第13話 昏睡からの目覚め

俺が目が覚めた時、マイナちゃんがそばにいた。


「あっ、エルウィーさん、目覚めたんですねっ!?

良かった…

実はエルウィーさんは三日三晩眠り続けていたんです…」


マイナちゃんは、言う。


「そっか…

やっぱり、2度も1.5倍を使った代償は大きかったかな…」


俺はズキズキと痛む手足を撫でてそう言った。


「あの時のエルウィーさんは、とっても格好良かったです!」


「あわわわわ…!

俺なんかが格好良いなんて…!」


そんなはず無い…

雑魚の俺が格好良い訳無いんだ…


そう、自分に言い聞かせた。


「いえ、本当に!」


「あ、ありがとう…

でも、なぜ、マイナちゃんが俺の看病を…?」


「それは…

私が特殊回復師だからです。

エルウィーさんの1.5倍は、敵依存のバフですよね?

だから、敵との能力差が大きければ大きい程、身体は悲鳴をあげる…

それに、かけられたバフを完全に解除するには、時間がかかる…

筋肉はその間に疲弊し、肉体はボロボロに…」


俺はその説明を聞いて大いに驚いた。

それは、俺が隠し続けていた1.5倍のデメリットの本質だったからだ。

そう、1.5倍は急速に能力をアップさせ、筋肉や骨はそれに合わせて発達する事も珍しく無い。

だから、使用した後もバフの効果はゆるやかに続くのだ。


って言うのは…

もしかして…」


「私の専門は状態異常の解除です。

つまり、バフにより形を変えた筋肉や骨さえも、回復、解除する事ができるんです。

と言っても、まだまだ勉強中ですけど…」


マイナちゃんは言った。


「凄い…

それで、身体の痛みがいつもより減ってるんだ…!?

あれだけ1.5倍を使ったのに、すごいよ!」


俺は言う。


「凄いのは、エルウィーさんですよ!」


「いや、マイナちゃんが…!」


「エルウィーさんです!」


「マイナちゃんだよ!」


「エルウィーさんですよ!」


そして、俺たちは何だかおかしくて笑い合った。


「あっ、そうだ、シュアララルさんが来られるそうですよ。

呼んできますね。」


マイナちゃんは、部屋から出ていった。


心地よいサンディー島の風が窓を通して部屋に入ってくる。

風はカーテンを揺らし、俺の額を撫でた。


あぁ…

俺、生きてるんだ…


そう実感した。


そして、シュアララルさんが部屋にやってきた。


「エルウィー君…

まずは、君に感謝を述べたい。

ありがとう…

クイーンゾンビを倒したのは、君のおかげだ。

そうだなければ…

我々は…

全滅していたかもしれない…


本当にありがとう!」


シュアララルさんは頭を下げた。


「あわわわわわ…

そんな…

や、や、やめてください、シュアララルさん…!」


俺は言った。

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