辿り着いて。

凝然とその言葉に、関に捕らえられた白い美貌の女性を見あげていた。






「…僕だけじゃなく、病棟の全員を無差別に狙うなんて」

高槻香奈が護送に来た警官達に引き渡されていくのを見送りながら鷹城がいう。その隣に立ち、静かに廊下を遠く連れられて行くのを厳しい視線で見つめながら橿原がくちにする。

「彼女の性質としてこれまで起こした犯罪を考えれば、当然の行動ともいえるでしょう。これまでの犯罪でも彼女は、ターゲットを絞らずに、多くの無辜の人々を標的に選び、無差別に多くの人達を同時に狙うことによって、その満足を得ていたのです」

「くそ、わけがわかんねえ」

関が吐き出すようにいい、車椅子の鷹城の背に手を掛ける。

「関?」

「まだ病室で本来は寝てろっていわれてるんだろ。滝岡がうるさい。で、確か本当は車椅子も電動の奴以外は禁止じゃなかったのか?」

睨む関に、鷹城が両手を軽く膝の上にあげていう。

「この病院に用意がなかったんですよ、電動のは、――最新式が置いてあって、怪しまれたら困るじゃないですか。ちゃんと途中からはあの警備についててくれた警察官に押してもらいましたから」

「いまはもういないよな?それとも、橿原さんに押してもらうか?」

鷹城が橿原を見て動きをとめる。

「ええと、―――」

「関さん、どうぞ。僕、死んだ方も運ぶのは若い人達にお任せしていますから」

橿原が譲るのに大きく頷いて。

「かしこまりました。ほら、鷹城、前を向いてろ」

「向いてるよ、…ねえ、自分でやれるから、」

「それで文句をいわれるのはいやなんだよ、滝岡に」

「にいさん、…それはいうだろうけど、でもね?あれは過保護なんであって、――」

関が黙々と車椅子を押す。

「関、普段は全然、にいさんのいうことなんて聞かないのに、だから、自主独立っていうのがね?」

関に車椅子を押されながら抗議している鷹城に、後ろを歩きながら橿原がしずかに微笑む。





「それにしても、本当に毒を盛りにきたのはいいとして、僕含め同じ病棟の患者全員に毒を盛ろうとしたのにはぞっとしましたよ、本当に」

取調室で聴取を受けている高槻香奈を見ながら、片手に杖をついていう鷹城に、橿原が無言でその向かいで聴取の様子を見つめる。硝子の向こうで僅かに俯いて聴取を受けている白い面には、感情の色は何処にも伺えない。

「橿原さん、先日の血液鑑定の結果が出ました」

「ありがとう、西さん」

結果を受け取って橿原がいう。無言で腕組みして聴取される高槻香奈を見ていた鷹城に、橿原が視線を向ける。

「鷹城君、そろそろ君は戻った方がよさそうですが」

「…はい、そうですね、…。彼女、犯行は素直に認めてますけど、…これじゃあ、―――」

「これは、精神鑑定になりそうですね」

では、と一礼して西が去るのに。

 その背を見送って橿原が云う。

「そのようですね。彼女の精神がいつから正気と狂気の境目を漂い、これらの犯罪を行ってきたのかについては、解明を待たなくてはならないでしょうが」

「精神鑑定ですか」

短くいうと鷹城がくちを噤んで杖をついて先に歩き出す。

それを見送り橿原がしばらくその背をながめてから。

暫し、白い面が語るさまを眺めて。

橿原もまた、背を向けて歩き出す。



「関、―――」

何となく一課に戻る廊下を歩いていた鷹城を関が見つけて隣に立つ。

「おまえ、まだ此処にいたのか。橿原さんは」

「もう戻ってくるとおもいますけど。僕は、聴取を見てて少し疲れちゃって。で、関、橿原さんに何か?」

眉をしかめて関が先に立って一課に入るのに、首を傾げてついていく。

 難しい顔をしたまま、関が目の前に椅子を引き出して自分が先に座るのに、少し困ってから椅子に座る。

 鷹城が椅子に座ったのを確認して、厳しい顔のままで。

「伝えてくれ。被害者が意識を取り戻した。胎児も無事だそうだ」

「ああ、…」

関が引いた椅子に、ほっと背を預けて鷹城が力を抜く。

「そうなんだ、…。何だかほっとした、…暗い事件だったものね」

「母子共に危機を乗り越えて、どうやら順調にいきそうだということだ。勿論、まだ様子はみなくちゃいかんが」

難しい顔のまま関がいうのに、何か云い掛けて。

「鷹城君、こちらにいたんですか?関さんも」

視線を向ける関に、橿原が首を傾げる。

「どうしました?関さん」

「被害者が回復したそうです。母子共に健康ですって」

「そうですか、鷹城君。関さん、ありがとうございます」

微笑む橿原につい少し引いてから。

 何か云おうとして、関が鷹城のしていることをみて。

 鷹城がコーヒーサーバーの置かれた棚の下にある小さな冷蔵庫から、ボトルを取り出しているのを眉をしかめてみる。

「いえ、橿原さん、…おい、鷹城!」

 戻って座った鷹城に。

関が顔をしかめると、置いていたペットボトルを手にして鷹城の前に置く。

「え?関?」

呑みなれているミネラルウォーターを手に開けて、飲もうとしていた鷹城が手を止めて関を見あげる。

「こっちにしろ」

「…―――ええと、関、やっぱり、きみって結構いろいろと細かくない?」

顔をしかめる鷹城に、橿原が淡々とくちを挟む。

「細かいのはいいことだとおもいますよ?鷹城君。…君という人は、いくら相手が滝岡君とはいえ、医者の注意を少しもきくつもりはないのですかねえ」

「それは、…いいじゃないですか、呑みなれてるんですし、嗜好品ですよ?」

橿原の注意に抗議する鷹城に。ちら、と橿原が関を見る。

 関が大きく頷いて。

「飲みなれている嗜好品を此処に置くな!それから、これは軟水だ。確か硬水は禁止だと滝岡が何度も繰り返しいってたのが、まったく聞こえなかったようだな」

「その通りですね。滝岡君が、説明に立ち合わされた僕達の方に良く聞えるように、何故だか、本人に対してより、僕達に向かって丁寧に繰り返してましたねえ」

「…橿原さん、…関、」

二人に横目に見られて、鷹城が降参した、というように手をあげる。

「わかりました、わかりましたから、」

ミネラルウォーターに栓をして、関が置いたボトルを手にする。

「それから、確か水分は積極的にとるようにすすめていましたね、関さん」

「そうです。で、アルコール類にカフェイン禁止」

「刺激物をできるだけ取らずに、三食をきちんと食べ、塩分控えめに、夜は早めに就寝し八時間から九時間きちんと寝ること、でしたね」

 息の合った二人に見返されて、鷹城が固まる。

「…――――御二人とも、あの、」

少し引きながら、関と橿原が揃って見ていうのに鷹城が押し留めるようにして、手を挙げて。

「あの、ですからね?」

「そうそう、送るから、帰るなら、さっさといえ」

「…関?」

「そうそう、滝岡君から、今日は当直があるので世話が出来ないから、僕か関さんの家で世話になるようにとの伝言がありました」

「聞いてます」

「ど、どうして、世話って、僕は成人男子ですよ?子供じゃないんですよ?それは一人暮らしですけど、どちらかの家に泊まるようにって、そんな」

絶句している鷹城に、橿原が淡々という。

「それはやはり、君に信用がないからではありませんか?」

鷹城が微妙に沈黙する。

「家に泊まればいいだろ。一人にしておくより、余程ましだ。それに、どうせおまえもこっちに帰ってくるつもりだったんだろ。それとも、橿原さんの処に世話になるのか?」

「…――――」

無言で首を振る鷹城に関が腕組みして頷く。

「あら、残念ですねえ、…。僕の家にお客さんが来る事なんて、滅多に無いんですけど。どうせなら、関さんと御二人で泊まりにきます?」

即座に関と鷹城が否定する。

「いえ、結構です」

「それは御遠慮します。…わかった、今回は実家に帰るから、関」

「それで良い。まったく、…――――大体、退院したてで、本気で一人暮らしに戻る気ないだろ。布団と浴衣は用意してあるから。で、何処へ行きたいんだ」

「そうですね、一体、何処へ寄り道したいんですか?」

関と橿原、二人に見詰められて鷹城が天井を眺める。

「何かその、包囲されちゃってます?僕」

「…君が黙ってこのままおとなしく家に帰るとは誰も思ってはいない、ということでしょうねえ」

「ええと、…実はこれからいきたいなー、とおもってた処があるんですけど、その」

「やっぱりな」

冷たい目で橿原が見つめ、関が眉を寄せる。

「そのー、…御二人とも?」

「…おれは、調書をもう取られたんで、今日はもう暇だ」

「そうですか、では関さん運転してもらえますか?」

「あの、もしかして御二人共ついてきます?一人で動け、…―――」

無言で橿原と関が鷹城を眺める。

 それに、つい、にっこりと。

「はい、あの、…―――じゃあ、御言葉に甘えて?」

 難しい顔で関が頷き、橿原も淡々と頷くのに。




「どうしても、今日来て報告したかったので、…」

杖を付いて歩く鷹城の後を、橿原と関がついていく。

墓の中を歩きながら、目的の処にまで来て足を止め、後ろを歩いていた関から、花と線香を受け取り膝をついて供える。

目を閉じて祈る鷹城の後ろで、二人が静かに頭を垂れる。

顔をあげて、微笑んで鷹城がいう。

「僕が八年前に立ち会った事件の被害者、…僕の叔母だったんです。おめでたいお祝いに料亭で食事をって」

関が痛ましげに墓を見つめる。

「戒名が二つありますね」

橿原の言葉に、鷹城が頷く。

「はい。流産して、叔母自身は助かったんですが、その一年後に自殺しました」

もう一度手をあわせて鷹城が墓と卒塔婆を見あげる。

「隣が家族の墓なんですけど、子供と一緒の墓を別に立てようってことになって、立てたんだそうです」

線香と供えた花をみて鷹城がいう。

「お菓子も持ってくればよかったかな、…あ、そうだ」

スーツのポケットから鷹城が赤い風船を取り出す。

「それは」

橿原が鷹城が手にした赤い風船を見つめる。

「そいつは、…」

「どうしたんですか?二人共」

見あげる鷹城に関が手にした赤い風船を見つめ橿原がいう。

「いえ、君は憶えていないかと思いますが、それと同じ赤い風船を、君がペンに結び付けて監禁された小屋から浮かべたのをみて、僕達はその場所に辿りつけたのですよ。鷹城君、君はどうして、その風船を持っていたのですか?」

「この風船ですか?」

「そうです」

真面目な顔で問う橿原と、眉を寄せてみている関に。

 不思議そうにみて、それから赤い風船をみて微笑んで。

「いえ、…。その、赤い風船は、…好きだったので。もうすぐ命日だったので、持って来ようかと」

 いくつか、時間をみて来ようと思っていたので、いれてたんです、と。

手にした赤い風船をみて、鷹城がいう。

それをみて、関が沈黙する。

「何だか、赤い風船って、鬼灯みたいですね。ふくらませてよく子供の頃は遊んだりしたんですけど」

そうして、鷹城が墓に視線を向ける。

「この子は、僕の甥か姪になるはずだったんですけど」

「そうですか」

静かにいう橿原に鷹城が手にした風船を見る。

「やる」

関が手を差出し、鷹城が赤い風船を預ける。

ふくらんだ風船に、鷹城が持っていた糸をつける。

「高槻香奈も子供をなくしてるんですよね」

「丁度十年前に、婚約者との間に身籠った子供を事故で流産しています」

橿原の言葉に関が無言で鷹城の握る風船の紐をみつめる。

「それから、何がどう狂ったのか、高槻香奈は無差別に働いて居る料亭などで、女性を流産させる為に、――――」

鷹城が手を握り締めて、紐が揺れて赤い風船が空に揺れる。

「いえ、むしろそうして無差別に多くの被害を出す為に、幾つもの料亭や料理屋に勤めて犯行を重ねていたのでしょう。当時だけでも十数件の料亭などに仲居など臨時雇いの職として入っていたことがわかっています」

橿原が淡々というのに、鷹城が苦しいようにいう。

「それで、若い女性が、…妊娠した女性がきたら、その目的に気付かれないように、同時に複数の人間が被害にあうように、薬を食事に紛れ込ませた」

「自分が傷ついたっていうのに、どうして同じ目に人をあわせることができるんだか」

苦い顔をしていう関に、橿原が視線を向ける。

「傷ついたからこそ、同じ目に人を遭わせたいと願ったのかもしれません。―――自らを襲った悲劇と、同じ目に遭う人間を増やしたかった、…」

「冗談じゃありませんよ、同じ悲劇に遭う人間が増えるだけじゃありませんか」

吐き捨てるようにいって横を向く関に、鷹城がいう。

「そうだよね」

呟くようにいう鷹城に関が視線を向ける。言葉がなく見つめる関に、鷹城が軽く首を振って溜息を吐いていう。

「胎児を殺害しても、殺人罪にはならないんですよね」

宙を漂う赤い風船と墓を鷹城がみつめる。

「確かに、鷹城君への傷害及殺人未遂を除けば、精神鑑定がどのようであろうと、問える罪は不同意堕胎罪もしくは傷害罪に留まるでしょうね」

「何だか不思議な気がします。もうすぐ命日で、そのことが頭にあったときに、名前を聞いてなんて。…鬼灯って、そういえば、迎え灯でもあるんですよね。死んだ人が帰って来るのを導いてくれる、あるいは、迷わずに連れて行ってくれる灯、…」

いって鷹城が立ち上がろうとして、紐がふと手から離れる。

「あ、…」

思わず見あげる中で、上空へと赤い風船がゆらゆらと弧を描いてあがっていく。

「上がっていきますねえ」

「…―――」

橿原の言葉に泣きそうになりながら鷹城が空を見あげる。

関もまた、青空に遠く上がっていく赤い風船を、どこか眩しいようにして見あげていた。








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